【時事(爺)放論】岳道茶房

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日中世論調査 不信乗り越え「互恵」を築け

2010年11月07日 | 社説
日中世論調査 不信乗り越え「互恵」を築け

 日中関係の悪化が、両国の国民に従来にない深刻な相互不信を生んでいる。両政府は、この事態を重く受け止める必要があろう。

 読売新聞と中国・新華社通信発行の週刊誌が先月下旬に実施した日中共同世論調査で、日本では「日中関係が悪い」と考える人が90%と過去最高になった。

 中国側も81%と大きく後退し、相手国に対する国民意識がかつてないほど悪化していることが鮮明になった。

 日中関係は、小泉元首相の靖国神社参拝問題で悪化したものの、その後、緩やかに好転していた。それが尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件と、反日デモの高まりで、一気に冷え込んだ格好だ。

 調査によると、中国を信頼できるという日本人はわずか7%、日本を信頼できるという中国人も15%に過ぎない。いずれも前年の調査に比べて激減している。

 発展する中国経済への日本の依存度は高まっている。中国も、日本の環境・省エネ技術の移転などを期待している。

 今こそ日中の協調体制を築くべき時なのに、両国民の間に信頼感が薄れているというのでは、今後の両国の経済発展に支障が出るのも避けられまい。

 調査の中で注目すべきは、「中国が経済力や軍事力を背景に他国に外交圧力を強めていくという不安を感じる」という日本人が89%にのぼっていることである。

 さらに、中国に対し79%の人が「軍事的脅威」を感じていると答えている。これは、北朝鮮に対する81%に次ぐ高さだ。

 漁船衝突事件をめぐる日中交流の打ち切りやレアアース(希土類)の対日輸出規制、さらに日本人社員の長期間にわたる拘束などを、日本側が深刻に受け止めている証左であろう。

 今後の日中関係について、日本側の6割は「変わらない」と答えている。こうしたこじれた関係の改善に向け、中国は、増大する経済力と軍事力に見合う責任ある行動を取らなければならない。

 加えて、ガス田条約交渉の再開やレアアース輸出規制の是正など、日中間の懸案の解決に真剣に取り組むことが大切だ。

 まずは、お互いの首脳同士が冷静にじっくり話し合える環境を整えるため、両政府が外交努力を重ねることが肝要である。

 「戦略的互恵関係」をただ声高に唱えるだけでなく、実のあるものにすることが、両国国民の信頼関係を取り戻す一歩になる。

2010年11月7日 読売新聞 社説


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