【時事(爺)放論】岳道茶房

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G8・G20 欧州の政策展開に学べ

2010年06月25日 | 社説
G8・G20 欧州の政策展開に学べ

 主要国(G8)首脳会議と二十カ国・地域(G20)首脳会合が二十五日からカナダで始まる。増税に傾斜する菅直人首相は経済成長と財政再建をめぐる論点について欧米の政策論議に学ぶべきだ。

 菅首相にとって一連の首脳会議は、財務相当時に国際会議の経験があるとはいえ事実上、初の外交デビューになる。会議の合間を縫うようにして日米、日ロ、日中など二国間会談も開かれる予定だ。

 G8もG20にとっても、最大の関心事は経済の動向である。金融危機が一段落したと思ったら、ギリシャの財政危機が再び世界経済を揺るがし、余震はなお収まっていない。

 米欧は金融危機後、財政出動に動いて赤字を拡大してきた。ところが、ギリシャ危機が起きると、欧州は一転して「出口=緊縮政策」を模索し始めた。むしろ回復ピッチが速い米国が「引き締めは時期尚早」とけん制している。会議では財政健全化と景気回復の両立を目指して、米欧が白熱した議論を展開しそうだ。

 注目されるのは、欧州の政策展開である。英国は二〇一一年一月から付加価値税を2・5%引き上げて、20%にする予算案を発表した。増税一本やりかといえば、そうではなく、公務員の賃上げ凍結や子ども手当の凍結、福利厚生費の削減も盛り込んでいる。

 フランスは公務員の新規採用を抑えて人件費を10%減らす。ドイツも連邦職員数を減らし手当を削る。危機震源地となったギリシャはもちろん、余波が懸念されるポルトガルやスペインも公務員数と賃金削減などを打ち出している。

 当然、労働組合は反発し、各国でストライキが繰り広げられているが、政府自身が身を削って範を示そうとしているのである。

 翻って菅政権はどうかと言えば、「放置すれば日本もギリシャのようになる」と訴えて増税路線を強調しているが、給与や定員削減を含む公務員制度改革には熱意がさっぱり感じられない。

 それどころか新たに指針をつくって、官僚の身分を守ったまま独立行政法人や公益法人に出向させる「現役天下り」を容認するありさまだ。これでは公約した国家公務員人件費の二割削減は、とうてい実現できない。むしろ役所と独法の関係が深まって、独法改革すら難しくなる。

 官僚との融和に走って既得権益にメスを入れなくていいのか。菅首相は真の優先課題が何か、この機会に熟考する必要がある。

2010年6月25日 中日新聞 社説


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