【時事(爺)放論】岳道茶房

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海外農業投資 収奪でなく共存共栄を

2010年11月08日 | 社説
海外農業投資 収奪でなく共存共栄を

 豊かな国々の企業が海外で広い農地を取得し、自国向けの穀物を栽培する動きが広がっている。将来の食料不足に備えた投資だが、相手国に利益を還元し農業の発展を促すという視点が欠かせない。

 二〇〇七年から〇八年にかけ各国で食料価格が高騰し、途上国の一部で暴動も起きた。その後穀物在庫は増えているが、ロシアが今年、干ばつで穀物輸出を停止するなど危機再燃の懸念は残る。

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)は十月に新潟で食料安全保障担当相の会合を開き、採択された閣僚宣言で「責任ある農業投資」を提言した。

 経済大国となった中国、耕地不足に悩むアラブの産油国などの企業がアフリカや東南アジアの途上国と農地のリース契約を結び、収穫物を優先的に輸入する動きが進んでいる。

 確かに途上国の農業発展には外国からの投資は欠かせない。農業インフラが整備され、品種改良が進んで収穫が増え、さらに流通が確立されれば、その国だけでなく世界全体の食料増産につながる。

 しかし、この数年、サハラ砂漠以南の国などで現地の人々が土地を安く手放し、自らの食料も手に入らない悲劇が起きている。

 韓国・大宇の系列企業と広大な土地の貸与契約を結んだアフリカの島国マダガスカルでは、農民の抗議が広がり、昨年三月に政変が起きて大統領が追放される一因となった。

 相手国への還元を十分保障せず収穫物の大半を自国の消費にまわそうとする行為について、国連食糧農業機関(FAO)のディウフ事務局長は「新植民地主義を生む恐れがある」と厳しく批判した。

 FAOや世界銀行は投資のルール作りを進めている。現地の土地の権利関係を尊重し、適正価格で借り上げる。環境を破壊しない。生産物は自国向けだけでなく国際市場での流通を目指す-といった内容が検討されている。

 豊かな国による農業投資が相手国からの収奪になってはならない。途上国との共存共栄を図るべきだ。

 日本政府は国連の諸機関とともに規制づくりに加わっている。APEC域内の中国や韓国にも協力を働きかけたい。

 FAOの試算だと、四十年後には現在の一・七倍の食料生産が必要になるという。飢餓は病気や貧困だけでなく、戦争さえも引き起こす。食料増産と安定供給には、投資国と投資相手国が一体になった息の長い取り組みが必要だ。

2010年11月8日 中日新聞 社説


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