気分はいつも、私次第

映画 『関心領域』

映画『関心領域』です。鑑賞してきました。


映画『関心領域』 オフィシヤルサイト


この映画には原作があります。
が、映画では独自性があるようですね(小説は未読です・ペコリ)

まず、このタイトル『関心領域』ですが・・・
これが実際にナチス親衛隊が使用していた言葉だそうです。
以下の記事に説明がありました。


映画.com 『関心領域』


ホロコーストといえば、アウシュヴィッツ収容所。
といわれているほど、収容所の代名詞となっているアウシュヴィッツ。
私も何度もこのブログで取り上げていますが・・・
アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所は、大きく3つに分かれています。
アウシュビッツ第一収容所、これが基幹収容所といわれている。
アウシュヴィッツ第二収容所ビルケナウ、これは絶滅収容所。
アウシュヴィッツ第三収容所モノヴィッツ、これは労働収容所。
まぁ巨大な施設です。
が一言付け加えますと・・・コレ、コレって線引きがビシッとされていないと思います。

「強制収容所と絶滅収容所の違いはなんだよ?」と言われますと・・・
強制収容所は、労働などで生き残る人がある程度いる。
絶滅収容所は、殆どが到着時に殺害されるが・・・生き残っている人もいる。
労働力として、なんですよね。
じゃモノヴィッツも労働収容所って?ココは企業が関係していて・・・
って、もうかなり・・・込み入っています(ペコリ)
書き出すと、なんでも書こうとするから止めます(ペコリ)
まぁ、アウシュヴィッツは名実ともに全収容所の「要」とされていた、でしょうね。

そして、所長(映画では司令官)だったのが、ルドルフ・ヘス。
初代所長です。その後転属し、後年再度所長に就任していますね。
映画『関心領域』では、このヘス家族が描き出されています。
ヘス一家の住居は、収容所の隣にありました。
勿論高い塀などで分れていますが。

映画はヘス一家のピクニック風景から始まります。
妻のヘドウィグ、4人の子ども達・・・付き添いの女性や、ヘスの部下の姿も。
平和で平凡。そんな一家の姿が次々と映し出されます。
父親ヘスの誕生日。朝の子ども達の騒がしい様子。兄弟姉妹ケンカ等々。
そして妻ヘドウィグの家事の様子や、家政婦(多分)達への指示の声。
またヘドウィグは、持ち込まれた食糧や衣服を吟味します。
衣服では、家政婦達に好きに選ばせていますが(彼女たちの私服として)
自分は自室に入って、毛皮のコートを試着・・・

またヘドウィグは、お喋り仲間とお茶しています。
コレは・・・?誰の妻達なんだろ?夫の部下の妻かな?
所長だから、皆夫の部下になるだろうから・・・
まぁお茶飲みながらお喋りしています。

このお喋り。映画の最初の部分なので、あまり注目されていないかも。
ですが・・・!!
その会話の中で「ブリギッテ・フランクは~」と名前が出てきます。
この「ブリギッテ・フランク」とは、ポーランド総督のハンス・フランクの妻です。
そしてこの夫婦は私腹を肥やす強欲さで有名で(当時もね)
そしてブリギッテは、特に毛皮のコートがお好きだったようで・・・
そういう強欲さの代名詞として、噂している風に思えました。

そして物資を「どこから?」「カナダから」との会話も。
このカナダは、国名じゃないですよ。
当時のアウシュヴィッツで使用されていた隠語です。
移送されて来た人々が持参してきたトランクやコート等々・・・
金銭や時計、宝飾品は、
多分親衛隊等がその場で取り上げることが多かったと思いますが。
荷物は、一時倉庫に集められて・・・労働者(ユダヤ人など)が仕分け作業します。
その倉庫のことを「カナダ」と呼んでいたそうです。
カナダやアメリカって、裕福な国の代名詞ってことで。
食料品や品物が豊富=カナダってことですね。

ということが分かると、これは・・・「そうかそうか」となる私。
(スンマセン、大爆発ですね)

映画に戻って。
映画では、あまりにも淡々と幸せ家族の営みが続きます。
ヘスの誕生日に、部下達が集まり「おめでとう御座います!」と。
ヘドウィグは自慢の庭仕事に夢中だ。花々、野菜栽培・・・夢中になっている。

ここですが・・・このヘス夫婦って、農業開墾団体で知り合ったのですよ。
そして、この団体でヒムラーと知り合いになっています。

だから・・・ヘスが転属(でいいのか?)になったと知ったヘドウィグが
「ヒムラーに頼んで」等々言っていた、と思いますが
ヒムラーとは顔見知りだった、という背景からあるかと思います。

映画は、ヘス夫妻が淡々と平和に楽しく豊かに暮らしている隣では
移送されてきた人々が暴力を受け、射殺され、餓死し、ガス殺され、焼却されている・・・
それでも、ヘス夫妻は・・・その事実に言及しないし、見もしない。
関心がない・・・関心がない振りをしているのか?
そういう姿を淡々と描いている。そういう映画なのです。

このことをどう受け止めるか?
それは鑑賞者が受け止め、考えること。そういう映画です。

ヘドウィグの母親が訪ねてきます。
豊かな食卓、見事な庭、不自由ない生活。
娘の幸せを喜んでいた母親ですが・・・不穏さに敏感になっていく。
そしてとうとう、娘に黙って帰ってしまう・・・
メモを残していたようですが、ヘドウィグは破棄します。
(何が書いてあったかは??)

また、サーモグラフィを利用した夜の撮影シーンがあります。
多分ポーランド人の少女が、収容所に入っていきます。
作業する場所?に林檎を隠しているシーンが・・・
これは作業している人々を少しでも助けようと・・・という意図だと。
これは実際にあった話だそうです。
以下の記事にありますので、読んで下さい。



MOVIE WALKER PRESS
オスカー受賞のA24作品『関心領域』の演出に秘められた意図をネタバレありで徹底解説!
グレイザー監督が観客に投げかけた問いとは?




そして、ヘスの転属に付いていかないヘドウィグ。
彼女は子ども達とアウシュビッツに残ります。
ヘドウィグにとっては完璧な環境・・・それがアウシュヴィッツの隣・・・

その後ヘスがまたアウシュヴィッツに戻ることになります。
そのことを妻に電話で伝えた後・・・階段を降りていくヘスは途中で嘔吐します。
酒に酔った?どういう演出なんでしょ?
これも・・・鑑賞者に解釈が任されます。

そして暗い廊下の奥を眺めるヘス・・・小さな光が見えてくる・・・
そこから現代の描写が出てきます。
今は博物館となっているアウシュヴィッツ・・・・・
そこでは。ガス室の床を清掃している人の姿が映ります。
同様に、焼却所を掃除している人。
移送されてきた人々が持参してきたトランクの膨大な山。
ガラスの向こうに山となっています。
同様に移送者の靴、義足や松葉杖・・・
その展示室のガラスを綺麗に拭いている人達が映し出されます。

またまた私の「オォ」ですが・・・
この小さな光が、
博物館になっている現代のアウシュヴィッツのガス室の入り口とリンクします。
コレって・・・ガス室についていたのぞき窓のこと?と思いました。
室内に人々を詰め込んで、ガスを発生させる。
内部の様子を見るために、小さなのぞき窓があったそうです。
それか?とか思った私・・・

話戻って。
この博物館を映した意図は?
一緒に映画を見た夫が、帰りに話しました。

「慣れってことだよね」

私は、そこで「そういう解釈もあるか!」と思いました。
博物館で清掃作業をしている人々も、初めて見たときは
その惨さ、この場で起きた残虐行為に圧倒されたと思います。
身が震えるほど・・・

しかし・・・それが・・・いつの間にか・・・日常になる。
見慣れた景色になる。馴染みの場所になる。

ヘス家族も同じ。そう思いました。
タイトル『関心領域』
確かに関心を「どこに持つのか?どの辺まで?」という視点もあるでしょう。
と、同時に「人間って慣れるよね。慣れて日常になり無関心になる」
それも・・・ありだなぁって。私は思いました。

多くの人が、同じように考えたと。
遠くで起こっていること。自分の身に起こっていないこと。
例えほんの近くでも・・・自分に害がないのなら、影響がないのなら。
関心を持つ必要があろうか?持たなくても・・・何も変わらないし。

さらに、その関心を持たない弊害?として、豊かな生活があるとしたら。

惨い現実は透明になり、利益だけが見えてくる。

人間って、こういう生き物なんだよね。人の心って、こういう風にもなるんだよね。

在り来たりですが・・・
誰もがヘスになる可能性があり、ヘドウィグになる可能性がある。

それが私の『関心領域』でした。


動画も貼っておきますね。


絶賛上映中『関心領域』特別映像_俳優が明かす撮影の裏側




追加:
もっと台詞を詳しくしてくれると・・・
もっともっとアウシュヴィッツやヘス夫妻のアレコレ言っていたかも。
そう思うと・・・その辺は残念だなぁ~と思いましたね。

追加2:
残念だけど、邦画ではこういう作り方はできないだろうなぁ。
映画『月』が、かなり近かったけど・・・
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