気分はいつも、私次第

連続テレビ小説『虎に翼』第13週「女房は掃きだめから拾え?」

今人気の連続テレビ小説『虎に翼』
私も欠かさず視聴しています(録画して洗濯物たたみながら見るとか)

えっと・・・もうこのドラマを視聴していることを前提として書きますので。
視聴していない方は・・・御免なさいです(ペコリ)

第13週「女房は掃きだめから拾え?」に対する感想です。
寅子の友人で共に法律を学んだ大庭梅子さんですが。
亡き夫の遺産を巡り、身内で揉める揉める。
いや身内以外=亡き夫の妾も参戦して。

新たな民法の規定により、梅子にも財産の相続権がある。
3人の息子、それぞれの思惑や事情もある・・・
などなど。

今風でいうとモラハラ夫には似て欲しくないと、懸命に育てた三男が
実は、夫の妾である女と恋仲であると知り、梅子は心の糸が切れてしまう。

息子達が揉める中、梅子は泣き出すが?いや泣いていたのか?
突然高笑いを・・・一同驚いて梅子を見つめる。
梅子は自分を落ち着かせようとして・・・そして言葉を発する。


梅子
「もう駄目、降参。白旗を振るわ」
「私は全部失敗した。結婚も家族の作り方も、
 息子たちの育て方も、妻や嫁としての生き方も全部!」

「私は全てを放棄します。相続分の遺産も、大庭家の嫁も、あなた達の母としての務めも!」
「ぜ~んぶ捨てて、私はここから出ていきます」

そして涙を拭い立ち上がり、襖をパッと開け放ち去って行く「ごきげんよう!」と言い放って。


この梅子のシーンは、色んなことを考えさせてくれる素晴らしいシーンだと思った。
視聴した人はそれぞれ、心で感じたことがあったろうと思う。

私は・・・「キツいなぁ」と思った。
梅子が自分の「敗北」を認めるシーンだと思ったからだ。
梅子は「自分が我慢すれば「自分が懸命にすれば」「自分さえ耐えれば」等々
端から見ても「我慢し続ける妻・母親」だったと思う。
が、梅子自身は「自分が選択した道は正しい」とまでは思わなかったかも知れないが
「いつかは報われるだろう」と思っていたのではないか、と私は思った。

そして端から見れば「我慢している」「耐えている」と思われているだろうが
梅子自身は決して、そう思っていなかったと思う。
いや、思いたくなかった、の方が近いかも知れない。

しかし、それは・・・違っていたのだ。
そう梅子は気が付いた。いやそれは以前から気付いていたと思う。
ただ、自分では認めたくなかった、のではないだろうか。

でも、この場で認めた。
それがこの台詞のように思えた。だから「キツいなぁ」と思ったのだ。

同時に、梅子は「自分を殺して生きてきた場所」から去って行く。
自分の意思で。しがらみを捨てて。

つまりは、家族は・・・亡き夫、3人の息子達、そして姑は、甘えていたのだ。
梅子に。我慢し尽くすことを選んだ梅子に。

ドラマでは、梅子が去った後、3人の息子達は、
少しは協力し合おうとする兆しが見えてきたようだが・・・
まぁ現実だったら、そう簡単にはいかないだろうなぁって思うけど。

私は・・・梅子が「自分を殺さず生きる」ためには、家を出なければならなかった。
これも、結構堪えた。
つまりは、梅子が自分を殺してまで尽くしてきた家族には、
梅子を思いやったり、人格を認めようとすることには至らなかった。
そういうことなんだなって。

梅子が「ありのまま」」生きるためには、他の場所へいかないと実現できない。
あぁ、そうなんだなって。そう思った。

「私は全部失敗した」梅子自身が、自分に放った矢のように思えた。
見事に的に命中。それが梅子に覚悟させ、背中を押した。

「私は全部失敗した」
この言葉を私は覚えていると思う。凄まじい台詞だと思った。
聞いた瞬間、背筋がピリッとした。

なかなか・・・認められない。自分に矢を射る言葉。
そうでしょ?そうじゃない?
そして矢を放った瞬間、絶対的に命中する。
その心臓部に。自分の心の中心に。

ドラマの台詞とはいえ・・・凄まじいなぁ・・・と思いました。
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