マスキュリズム(男性差別撤廃のための思索と運動)や弱者男性論に関わる問題を考えるために参考になりそうな書籍やwebサイトを紹介します。
あくまでも「参考になりそう」という範疇で列挙しています。したがって、リンク先の述べている内容と僕の考えやスタンスには、乖離がある場合もあります。
☆ 書籍紹介
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男性権力の神話――《男性差別》の可視化と撤廃のための学問(ワレン・ファレル著,久米泰介翻訳,作品社,2014年)
1993年にアメリカで出版された本が、21年もの年を経てようやく邦訳された。奇跡を起こしたと言っても過言ではない1冊である。原著は、Warren Farrell の "The Myth of Male Power" であり、本書はそれを(一部の章を除いて)日本語訳している。原著者のワレン・ファレル氏は、アメリカの社会学者で、マスキュリズムの大御所のような人物である。男性の被害者性や男性の苦しみなどにきちんと光を当て、そこからの解放を目指している。本書で彼は、男性も社会の中で差別されているという事実を、様々な具体例やデータによって提示している。本書を読むことで、これまで見えていなかった〈 男性差別 〉、あるいは、男性の弱者性,脆弱さ,被害者性などが、鮮明に見えてくるであろう。アメリカでは30万部を売り上げてベストセラーになったこの良著は、(悲しいことでもあるが)今でも色あせていない。本書が、多くの人の目に触れることを願いたい。
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広がるミサンドリー: ポピュラーカルチャー、メディアにおける男性差別( ポール・ナサンソン/キャサリン・K・ヤング共著,久米泰介翻訳,彩流社,2016年)
《ミサンドリー》とは、男性嫌悪あるいは男性蔑視という意味合いの語であり、ミソジニー(女性嫌悪)と対になる概念である。「男 = 邪悪で愚か」というイメージと男性への蔑視が、ドラマや映画などによっていかに一般社会に刷り込まれつつあるか。そして、そのことに対していかに人々が無関心であるか。メディアにあふれるミサンドリーと男性差別について、アメリカ・カナダの事例から検証されている。ミサンドリーを告発し、ジェンダー論争におけるダブルスタンダードに疑義を投げかける本。
(日本の事例では無いので、そこが分かりづらさにつながるかもしれません。しかし、メディアがミサンドリーを無意識のうちに刷り込んでいる現象は、間違いなく日本でも多発しています。是正のための取り組みが必要です)
広がるミサンドリー: ポピュラーカルチャー、メディアにおける男性差別
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ファーザー・アンド・チャイルド・リユニオン 共同親権と司法の男性差別( ワレン・ファレル著,久米泰介翻訳,社会評論社,2017年)
離婚後の「親権」をめぐって、多くの父親が子どもの養育から引き離されている。男性にとって不利な制度が厳然として残っているし、司法の判断も男性にとって不利なものとなるケースがきわめて多くある。父親が、お金の稼ぎ手としてだけではなく子育てをする人として、そして母親との敵対ではなく協力して行なう「共同親権」は、男性を解放する家族の静かな革命である。アメリカにおいて30万部のベストセラーとなった、運動の第一人者による問題提起の書。
ファーザー・アンド・チャイルド・リユニオン -共同親権と司法の男性差別
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法制度における男性差別 合法化されるミサンドリー( ポール・ナサンソン/キャサリン・K・ヤング共著,久米泰介翻訳,作品社,2020年)
男だって “差別” されている。なぜ父親は、離婚で子供の親権を認められないのか? なぜ男性のDV被害は問題にならないのか? 親権,DV,セクハラ,レイプ,売春,アファーマティブアクションなど、具体的な事例を検証し、いかに男性への差別・蔑視が合法化されているかを明らかにする。北米で大論争を巻き起こしている注目の書。
夫のペニスを切断した〈ホビット事件〉,最高裁判事候補がセクハラで訴えられた〈C・トーマス事件〉,14人の女性を殺害した〈モントリオール理工科大学銃撃事件〉などが取り上げられている。そして、これらの事件後にいかに政治的な運動と論争が起こされ、世論がマスメディアによって形成され、男性差別的な法改正が行われたかを検証している。
そして、1990年代以降、この合法化されたミサンドリー(男性蔑視)が、裁判所・教育機関・政府委員会・企業から、雇用・結婚・離婚・セクハラ・暴力・人権に影響を与える法律や政策に至るまで、いかに浸透していったかを論じている。
なお、この本の巻末に、翻訳者の久米氏による後書きが掲載されている。これを読むと、マスキュリズムは困難な荊の道であるが、ジェンダー平等を実現するためには必要不可欠であることがよくわかる。
法制度における男性差別: 合法化されるミサンドリー
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正しいオトコのやり方―ぼくらの男性解放宣言(フランシス バウムリ著,下村満子翻訳,学陽書房,1991年)
30年以上前のアメリカで出版された本の翻訳である。原著は、Francis Baumli の "Men freeing men" であり、本書はその一部を日本語訳している。30年以上も前の、それも海外のことを取り上げている本だが、読む価値はかなりあるだろう。内容は確かに古いものの、過去のアメリカと今の日本は重なる部分もあって、生きた内容として読めると思う。特に、マスキュリズム・男性差別・弱者男性問題に関心のある方や、男性が男性であるが故にもれなく不条理に背負わされてしまう様々な苦しみに対して問題意識を持つ人には強く薦めたい。
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男が崩壊する(ハーブ・ゴールドバーグ著,下村満子翻訳,PHP研究所,1982年)
ハーブ・ゴールドバーグの名著、"THE Hazards of Being Male" の邦訳版です。かなり古い本ですが、一読の価値のある本だと思います。第12章「男であることの危機」,第6章「束縛から逃れられない男たち」,第4章「感情 ― 男が本当に恐れるもの」だけでもよいので、読まれたいところです。
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脱男性の時代―アンドロジナスをめざす文明学(渡辺恒夫著,勁草書房,1986年)
『脱男性の時代』は、心理学者の渡辺恒夫氏が1986年に出版した本である。
( 註 : 読売グループの渡邉恒雄氏とは全くの別人である。念のため注意されたし )
僕は、彼こそが、我が国における〈 男性学 〉の祖であると思っている。
セクシュアル・マイノリティについての記述に紙幅を割いてはいるが、〈 弱者男性問題 〉,〈 男性差別問題 〉,〈 マスキュリズム 〉,〈 メンズリブ 〉,〈 男性解放運動 〉を考える上で大きな示唆を与えてくれる書籍である。これらの事項に関心のある方には、必要な部分のみを読むという形でも良いので、ぜひ一読をお薦めする。
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マッチョになりたい!?―世紀末ハリウッド映画の男性イメージ(國友万裕著,彩流社,2011年)
20世紀末のハリウッド映画を取り上げた本だが、〈 男性学 〉の本でもある。著者のご専門が、ジェンダーとアメリカ映画なので、両方の要素を併せ持たせ、男性ジェンダーの角度からの映画分析に仕上がっている。
國友さんは、男らしくない男の子であったが為に、「女の腐ったような」と揶揄されたり、「男らしくあること」を強いられることで苦しみながら育ってきた方である。僕自身と重なるところがあり、彼の文章を読むとカタルシス効果を得ることが出来る。
この本を読むと、男性もまた(女性と同様に)ジェンダー規範による抑圧を受けながら生きているのだということがよく分かると思う。そして、男として生きることは如何に〈 痛い 〉し〈 苦しい 〉ことなのかということも分かるのではないかと思う。
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BL時代の男子学 ~21世紀ハリウッド映画に見るブロマンス~(國友万裕著,近代映画社,2014年)
これまでハリウッドは、ゲイ,同性愛といったものに対して否定的な描き方をしてきましたが、21世紀に入ってそれが逆転してきた。本書ではそうしたハリウッドの意識の変化と、現実社会における男性性の変化をリンクさせ、21世紀がいかにゲイ的な社会になってきているかをハリウッド映画を通して検証している。
BL時代の男子学 ~21世紀ハリウッド映画に見るブロマンス~ (SCREEN新書)
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マスキュリニティで読む21世紀アメリカ映画(國友万裕著,英宝社,2021年)
國友さんの最新刊。トクシック・マスキュリニティ(有害な男性性,男らしさ)の視点からハリウッド映画の構造を鋭く読み解く。膨大な数の映画を渉猟しつつ、ジェンダー強制の抑圧から逃れ得た、隠れた名作を探し出す。
『マッチョになりたい!?』と併せて読むと良いと思う。
マスキュリニティで読む21世紀アメリカ映画
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『男は痛い!』
『男は痛い!』は、國友さんの
対人援助学マガジン における連載で、無料で読むことが出来る(PDFファイルをダウンロード)
『マッチョになりたい!?』と併せてご覧になることをお薦めする。
特に、女性(女児)からいじめ・暴力の被害を受けた男性(男児)の問題や、男性の性的羞恥心が軽視・無視されている問題などについては、國友さんご自身の経験なども踏まえて多く記述されている。
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ぼくたちの女災社会(兵頭新児著,二見書房,2009年)
女災=女性災害 は、著者の兵頭氏による造語。兵頭氏は《 男性差別 》という語を好まず、《 女災 》という言葉を用いる。
女性災害とは、男女関係のあらゆるフェーズにおいて、事情の如何に関わらず常に「女性が被害者,男性が加害者」と決定づけられてしまうことを指す。
本書において、
女性の加害者性とは、
いかなる局面でも男性に対して《 被害者 》として振る舞うことが許されていること であり、
男性の被害者性 とは、
いかなる局面でも女性に対して《 加害者 》として振る舞うように仕組まれていること であると規定されている。これは兵頭氏独特のものであるが、大いにうなずかされるところであり、大変興味深い。
些か理解が難しい部分はあるものの、その内容はかなり本質を突いていて、実に良著なのだが、絶版となっているのが残念。ただし、Amazon の Kindle(電子書籍) で読むことができる。
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兵頭新児の女災対策的読書
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フェミニズムの害毒(林道義著,草思社,1999年)
どちらかというと、右より(保守)の視点からフェミニズムを批判する書。性別役割分業に肯定的な論調。一貫した立ち位置から、理路整然と書かれているので好感が持てる。
現代人(特に若者)は、
知らぬうちに フェミニズム思想の影響を受けているケースが多いと思われるのだが、この本はその解毒剤として効力を発揮するはず。バランスを取る意味でも必読の書といえそう。
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男女平等への道(古舘真著,明窓出版,2000年)
どちらかというと、左より(革新)の視点からフェミニズムを批判する書。性別役割分業に否定的な論調。
「保守派の頑固じじい」にも「過激なフェミニスト」にも批判的で、虚弱な男性や気の弱い男性などのように男女双方から相手にされない非力な弱者の立場から男女平等を論じた、貴重な本。真の男女平等を求める姿勢で、公正に書かれているので、共感をもって読むことが出来る。
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日本の男性の人権(山本弘之著,ブイツーソリューション,2009年)
男性差別問題を取り扱った書籍が少ないことを憂う著者が、自費出版の形で世に送り出した書籍。
さまざまな男性差別を挙げていて、参考になる。データの類もしっかりと掲載されている。
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男は虐げられている(竹中英人著,郁朋社,1999年)
「男は弱くなった」「男は変わろうとしない」など現代社会ではとかく批判されがちな男たち。男らしさを取り戻すべきなのか、捨てるべきなのか、世の男たちに贈る理論武装のための一冊。
☆ web サイト/ nоte /個人ブログなど
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茂澄遥人 男にも幸せに生きる権利がある
自作されている『統計データ画像集』は圧巻の一言である。厚生労働省や警察庁や内閣府などが発表した公的な統計データを使ってグラフ化した画像が多数掲載されている。男性から見た男女の不平等がひと目でわかるデータが揃っている。
また、《慈悲的性差別》や《有害な女らしさ》や《受動的攻撃性》など、マスキュリズムに取り組むうえで考えるべきトピックについての考究もたいへん役立つ。
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nоte でマスキュリズム関連記事を投稿されている方々
ウィックジェイ(K/G40xWlKJ)|note
ミソジニーガチ勢のマスキュリスト左派。といっても世間的なミソジニーには批判的立場。我々は伝統主義のためではなく、あくまで平等と自由のために戦うべきだ。 #AF4 #Ant...
note(ノート)
okoo20|note
マスキュリズム関連をかじってるペンギン? が、流氷に乗ってnoteに流れ着いてきました。 マスキュリズム関連を中心に何か趣味の物でも書けたらやっていく予定。
note(ノート)
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女に生まれたかった男が男女について考える
「女に生まれたかった男」である管理人さんが、男女論,男性差別,女性羨望などについて真剣に考究しておられます。読み応えのあるブログです。
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男性差別とたたかう者のブログ(多様性と人権の尊重を求めて)
男性の性的羞恥心が軽視・無視されていることなどに疑問を呈し、現在の男女共同参画のあり方の問題点(理念と現実の乖離)を指摘されています。
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National Coalition For Men
NCFMは、1977年から活動しているアメリカの男性団体です。
NCFM is dedicated to the removal of harmful gender based stereotypes, especially as they impact boys, men, their families and those who love them.
(NCFMは、ジェンダーに基づく有害な固定観念(特に男児,男性,その家族や彼らを愛する人々に影響のあるもの)を除去することを目指して活動している)
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メンズリブ 男性運動を行うために。
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男性にも人権を! 男性も暮らしやすい社会づくりを!