Nikkoh の 徒然日記

ゲイ(=男性同性愛者)の Nikkoh が、日々の雑感やまじめなこと、少し性的なことなどを、そこはかとなく書きつくります

国際男性デー 2022

2022-11-20 21:17:41 | 男性差別 I (概観・総論・横断的内容)
11月19日 は、国際男性デー(International Men's Day) でした。

( 関連ワード : 弱者男性問題,男性差別,女災,マスキュリズム,メンズリブ,男性解放,男性運動 )





国際男性デー(IMD)は、男性・男児の健康と幸福を祈念する日 です。
日本ではほとんど知られていませんが、多くの国でこの日の存在が知られています。 

ジェンダー平等の実現のためには、"男性差別" の撤廃が欠かせません。しかし、"男性差別" は見えざる差別であり、まずは "可視化" が必要です。ガラスの地下室へ押し込められ、生命を軽んじられて使い捨てられる男性の現状を、この社会は直視するべきです。  

このブログでは、これまでマスキュリズムについて数多くの記事を執筆してきました。マスキュリズム(masculism) とは、男性に対する性差別(男性差別)の撤廃を目指す思想・運動 を指します。男性の被害者としての側面や、男性の苦しみに着目していく思想や運動です。よく、フェミニズムの対置概念とされますが、僕は、並置概念と言いたいと思っています。男性解放運動と女性解放運動は 車の両輪 です。マスキュリズムとフェミニズムも 車の両輪 です。片方だけでは、脱輪してしまいます。必ず、揃っていなければならないし、揃っていてこそ意味があるのだと思います。
対置概念(あるいは並置概念)であるフェミニズムとマスキュリズムですが、双方の間には歴然とした力の差があります。マスキュリズムは、宿命的にきわめて大きな困難を抱えているのです。
第1に、影響力が圧倒的に違います。フェミニストと比べて マスキュリストは圧倒的にマイノリティ です。これは、「フェミニズム」という語と「マスキュリズム」という語の社会での認知度を考えれば、明らかでしょう。あるいは、刊行された書籍の数を見てもその差は歴然としています。また、「国際女性デー」が記されているカレンダーは見かけますが、「国際男性デー」が記されているカレンダーを見たことがありません。国際連合のサイトでも、国際女性デーは掲載しているのにも関わらず、国際男性デーは掲載されていないのです。また、フェミニズムは行政にも大きな影響を与えていて、多くの自治体が施設を建設したり、政策を実行したりしています。それに対して、マスキュリズムはまず存在の認識すらされていないのが現状です。
第2に、理解の得られやすさが異なります。男性の被害 と 女性の加害 は、逆の場合と比べて理解されづらい のです。「女性はか弱く、保護しなければならない」との素朴な社会通念が存在しています。女性の被害 と 男性の加害 については、この通念と適合しますので、ごく自然に理解できる人が殆どでしょう。ところが、男性の被害 と 女性の加害 の場合は通念と適合しないため、どうしても違和感を持ってしまう人も多いのだと思います。
第3に、所謂“正しさ”の縛りがあります。マスキュリズムの考え方そのものが、“正しくない”ものとしてバッシングを受けることがある のが現状です。教条主義的なフェミニズムや、その主義・思想を土台としたメンズリブなどが、性差別やジェンダーの問題への取り組みのマジョリティとして、大きな影響力を持ちました。そのため、「女性が被害者であり、一方的に男性から支配・抑圧されている」或は「男性は加害者であり、一方的に女性を支配・抑圧している」というイデオロギー が、“正しい”ものとして根付いてしまいました。これを前提とすると、男性の被害 や 女性の加害 に着目するマスキュリズムは、その存在そのものが正しくないということになってしまうというわけです。
こうしてみてみると、マスキュリズムとは極めて困難なものだと改めて思わざるを得ません。しかし、その必要性を疑う余地は無いと思います。社会はじわりじわりと変化していきます。その中で、一歩ずつ前進していくことを願うばかりです。

マスキュリズムをテーマとした映画『The Red Pill』があり、国際男性デーに合わせて東京で上映会が開催されました。




主催者は僕とつながりのある方で、僕も微力ながら運営に協力させていただきました。また、来場者の皆様に記念冊子を頒布させていただきました。(当初は小規模なパンフレットの予定だったのですが、原稿をまとめていったら62ページにも及ぶ冊子になってしまいました)



とにかく一人でも多くの人にこの問題を知って欲しいし考えて欲しいと、心の底から願っています。映画の上映会や講演会、読書会などの開催を重ねていけたらと考えています。

PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)には、御田寺圭さんのコラム『「男性は何かをする必要がある」 ジェンダー平等を謳いながらそんなツイートをする国連女性機関の時代錯誤 ~「男女平等」を強く求めつつ「女性を守るのは男の役割」と語る矛盾~』が掲載されています。核心を突いた良記事だと思いますので、未読の方はぜひお読みください。

「男性は何かをする必要がある」ジェンダー平等を謳いながらそんなツイートをする国連女性機関の時代錯誤 「男女平等」を強く求めつつ「女性を守るのは男の役割」と語る矛盾

国連女性機関が10月半ばに発信したツイート「男性は何かをする必要がある」が炎上した。なぜ男性は猛反発したのか。文筆家の御田寺圭さんは「世の多くの男性にはすでに男女...

PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

 


また、茂澄遙人さんの『統計情報で見る男性差別 ~無視され使い捨てられる男性の命~』もたいへんよく現状をとらえており、必読だと思います。男性の生命が、女性と同じくらい大切にされる社会を実現しましょう。繊細な感受性をもった男性が、自分らしく健やかに嫋やかに生きていける社会を………。 

統計情報で見る男性差別 無視され使い捨てられる男性の命

性差別は男性にとって生き死にの問題である。男性が社会から期待される性役割(ジェンダーロール)は、男性を過酷な環境に追いやり、男性の命を危険にさらしている。この記...

茂澄遙人

 
 

マスキュリズムに関する書籍としては、まず 『男性権力の神話――《男性差別》の可視化と撤廃のための学問』(ワレン・ファレル著,久米泰介翻訳,作品社)をお読みください。
この本は、およそ20年前のアメリカで出版された本の翻訳です。原著は、Warren Farrell の "The Myth of Male Power" であり、本書はそれを(一部の章を除いて)日本語訳しています。原著者のワレン・ファレル氏は、アメリカの社会学者で、マスキュリズムの大御所のような人物です。男性の被害者性や男性の苦しみなどにきちんと光を当て、そこからの解放を目指しています。本書で彼は、男性も社会の中で差別されているという事実を、様々な具体例やデータによって提示しています。本書を読むことで、これまで見えていなかった〈 男性差別 〉、あるいは、男性の弱者性,脆弱さ,被害者性などが、鮮明に見えてくるでしょう。アメリカでは30万部を売り上げてベストセラーになったこの良著は、(悲しいことでもあるが)今でも色あせていません。本書が、多くの人の目に触れることを願いたいです。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 運動が苦手な男子・体育が嫌... | トップ | 書籍・webサイトの紹介(マス... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
素晴らしい! (女川山男(女に生まれたかった男))
2022-11-23 19:52:29
すばらしい論考ですね。
the red pillの上映会、行きたかったんですが、行けませんでした。
nikkohさんの論考集が配られたのですね(行けば良かった?)
the red pillについては上映会もいいけど、何とか日本語字幕付きDVDが
発売されないかなーとか思っています。
(英語版DVDは持っているんですけどね)
今後もnikkohさんの良記事に期待しています。
返信する
Unknown (翠流)
2022-11-25 00:46:42
国際男性デー
勝部元気という人の記事が読売に載ったようですが、
 https://twitter.com/katsubegenki?lang=cs
「青識亜論(せいしき・あろん)」さんのパロディが、なかなか良かったので紹介します。    https://twitter.com/frozen_sealion/status/1594992735458824192
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。