中国貴州省とそこで暮らしている苗族トン族等の少数民族を紹介しています。

日本人には余り馴染みのない中国貴州省と、今私が一時滞在中の雲南省や大理白族自治州大理古城について

「升学宴」と「謝師宴」について=その1

2013年08月19日 | 中国の大学

8月16日付雲南網(電子版)に拠れば、大理白族自治州教育局は、州、市並びに県の所管の各学校に対して、「各学校の教職員が謝師宴に参加する事を禁止する」という旨の禁止令を、7月13日に出したそうです。(注:大理は厳密に言うと大理白族自治州ですから、州の下に大理市があり、さらにその下に県が所属します)

その通達に拠れば、「いかなる形式であれ、教職員が「謝師宴」に参加するのを禁止すると共に、生徒や父兄からの贈り物や謝礼金の受け取りも禁じる。また、市民から、この通達に違反した者の事例の通報も受け付け、そのような通報があれば調査する。、この通達に違反した者は厳正に処分する。また、学校の党幹部や幹部、党員等は率先して、この通達の趣旨を理解して模範となるように行動すべき」等としているとの事です。

このような通達が出された背景の一つとしては、18日付雲南網によれば、大理市党委のある幹部は、7月下旬以降は「升学宴」の招待が毎日のようにあり、多い時には一日に5回も「升学宴」があると溜息を吐いたそうです。招待されても出席出来ない場合は、お金を別の人に頼んで渡して貰うそうですが、とても大変だと話したそうです。また、同じ大理州のある幹部は日頃全く付き合いの無い人からも「升学宴」の招待状が届く事があるが、これはお祝い金が目当てと思うとも述べているそうです。

また、ある大理州の高校の三年生を担任していた先生は、クラスから10名の大学合格者が出て、既に7名から「謝師宴」への招待があったが、当然ながら全て断ったと述べたそうです。しかし、自分の子供が大学への進学が決まったので、故郷と今住んでいる所の二箇所で「升学宴」を執り行ったそうです。

私も凱里市にすんでいる時、何度か「升学宴」や「謝師宴」に参加すると言う貴重な体験をしました。「升学宴」とは、子供が全国統一試験である「高考」に見事合格して、大学への進学が決まった際に、親が、親戚、友達、知人、同僚、隣人、先生等を招待して宴席を設ける事です。また、「謝師宴」とは、子供の担任や教科の先生、主任など子供が特別に世話になった学校の先生を宴席に呼んで招待する事の様です。

私が参加した「升学宴」は、凱里市でも有名な「酒店」の宴会場で行われ、招待客は約350名位いたように記憶しています。子供の親から簡単な挨拶があり、その後は、皆さんと共に宴会で出されたご馳走を頂くのみです。招待者に対しても、肝心の今度大学への進学が決まった子供の紹介等もされなかったように思います。宴会の間は、親が各テーブルを廻り、お酒を注いで廻っていましたが、食事が終わると解散です。座席も空いている席に、各人が適当に座るので、同席のテーブルの人がどのような人かは全く分かりません。主催者と一体全体どのような関係なのか、皆目見当は付かず、テーブルの前に並んでいるご馳走をひたすら食べるのみです。そして、食事が終わると、それぞれが適当に帰って行きます。

この時は、たまたまその宴会の主催者の子供の友達が、ある大学で日本語を専攻していると言う事もあり、私もその日本語を専攻している学生や肝心の学生やその友達と同じテーブルでしたが、別の「升学宴」では、全く知らない人に囲まれ食事をして帰ってきました。一緒に参加した知人から、何とか大学に行く事になった当の学生とその親を教えてもらったのみです。ただその時は、ホテル等ではなく、学校の校庭で宴会が行われましたが、参加者は300名位だったように思います。(注:貴州省では、野外で結婚の宴会や葬式などが行われる事も多い)

新聞等を見ると、子供が招待者に対して挨拶をしたり、進行役がいて来賓の挨拶等もあるような形式の「升学宴」もあるようですが、私が参加した「升学宴」では、親が簡単に挨拶するだけで、それ以外は何も無い形式の「升学宴」でした。

当然参加する人は、手ぶらではなく「紅包」(お祝い金)を持参して宴席に出席します。また、招待されても出席できない場合も、別な人にお願いして「紅包」を渡すのが普通のようです。「中新網」等に拠れば、ある人は、7月中に三名の人から「升学宴」の招待状が届いたが、「紅包」の出費を考えると憂鬱だと話しているそうです。

凱里市で私が、参加した「謝師宴」には、両親、進学が決まった子供、それ以外は担任の先生、主任、英語、歴史、数学の先生など全部で9名が出席したように思います。私は、たまたまその中国人と付き合いがあったのと、その頃凱里市で住んでいる唯一の日本人と言う事で珍しい事もあり参加したような次第です。その際には、レストランの個室で「謝師宴」が行われ、静かに話も出来て、それなりに楽しくもあり、大変貴重な経験となりました。

詳しくは分からないのですが、「升学宴」に先生も呼ぶような形式もあるようです。今回出された大理州のこの禁止令は、あくまでも教職員等が「謝師宴」に参加する事を禁止した通達なので、大理州のある関係者は「謝師宴」に先生が参加しなくても、左程問題は無いだろと述べているそうです。先生が参加するかには関係なく、友達、親戚、同僚、隣人等を招待しての「升学宴」は当然ながら、この時期には大理州の各地のレストランやホテルでも盛んに行われているようです。



最新の画像もっと見る