日本会議唐津支部 事務局ブログ

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【中学歴史教科書8社を比べる】109 ⒂ 「琉球・沖縄」の描き方のちがい <その9:中間まとめと考察2/2 ”領土問題”>

2017年03月04日 | 中学歴史教科書比較(2)h28-令和2年度使用

5 琉球藩・沖縄県設置の際、《清が領有権をどう認識していたか》についての記述のちがい

 これは、現在の尖閣諸島領有問題や、沖縄県のほんの一部の県民が模索している(?)「沖縄独立論」や、中華人民共和国人民解放軍の一部で唱えられているらしい「領土奪回のための沖縄侵攻論」に関係してくる大事な歴史認識なので丁寧に扱う。

 

⑴ 基礎知識 <ウィキペディア:領土問題>より 

・「領土問題(りょうどもんだい)とは、ある地域がどの国家領域に属するかをめぐって、国家間での争いが起きることである。

 よく領土問題の原因になるのが、その土地にある石油などの天然資源や、国境付近にある、農地、重要建造物である。また、その土地を始めに占有した国家が領有を明確にしていなかったり、付近に他の国家がありながらもその国家の了解を得ていなかったりといった歴史的経緯も、原因になりやすい

 領土問題は、植民地問題と並んで戦争テロのきっかけになりやすく、過去に世界各国で領土問題を発端に戦争が起きたこともある(ノモンハン事件印パ戦争など)。これら領土問題を戦争に発展させないために、国連国際法によって、一国が他国の領土を武力によって占有することを禁じている。」

 

・「領土の権原

 領土権を主張する根拠(権原)として、歴史的には以下のようなものがある。

  • 譲渡
    • 売買(例:アラスカをアメリカがロシアから購入)
    • 交換(例:樺太・千島交換条約
    • 割譲(例:下関条約での台湾取得)
  • 征服(国連憲章下で現在認められない)

   ・先占(無主地を国家が領有意思を持ち実効的に占有すると当該土地がその国の領土になる)

  • 添付(自然現象や埋め立て等で土地が拡張する場合)
  • 時効(土地を領有の意思を持って相当期間平穏公然に統治することで領有権を取得する場合)

がある。

 国際領土紛争では、「国家権能の平穏かつ継続した表示」という権原を基準に判定される場合が多い。」

 

・「国際判例による規則

 塚本孝によれば、これまでのICJ国際判例から次の様な規則が得られる。

  1. 中世の事件に依拠した間接的な推定でなく、対象となる土地に直接関係のある証拠が優位。中世の権原は現代的な他の権原に置き換えられるべき。
  2. 徴税・課税、法令の適用、刑事裁判、登記、税関設置、人口調査、亀・亀卵採捕の規制、鳥の保護区設定、入域管理、難破事件の捜査などが、国家権能の表示・実効的占有の証拠となる。
  3. 紛争が発生した後の行為は実効的占有の証拠とならない。
  4. 住民による行為は国家の主権者としての行為ではない。
  5. 条約上の根拠がある場合にはそれが実効的占有に基づく主張に優越する。
  6. 国は、相手国に向かって行った発言と異なる主張はできない。
  7. 相手国の領有宣言行為に適時に抗議しないと領有権を認めたことになる。
  8. 歴史的、原初的権原があっても相手国が行政権行使を重ね、相手国の主権者としての行動に適時に抗議しなければ主権が移ることがある。
  9. 発見は未完の権原である(実効的占有が行われなければ領有権の根拠にならない)。

10. 地理的近接性は領有根拠にならない。領海内の無人島が付属とされることはある。

11. 地図は国際法上独自の法的効力を与えられることはない。公文書付属地図が法的効力を持つ場合や信頼に足る他の証拠が不足するときに一定の証拠価値を持つ場合はある。」

 

⑵ 中間まとめ表(関係部分を再掲)

 

⑶ 考察

 ① 領土獲得の現実

 人類の国家成立以後、各国の領土獲得のほとんどは、①「征服(国連憲章下で現在認められない)」か、②「先占(無主地を国家が領有意思を持ち実効的に占有すると当該土地がその国の領土になる)」だったようだ。

 「琉球処分」は①征服にあたる。(※このシリーズでは、「侵略」を「征服」と同義としている。)

 「征服」は、国際法(国連憲章)で認められていないが、この数年のロシアや中共の無法によって、世界がふたたび《弱肉強食・帝国主義・覇権主義》時代に戻るかのような感さえある。国連の安保理はほとんど無力化されている(=国連軍を組織できない)。

 いずれにしろ、国際法で禁止していようがいなかろうが、世界の歴史では、《征服した国家が実効支配し続ければ、その国の領土になる》というのが現実なのだ。
 〔※第2次世界大戦後、史上ただ一度、《「正式な国連軍」の武力解放》によって、征服(侵略)国による「実効支配」を続けられなかった例が、1950~53年の朝鮮戦争。その侵略国=朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と、中華人民共和国(自称の通称:中国(戦後)または支那(戦前)/国際標準的な通称:china)。なお、正式にはいまだに戦争は終わらず(=平和条約が締結されず)「停戦状態」にある。〕

 

 ②「琉球処分」(併合)による日本領土化

 《日本国は、1872年当時は国際法で禁じられてはいなかった歴史的方法:征服によって琉球を併合し、「日清戦争」で示した実力(武力)によって、以後145年間実効支配をつづけている(※1945~1972年はアメリカの占領下)。》という言い方もできる。また、《〇〇以来、多くの(ほとんどの?)沖縄県民の民主的意思によって「日本国沖縄県」であり続けている。》と言うこともできると思う。※〇〇は、沖縄県民でないとわからない。

 琉球が”国際的に”日本領と認められたのは、1894年の日清戦争の勝利によってということはまちがいない。あるいは、清との2国間関係だけ考えれば1874年の「台湾出兵」時だとも言える。
 ただし、日本の側からだけみれば、1872年に「琉球藩」を作ったときとも言える。

 

・日本領土化の経緯について、《清は「認めなかった」》とだけ書いている学び舎は、中学生が領土問題は未解決だと誤解するおそれがあり不適切

・経緯について、きちんと”国際的視野”で書いているのは東京書籍、2国間関係で書いているのは自由社

・日本政府の見解を書いているのは、育鵬社、日本文教、清水書院。 

・経緯・理由は書かず、結果だけたんたんと書いているのが教育出版

帝国書院・・・接続詞「しかし」の後の文が説明不足で、なぜ「しかし」なのかは、中学生にも一般の大人にも分からないだろう。

 

~次回、おまけ:前回は(今回の)学び舎と同様だった、「琉球処分」記述における東京書籍の進歩・改善の謎について~

<全リンク⇒> 琉球・沖縄<101102103104105106107108109・/>


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