IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

a la luz de la aurora...? (オー、セイ・キャン・ユー・シー)

2006-05-01 14:13:35 | ニュース
今年もタイム誌が「世界で最も影響力を持つ100人」を発表していて、ブッシュ大統領やローマ教皇といった馴染みの顔に加えて(日本からは小泉純一郎首相も選出されている)、NBAプレイヤーのスティーブ・ナッシュやU2のボノ、さらにはバレンシアーガのデザイナーとして知られるニコラス・ゲスキエールとといった名前も登場していて面白い。あくまでアメリカの雑誌が選んだ100人なんだけど、知らない名前もあったりして、これが意外と勉強になるのだ。今回選ばれた100人の中には俳優ジョージ・クルーニーの名前もあり、政治的な運動に積極的なクルーニーの注目度をあらためて目のあたりにした。クルーニーといえば、最近はアフリカ関係の活動に積極的で(とりわけ、スーダンのダルフール問題)、先週はワシントンのプレスクラブで講演を行っている。数週間前には「ホテル・ルワンダ」や「サムタイム・イン・エイプリル」の内容が事実と異なると一部メディアで報じられていたけど、ハリウッドでアフリカの内戦がホットな話題になっているのは間違い無さそう。さて、今日はアメリカ国歌「星条旗よ永遠なれ」のスペイン語版が発表されたことで巻き起こった議論に関するニュースを。

ブッシュ大統領といえば片言のスペイン語を話せることで知られており、弟でフロリダ州知事のジェブにいたってはほぼ完璧なスペイン語を話すことができる(ジェブ・ブッシュ知事の妻はメキシコ出身者でもある)。毎週土曜日に行われる国民向けラジオ演説を初めてスペイン語で行った事さえあるブッシュ大統領だが、アメリカ国歌に関しては「英語のみで歌われるべき」との姿勢を崩さなかったようだ。「アメリカ国歌は英語で歌われるべきだと私は思っています」、ブッシュ大統領は28日、ホワイトハウス内のローズガーデンで記者団に対してそう語っている。「この国の市民になりたいと考える人は英語を学ぶべきだし、英語で国歌を歌えるようにもなるべきだと思う」、ブッシュ大統領はそう続けた。同じ日、アメリカ各地にあるスペイン語ラジオ局では「ヌエストロ・イムノ(私達の国歌)」と題された曲が初めて紹介され、アメリカ国歌「星条旗よ永遠なれ」の音楽をベースに歌詞が全てスペイン語に変更されている。

「私達の国歌」の製作者がマイアミ・ヘラルド紙に語ったところでは、この歌はヒスパニック系コミュニティ版「ウィ・アー・ザ・ワールド」だとの事で、何人ものアーティストがジャンルを超えて世界各地でレコーディングに参加している。参加アーティストには人気歌手のワイクリフ・ジョン(ハイチ系の彼もスペイン語で歌っている)やオルガ・タニョン、アイビー・クイーンなどが名を連ねている。製作スタッフの1人であるアダム・キドロン氏はAP通信の取材に対し、議会で続く移民に関する議論をテレビで見たのが「私達の国歌」を作るきっかけだったと語り、これがアメリカにいるヒスパニック系移民に英語学習や英語での国歌斉唱を行わないよう訴えているわけでは無いと強調した。「我々は今回発表したスペイン語版アメリカ国歌が、英語がまだ理解できない移民達にとって一種の教材的存在になりえると考えています。この歌で移民達にアメリカ国歌の概要を学んでもらい、アメリカ国旗や自由という言葉が持つ意味についても理解してほしいのです」、キドロン氏は同じ日に声明でそう語っている。

イギリス生まれのキドロン氏は16年前にアメリカに移住しており、一部の批評家による「アメリカ国歌のスペイン語のコピーは絶対許されるべきではない」とのコメントに対し、「星条旗よ永遠なれ」のメロディが元々はイギリス国内のパブなどで演奏されていた曲だった事実を指摘し、スペイン語の歌詞だけが受け入れられないと論じる風潮はおかしいとも指摘している。しかし、フィリピン系アメリカ人で保守系コラムニストのミシェル・マルキン氏は「我々の国歌」を不法移民のテーマ曲と一蹴し、ジミー・ヘンドリックスでさえ超えなかった一線を越えたと激しく批判している(ヘンドリックスはオリジナル・バージョンでアメリカ国歌を演奏したが、歌詞までは変更していなかった)。国歌の定義が移民問題に加わる中、5月1日は全米各地で移民らによる大規模なデモが計画されており、ブッシュ大統領はデモ参加予定者らに向けて「職場や学校をボイコットしないように」とメッセージを発している。

友人に薦められて、ようやく「パラダイス・ナウ」のDVDを借りることにした。実はまだ作品を見ていないため、栄華の感想について書く事はできないんだけど、テルアビブを舞台に2人の自爆テロ犯を描いたこの映画、友人の間での評判は凄く高い。今週は何人かの友人とポール・グリーングラス監督の「フライト93」を映画館に見に行く予定で、911テロ事件をテーマにしたこの映画を見終わったあとに、アメリカ人の友人が映画に対してどういった感想を持ったのかを聞いてみたいとも思っている。911同時多発テロ事件が発生した日、僕はボストンにいて、ハイジャック機が飛び立ったローガン空港の近くまで実際に行ったりした。僕も911事件の思い出はあるけれど、自分の思い出とアメリカ人が持つ思い出にどれだけの違いがあるのか今までじっくりと話し合ったこともなかったので、今回の映画がいい機会になるかもしれない。

写真:30日にワシントン市内でダルフール問題に関する演説を行ったジョージ・クルーニーと父親のニック・クルーニー(左) (AFP通信より)