IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

読書の秋はとっくに終わりましたが

2004-12-17 18:17:32 | ニュース
最近、日本から買って返ってきたものも含めて3冊の本を同時進行で読んでいるのだが、どれもなかなか面白く、このブログで少しだけ触れておこうかなと思う。どれもそれぞれテーマはバラバラだけど、寝る間を惜しんでも読むに値すると個人的には思ったので、最近読んでる3冊の本をここに記しておきます。

分断されるアメリカ: サミュエル・ハンチントン著
サッカー移民: 加部究著
食肉の帝王: 溝口敦著

自分で言うのもなんだけど、よくもまぁこれだけ読む本のテーマに一貫性が無いなぁと溜息が出るが、意識的にしろ様々な分野の話に耳を傾けておかないと、1つの視点でしかモノが見えなくなると思うので、読書の時には今まで自分が全然興味を示さなかったテーマの本を読もうと心掛けているのだ。それはそれで、結構難しいことなんだけど。

でも、今日ここに紹介した3冊の本は、それぞれのテーマがアメリカ的価値観、サッカー、大阪(本当に大まかに言えば)だから、僕にとってはそれほど新しい分野じゃない。前のパラグラフで格好のいい事を言ってしまったが、今回に関しては自分にとってそれほど目新しいテーマではない。しかし、この3つがそれぞれ3通りの面白さを見せてくれているので、少しだけ本の紹介をしておきます。

1冊目の「分断されるアメリカ」だが、正直なところ、まだ最初の30ページほどしか読んでいないので、これといったことを書くことは不可能だ。しかし、著者のサミュエル・ハンチントンには個人的に思い出があって、911テロ直後に(当時の僕はボストンに住んでいたのだが)「文明の衝突」を書いたハンチントンに対して、学生らを中心としたグループがハンチントンの職場であるハーバード大学前でデモを行っていたことを思い出す。ある意味で、今のアメリカの象徴的存在であるハンチントンの考えを、ブッシュ政権2期目直前のこの時期に知るのも悪くない。

「サッカー移民」を購入したのは、もう半年以上も前の事で、実は以前に一度読み終えていた本なのだが、先週末に帰ってきて以来、何となく再び読み始めてしまったのだ。本の中では、ブラジルの日系人サッカーリーグのことが詳しく書かれており、「ジーコ以前」に日本にやってきたネルソン吉村やセルジオ越後らの半生も紹介されている。そして、Jリーグ開幕後にやってきたサンパイオのようなスター選手や、最近活躍中の闘莉王マルクスのエピソードなどもあり、日本とブラジルがサッカー以外でも繋がりが深いことを改めて実感した。僕は小学生時代に参加した青空サッカー教室で、生前のネルソン吉村さんに会ったことがあるが、メチャメチャ格好よかったネルソンさんの姿は今でもはっきりと覚えている。

3冊目の「食肉の帝王」は以前から雑誌等の書評で面白そうなものだと思っていただけに、帰国2日前に買って以来、1日20ページほどのゆっくりとしたペースで読んでいる。1冊目同様にまだ完全に読み切れていないため、感想らしきものも書けないのだが、関西の裏社会うんぬんよりも、人物伝として読むとかなり面白いのだ。政治家やゼネコンといったありきたりのテーマではなく、食肉業界に視線を向けた新鮮さにも感服。

来年度からメジャーリーグのモントリオール・エキスポスがアメリカの首都ワシントンに本拠地を移し、ワシントン・ナショナルズとして生まれ変わることが決定しているが、ここにきて雲行きが怪しくなってきている。球団誘致を積極的に行っていたワシントンのウイリアムズ市長はモントリオールから球団を引っ張ってくる際に、数年後の新球場建設に市側が建設費を全額負担すると公言していたものの、メジャーリーグ機構側がワシントンへの移転を承認する前後から市議会内の反対勢力が大きくなり、市長も前言を撤回してしまったからだ。

現在、市側が機構に対して提案した妥協案では、400億円になる建設費の半分を市が捻出し、残りの半分を民間企業や投資家などから募ろうというもの。移転決定後に市側が大幅な条件の変更を求めてきたために、機構側は怒り心頭で、場合によってはエキスポスのワシントン移転が白紙撤回される可能性がでてきた。移転が決まる前、ワシントンと北バージニアはそれぞれ積極的な誘致活動を展開してきたが、これで白紙撤回なんかになったら本当に情けない。

新チーム名もナショナルズに決定し、水曜日には市内のスポーツレストランで来年度から使用するユニフォームのお披露目会が計画されていたが、一連の騒動で会は延期となっている。熱烈な野球ファンの中には、すでに年間シートの前払いを済ませた者もいるようで、今後大きなトラブルに発展する恐れもある。ウィリアムズ市長の提案した4万1000人収容の新球場建設に民間企業からの助けが得られないとすれば、市側は税率のアップなどで資金を調達する可能性もあるが、その場合にも市長の政治生命が危うくなることは必至だ。どうすんだい、市長!

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