IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

2008年を意識する有力議員、すでにハリウッド詣でを開始

2005-11-16 09:26:41 | スポーツ
イタリア国営放送(RAI)が先週放送したドキュメンタリーでは、イラク駐留米軍が2004年のファルージャ攻撃で白リン弾と呼ばれる化学兵器を使用していたと報じ、ヨーロッパのメディアを中心にRAI報道に関するフォローアップが何度も行われていた。僕もこのドキュメンタリー内容が気になっていたので、時間を見つけては様々な新聞のアーカイブに目を通してきたんだけど、昨日の晩になって面白いニュースを見つけた。サン・ディエゴの新聞「ノース・カウンティ・タイムズ」が昨年4月10日に報じた記事で、海兵隊に従軍取材していた同紙のダリン・モーテンソン記者がファルージャから戦闘の様子をリポートしている。記事の中では海兵隊が白リン弾を打ち込む様子も描かれていて、僕の知る限り、ファルージャでの白リン兵器使用に関して一番古い資料だと思う。おそらく電話インタビューになると思うけど、できるだけ早い時期にモーテンソン記者に話を聞いてみたい。さてさて、今日はハリウッドと大統領選挙の関係を報じたロサンゼルス・タイムズ紙の記事と、メジャーリーグの新薬物規定に関するニュースを紹介します。

8日に行われた特別住民投票でシュワルツェネッガー知事が「全敗」を喫したカリフォルニア州、全国的な関心を集めた住民投票の陰に隠れる形で、2008年の大統領選挙への出馬が噂される複数の民主党有力者達がすでに資金集めを開始した模様だ。「ロサンゼルスは資金集めに欠かせない重要な町です。普段はハリウッドの価値観に反対する議員たちも、資金集めのために必ずこの町を訪れています」、民主党でキャンペーン戦略を担当するビル・カリック氏はロサンゼルス・タイムズ紙の取材に対してそう語る。大統領選挙まで残すところ3年、出馬を正式に表明した大物候補者は依然としてゼロの状態だが、西海岸ではすでに選挙戦本番さながらの資金集めがスタートしている。ヒラリー・クリントン上院議員は10月14日に俳優テッド・ダンソンが主催する資金集め集会に登場し、同じ日の晩には映画監督ロブ・ライナーの自宅に設けられた試写室で、150人のゲストを前に演説を行っている(ゲストは1人あたり500ドルの参加費を支払っている)。

翌日、クリントン議員はブルース・コーエン氏(「映画「アメリカン・ビューティー」のプロデューサー)と共にブランチに参加し、昼過ぎにはバーバラ・ストライサンドやダニ・デビートらが主催する昼食会に姿を見せている。僅か2日間の滞在で30万ドル以上を集めたクリントン議員だが、5月からカリフォルニア州で開始した資金集めイベントへの参加で、すでに100万ドル以上を手にしている。クリントン議員がワシントンに戻ってから数日後、ロサンゼルス市内の劇場で行われた「環境メディア賞」の授賞式に、アル・ゴア元副大統領がゲストとして招待されている。多くのハリウッド関係者が参加した授賞式の最中、ステージに上がったシンディ・ホーンさん(夫のアラン氏はワーナー・ブラザーズの社長をつとめる)が会場のゲストに向かって「ゴア氏が2008年大統領選挙に出馬するというのはどうでしょうか?」と呼びかける一幕があり、会場は熱狂に包まれている。ゴア氏は複数の参加者に対して「大統領選挙には興味がない」と語っているが、政治コラムニストのアリアーナ・ハフィントン氏はロサンゼルス・タイムズ紙の取材に対し、クリントン議員を「中道過ぎる」と考えるハリウッドのリベラル派がゴア氏を支持する可能性もあると指摘している。

「パルプ・フィクション」や「キル・ビル」の大ヒットで知られる大物プロデューサーのローレンス・ベンダー氏は、現在製作中の地球温暖化をテーマにしたドキュメンタリーでゴア氏に出演を依頼したのがきっかけで、ロサンゼルスで頻繁に会うようになっている。前回の大統領選挙では民主党大統領候補のジョン・ケリー上院議員のために60万ドルを調達したベンダー氏だが、ロサンゼルス・タイムズ紙の取材には「ゴア氏が次の選挙に出てくれればなと思いますよ」とコメントしている。カリフォルニア州を中心としたエンターテーメント産業は以前から大口の政治献金を行っていたが、ビル・クリントンの登場によって献金額が大幅に増えている。政治献金調査団体CRPの調査によると、1990年にエンターテーメント産業(映画、テレビ、ラジオの3つ)が行った政治献金の総額は580万ドルだったが、クリントン氏が大統領に当選した1992年には1360万ドルにまで増加し、そのうちの73パーセントが民主党候補に流れている。2002年には献金額が4000万ドルに達しており、その額は今も増え続けている。

従来よりも厳しい薬物規定の設置をめぐって調整が行われてきたメジャーリーグだが、15日になって選手会とオーナーが罰則強化に同意し、ステロイド剤の使用が発見された場合の出場停止試合数が大幅に変更される事となった。今回合意に達した新ルールでステロイド剤使用が確認された場合、1回目が50試合、2回目は100試合の出場停止処分となり、3回目で永久失格処分という厳しいものだ。これまでの規定では、それぞれ10日、30日、60日の出場停止処分が科せられるだけで、5回目で永久失格処分となっていた。また、選手会とオーナー側はアンフェタミン(中枢神経興奮剤)検査の実施にも同意しており、メジャーリーグ機構は来年度から初めてアンフェタミン検査も行う予定となっている。「今回の決定は我々の競技から禁止薬物を排除するための非常に大きな一歩であり、国民の信頼回復に努力していかなければなりません」、大リーグ機構コミッショナーのバド・セリグは声明でそう語っている。

メジャーリーグでは10ヶ月前に薬物規定が設けられたばかりだが、罰則が甘すぎるとの批判が議会を中心に噴出しており、一部の議員は薬物検査と罰則を法制化すべきだとまで主張していた。選手会の代表とオーナーの代理人は15日、ワシントンの連邦議会を訪れ、ステロイド法案の立案者でもある下院政府改革委員会のトム・デービス議長(共和党)と会談を行っている。下院政府改革委員会は3月17日に禁止薬物の使用に関する公聴会を開いており、マーク・マグワイアやホゼ・カンセコといった引退選手や、現役のラファエル・パルメイロらが証言を行っている。公聴会の終了後、セリグ・コミッショナーとドナルド・フェール選手会代表は、参加した議員達から「薬物検査が甘すぎる」として集中砲火まで浴びている。議会による予想外の積極性に驚いたセリグ・コミッショナーは、公聴会の翌月に新罰則案を発表している。

CBSニュースのボブ・フス特派員は、議会による圧力が選手会やオーナーに新規定を合意させる直接的な理由となったと語り、選手会は逃げ場の無い状況にまで追い詰められていたと指摘している。事実、9月28日に行われた上院の公聴会では、共和党のジョン・マケイン上院議員がフェール氏に「早急なアクションを起こすべきです」と語り、最後通告ともとれるメッセージを発している。共和党のジム・バニング上院議員(ケンタッキー州)とマケイン議員は先週、ステロイド法案の罰則緩和を発表しており、新たに提出される法案では1回目の使用発覚で半シーズンの出場停止となり、2回目で1シーズン、3回目で永久失格処分となる。マケイン議員らはこの法案をメジャーリーグ以外にも適用したい意向を見せており、NFL、NBA、NHL、そして野球のマイナーリーグがその対象となる可能性が高い。

シカゴシカゴ・トリビューン紙の高橋邦典さんからメールをもらった。アフリカでの石油関連取材をいったん終えて、南アフリカからドバイまで移動する事にしたらしい。アンゴラでの取材開始に少し時間がかかりそうとの事で、中東方面の取材をこれからスタートさせるそうだ。ドバイからイラク南部に移動するとメールには書いてあったけれど、治安の悪化もあって取材が大変なものになりそうだとも。とにかく、無事に取材を終えてシカゴに戻ってくる事だけを祈っている。クニさん関連でもう1つだけ書いておきたい事があって、以前に行ったリベリア取材がトリビューン紙の特集コーナーに掲載されている。リポーターと共にリベリア国内で取材活動を行ったクニさん、カメラだけではなくビデオも使って、内戦で大荒れとなったリベリア国内の様子を紹介している。ウェブではビデオ・ドキュメンタリーも見れるので、チャンスがあれば、ぜひ見てください。僕の生半可なコメントよりも、記事や写真(それにドキュメンタリー)を見て何かを感じてもらえればと思う。


写真:ワシントンの連邦議会で15日に行われた記者会見で、薬物規定の合意発表を明らかにした共和党のジム・バニング上院議員 (AP通信より)

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