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※ 練金術(ねりきんじゅつ)とは『週刊金曜日』練馬読者会的やり方という意味です。

温泉ブームの陰で★レジオネラ菌からみえてくること

2013年04月05日 | みんなの日記
 日本人は温泉大好き人びと。一般老若男女にかぎらず週刊金曜日読者も例外ではありません。さすが地震と火山の国。
 私たちも練馬読者会を中心に、こだわりの秘湯探訪をはじめ八ツ場ダム問題を考える川原湯温泉訪問など、心ゆくまで語り合う貴重な機会として《温泉読者会》と銘打ったツアーへ何度も参加してきました。

 …… ですが今回は別の話。
サイボク天然温泉まきばの湯 2012年12月、埼玉県日高市の「サイボク天然温泉まきばの湯」は利用者の8人がレジオネラ菌に感染したとして県から「菌の不検出を確認する日まで」営業停止という行政処分を受け、明くる1013年1月には まきばの湯を運営する(株)埼玉種畜牧場サイボクハムが「食を扱う会社として、もう一度問題が起きると、会社自体が立ち直れなくなる」「発症者の心情と事態の重大性、利用客を守れなかった責任」から温泉施設の閉館を決めたと報道されました。

 従業員を使い捨てにすることによってしか業績を確保できないような企業が、大手を振ってまかり通るようになった昨今の企業社会。そんな中で、サイボク温泉はひと(従業員)にやさしい会社として、ベストセラー書籍にも取り上げられました(『日本でいちばん大切にしたい会社』坂本 光司著 第2巻)。そんなこともあって、「まきばの湯」は広い敷地(約9万平米)に牧場・農産物販売処・レストランなどと一体的に賑わっていた温泉施設でした。

 ナトリウムー塩化物泉の内湯と露天、2つの源泉かけ流し浴槽を中心に、せっかくの泉質を変質させないため、塩素系薬剤による殺菌は行わず(銀イオンで殺菌)、浴槽内のマッサージ効果にはエアロゾルを発生させないジェット水流を採用(よくあるバブルジェットに比べコストはかかる)。広めの駐車場には「温泉スタンド」を併設するなど、湯量も豊富(922L/Sec)でした。
 近年とみに数を増している日帰り温泉施設のなかで評判も高く、気に入って利用していただけに、残念な顛末ではありました。
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 レジオネラ症は、もともと土壌や川湖など自然環境に広く生息するレジオネラ属菌が、循環式浴槽やビル空調機の冷却塔などから発生するエアロゾルの形で肺へ吸い込むことで感染する肺炎の一種で、法改正(1999年)により、それまで単なる肺炎とされていたものがレジオネラ症として医者から保健所への報告義務が生じ、直近では日本全体で年間7~800人の発症(うち数人が死亡)が確認されています。

 にもかかわらず、レジオネラ症で人気温泉施設が閉鎖された例は他になく、発症した入浴施設を見ても、例えば2002年に295名もの集団感染を出し、そのうち7名が死亡した宮崎県日向市の温泉入浴施設は1年以上の営業停止を経て再開し、今も営業しています。体力の弱ったお年寄りや病弱者を除けばそれほど心配する必要はないといわれる所以です。
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 どうやら、まきばの湯施設閉鎖の理由は「肉屋さん」が本体事業への風評波及を恐れたこと以外になさそうです。年間30万人のサイボク温泉利用者は、あんな立派な温泉入浴施設をこのまま閉鎖させてしまうのは勿体ないと感じているかもしれません。

 根強い温泉ブームと地下探査・掘削技術の進化に支えられて、温泉入浴施設は乱立ぎみです。とはいえ、だからこそ“悪貨が良貨を駆逐する”結果とならぬためにも半年後、1年後の営業開始を期待したいものです。


 蛇足ながら、《事故責任》の取り方についても考えさせられます。
 “自己責任”とは、もともと投資行動や企業経営など自分の意思で経済活動をするときに問われる問題なのです。自己責任で事故を起こしてしまった場合どうなるのか。このサイボク温泉のケースを、放射能は“無主物”だと言いはって一切の責任を取ろうとしない、世界一の電力企業のふるまいと対比して考えてみることも、意味がありそうです。許されるべき企業経営の自由とは?…経営者に倫理は必要ないのか?…と。
(イトヤン)  
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