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NEOMAP Web Forum

総合地球環境学研究所プロジェクト4-4「東アジアの新石器化と現代化:景観の形成史」のwebフォーラム

予測モデリングと遺跡立地

2009-01-08 18:10:11 | NEOMAP本部
昨年、J. Christopher GillamさんがNEOMAP本部にしばらく滞在されたときに、
GISの考古学への応用について、幸いにも多くのご指導をいただきました。
これを私ひとりの胸の中にしまっておくのはもったいないので、ここでその一部を紹介していきたいと思います。

今日紹介するのは予測モデリング(Predictive Modeling)です。

乱暴に要約すると、
これは既知の遺跡をサンプルとして扱い、その遺跡の立地する環境をモデル化することで、
同じような環境の土地を「遺跡存在予想地」として予測する分析だと理解しています。

クリスさんの方法の特徴は、この分析に遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)を用いる点です。
遺伝的アルゴリズムとは、これも乱暴に要約すると、
コンピュータの計算能力を活用して、複雑な計算を繰り返しながらモデルを最適な値に近づけていく方法です。
クリスさんが使っているDESKTOP GARPというソフトウェアは、
植物や動物種の分布の予測モデルを作るために発展したもので、
生態学的適所モデリング(Ecological Niche Modeling)などとも呼びます。
この方法によって、より少ないサンプルで、より精度の高い予測を行うことができるそうです。

古くは佐原眞が指摘したように、遺跡存在は常に暫定的なものですが、
数量的に遺跡を分析しようとするときには、どうしてもこの事実に目をつむらざるを得ません。
数量的なデータは、あくまで今発見されているものから得るしかないからです。
しかし、現在の遺跡分布を統計学的なサンプルとして扱い、遺跡存在を確率的に予測する、という予測モデリングの方法論と考え方は、この問題を乗り越えるために重要となるかもしれません。(いなはた)