我が家の近所にチビのママを飼ってくださってるおうちがある。
18年前の初夏に、我が家の近所に若い雌の野良猫が住み着いて、6月頃に4匹の子猫を産んで、我が家の周りを、子猫を連れてぐるぐる回って、授乳しながら子育てしていた。
日陰になる、我が家の裏のプランターの中で4匹の子猫に授乳している姿を、当時存命だった義父が、そおっと一人で見守っていたようだ。義父も猫が好きだった。
真夏になる頃、子猫はいつのまにか2匹になっていた。白っぽい雌とキジトラの雄の子猫。
日が暮れて、私が仕事から帰宅すると、薄暗い庭を子猫がのろのろ、うろうろしていた。もう逃げようともしない。
早朝に目が覚めて、トイレに行ったあと、二階の窓から庭を見下ろすと、庭先で母猫が2匹の子猫に乳を飲ませてる姿を見た。頑張ってるなと感心した。
でも、うちの子にしようなんてみじんも思わなかった、そのときは。
ある日、白い子の右目が目やにで潰れてしまっているのを発見して、ホウ酸を買ってきて、白ちゃんを掴んで家の洗面台に乗せて、目を洗ってやった。
で、洗浄後に開放しようと玄関を開けると、キジトラが走って寄ってきた。妹を救出しに来たのかと思ったらいじらしくてね。玄関の中に入れて、2匹にツナ缶をふるまった。(後で人間用のツナ缶は猫には塩分きつ過ぎと知った)
2匹でむしゃぶりついて食べていた。食べ終わったら、外に出した、っていうか、扉を開けたら出て行った。こいつらに警戒心は無いのか。
その8月のある日、キジトラ子猫の両目が塞がって、家の周りをうろうろしていた。日差しが暑い。
当時、高校生だった長男が「なんとかしてくれ、助けたい」と言うので、キジトラをお湯に漬けて人間用シャンプーで洗濯した。
お湯はドロドロに真っ黒になり、蚤がぞろぞろと湧いてきた。お湯に漬けられても子猫は無抵抗で、じーっとしていた。濡れて骨と皮だった。
動物病院に連れて行き、脱水症状だったので点滴を受け、鼻炎だったのでネブライザーを受けて帰宅。そのままダンボールに入れてうちの猫にした。
その夜、母猫が子猫を迎えに来て、一晩中家の周りで鳴き続けた。
私は彼女に約束した。
「ごめん、この子は返せない。その代わり、ママより絶対長生きさせる。約束するからうちの子にさせて」
その後、世話をする猫が1匹になったので、ママはシロちゃんを育てあげ、2匹で近所の家の飼い猫に昇格した。そこのお宅で飼ってたワンコが亡くなったのもある。シロちゃんは、それから早死にしてしまったけど、ママは長生きしてて、時々散歩する姿を見かけたけど・・・
ふと気付くと、ママの姿を見かけなくなっていた。
昨日、主人がママの飼い主さんと会ったので、ママの近況を訊いたら「あ、去年の丁度10月に死にました。今頃です。もう1年になるんだな。」
ママ、ごめんね。死んじゃったの知らなくて。でも息子が18歳なら、ママは19歳越えてるもんね。生きてたら、きっと。
去年、亡くなったなら多分18歳か19歳ってところかな。最後は痩せて何も食べなくなったらしい。大往生だったね。
ママ、約束は守ったよ。チビはあなたより先には死なせなかったよ。今頃はシロちゃんや先に天国に行った赤ちゃんたちと会えたかな。
いつかチビもあなたのところに行くと思うけど、まだもう少しこっちにいさせてね。
ママ、どうか安らかに・・・