『探しものは何ですか?
見つけにくいものですか?
カバンの中も、つくえの中も
探したけれど、見つからないのに』
若い頃よく耳にした
井上陽水「夢の中へ」の歌いだしである。
「また、探しもの!」。
これは年齢とともに決して笑えない事実。
切実で、大きな問題である。
最近は富に、何かを毎日のように探している。
いつものところに車のキーがない。
冬は、出がけの寸前に毎回毎回「手袋はどこだ!」。
この時季は花粉症で、
残っているはずのティッシュが、「見当たらない!」。
そして、1日に何回も「スマホをどこに置いたっけ!?」だ。
そんな近況の中から、
フード付きウインドブレーカーに絞って、
「探しもの」エピソードを記す。
ウオーキングクローゼットには、
現在4着のウインドブレーカーがかかっている。
どれも、フード付きである。
フード付きなのは、
「少しでも若く見えるように」との見栄・・・。
その中の3着についてだ。
1着目は、紺地に細い斜めの格子柄が入ったもの。
色も柄もかなり若い感じがする。
それだけに、着用すると少しテンションが上がる。
昨年の秋だ。
やや肌寒くなり、久しぶりにこのブレーカーで出かけようとした。
てっきりクローゼットのハンガーにあると・・・。
ところが、当てが外れた。
家内に訊いても、「かかってないの?」の答え。
それから先は、慌ててタンスの引き出し、和室や2階の押し入れ・・。
思いつくまま家中を捜索した。
どこにもなく、「見当たらない!」と大声。
その日の夕食時に、最後に着用したのはいつだったか、
家内と一緒に振り返った。
すると春先にさかのぼることになってしまった。
春、きっとどこかに置き忘れてきた。
ならば「もう4ヶ月も前のこと!」。
諦めるしかないと私は思った。
ところが、それから数日して、
パークゴルフの例会があった。
その帰りに、パークゴルフ場の管理人さんに家内が尋ねた。
「春に、ウインドブレーカーの忘れ物はなかったですか?」
「忘れ物なら、そこにみんなかけてあるけど」。
屋外休憩所の壁に、忘れ物が数点かけてあった。
4ヶ月が過ぎていたのに、
紺地のウインドブレーカーがぶら下がっていた。
お礼も忘れて持ち帰り、翌日早速洗濯した。
驚いたことに、洗濯機には数匹のカメムシの死骸が浮かんだ。
きっとポケットに入っていたのだ。
探しものはあったが、気分は曇った。
2着目は、1番お気に入りのウインドブレーカーだ。
黒無地に、真っ白いAdidasのロゴが片方の上腕にあった。
とてもシンプルなものだが、
ここ3年程の使用頻度はダントツ。
ところが、ゴールデンウイークの最中である。
時には、食料品の買い物に付き合おうと、
そのブレーカーを取りに行った。
ところが、クローゼットの定位置にないのだ。
その周辺を探してもない。
「どうしてないの!」。
探しものが日常化しているとは言え、
1番のお気に入りが・・・。。
イライラ感が高まった。
買い物に付き合う気持ちも失せた。
買い物を後回しにして、
家内も一緒になって、家中をくまなく探した。
まさかと思いつつも、
愛車の車内もトランクも見た。
どこにもない。
後は、どこかに置き忘れてきた以外にない。
「去年の紺色のようなことも・・」
10日前からの出かけ先を振り返った。
忘れそうな所が3箇所あった。
1つ目は、自治会の会議があったT会館。
私はそこのキーを保管していた。
車で行って、解錠し室内を探した。
忘れ物らしいものは何一つなかった。
2つ目は、室蘭市内のゴルフショップだ。
手頃な長袖シャツを買い求めに行った。
その試着の時、忘れたかも知れない。
お店に電話した。
忙しいだろうに、時間をかけて丁寧に対応してくれた。
答えは、「ノー!」だった。
3つ目は、よく通う整骨院だ。
4月初めに、軽いギックリ腰になった。
それから、週に2回程度通院していた。
連休で休みと知っていたが、電話してみた。
私の問いに、
「ああ、ないですね」
いつもと違って、素っ気ない声だった。
「休みの日に、すみませんでした」
と電話を切った。
もう探しようがなかった。
すっかり諦めかけたその時、
ウオーキングクロゼットの奥から、
「ありました!」
家内の声が飛んできた。
行ってみると、洋箪笥の扉が開いていた。
そして、ブレザーをかける木製のハンガーにそれはかかっていた。
考えごとでもしながら、私が木製ハンガーにかけたに違いない。
「ああ、ボケたな!」
思わず口をついた。
3着目は、この春に買ったばかりだった。
ゴルフで風除けにと、やや派手な薄茶と白のツートン柄だ。
それを着て、ゴルフへと意気込んだ。
これまた、いつもの場所にない。
Adidasの黒同様に家中を捜索し、車も見た。
そして、まさかと思いつつも洋箪笥の扉も開いてみた。
「そんなことはないだろうが、でも」と、
ゴルフのキャディーバッグの中も見た。
もう私自身を信じられなくなった。
結局、見つけらまま2日が過ぎた。
その日の朝は、3日に一度の洗濯日だった。
朝食後、家内がそれを干しにかかった。
ここで、若干横道に逸れる。
北海道では、洗濯物を外に干す家庭は少ない。
多くの家が、四季に関わらず家干しである。
我が家もそれにならって、外に物干しはない。
代わって、別棟の物置ではなく、
家の中に、倉庫を兼ねた狭い物干し部屋がある。
その部屋から、家内の大きな声が
「ねえ、あったよ!」。
急いで、ドアを開けた。
部屋の物干し竿に、
ハンガーにかかったウインドブレーカーがさがっていた。
急に思い出した。
2日前の朝、散歩に出た。
10分もしないうちに、急に強い雨になった。
こんな時はフード付きが便利。
頭を濡らすことなく、引き返した。
家に着くとすぐに、
ウインドブレーカーの雨粒を落とし、
そこに干したのだ。
それをすっかり忘れ、思い出せなかった。
「それは、認知症の初歩です。
お気をつけて下さい!」
誰かにそう言われそうで、怖くなった。

八重桜 「華やか!」
見つけにくいものですか?
カバンの中も、つくえの中も
探したけれど、見つからないのに』
若い頃よく耳にした
井上陽水「夢の中へ」の歌いだしである。
「また、探しもの!」。
これは年齢とともに決して笑えない事実。
切実で、大きな問題である。
最近は富に、何かを毎日のように探している。
いつものところに車のキーがない。
冬は、出がけの寸前に毎回毎回「手袋はどこだ!」。
この時季は花粉症で、
残っているはずのティッシュが、「見当たらない!」。
そして、1日に何回も「スマホをどこに置いたっけ!?」だ。
そんな近況の中から、
フード付きウインドブレーカーに絞って、
「探しもの」エピソードを記す。
ウオーキングクローゼットには、
現在4着のウインドブレーカーがかかっている。
どれも、フード付きである。
フード付きなのは、
「少しでも若く見えるように」との見栄・・・。
その中の3着についてだ。
1着目は、紺地に細い斜めの格子柄が入ったもの。
色も柄もかなり若い感じがする。
それだけに、着用すると少しテンションが上がる。
昨年の秋だ。
やや肌寒くなり、久しぶりにこのブレーカーで出かけようとした。
てっきりクローゼットのハンガーにあると・・・。
ところが、当てが外れた。
家内に訊いても、「かかってないの?」の答え。
それから先は、慌ててタンスの引き出し、和室や2階の押し入れ・・。
思いつくまま家中を捜索した。
どこにもなく、「見当たらない!」と大声。
その日の夕食時に、最後に着用したのはいつだったか、
家内と一緒に振り返った。
すると春先にさかのぼることになってしまった。
春、きっとどこかに置き忘れてきた。
ならば「もう4ヶ月も前のこと!」。
諦めるしかないと私は思った。
ところが、それから数日して、
パークゴルフの例会があった。
その帰りに、パークゴルフ場の管理人さんに家内が尋ねた。
「春に、ウインドブレーカーの忘れ物はなかったですか?」
「忘れ物なら、そこにみんなかけてあるけど」。
屋外休憩所の壁に、忘れ物が数点かけてあった。
4ヶ月が過ぎていたのに、
紺地のウインドブレーカーがぶら下がっていた。
お礼も忘れて持ち帰り、翌日早速洗濯した。
驚いたことに、洗濯機には数匹のカメムシの死骸が浮かんだ。
きっとポケットに入っていたのだ。
探しものはあったが、気分は曇った。
2着目は、1番お気に入りのウインドブレーカーだ。
黒無地に、真っ白いAdidasのロゴが片方の上腕にあった。
とてもシンプルなものだが、
ここ3年程の使用頻度はダントツ。
ところが、ゴールデンウイークの最中である。
時には、食料品の買い物に付き合おうと、
そのブレーカーを取りに行った。
ところが、クローゼットの定位置にないのだ。
その周辺を探してもない。
「どうしてないの!」。
探しものが日常化しているとは言え、
1番のお気に入りが・・・。。
イライラ感が高まった。
買い物に付き合う気持ちも失せた。
買い物を後回しにして、
家内も一緒になって、家中をくまなく探した。
まさかと思いつつも、
愛車の車内もトランクも見た。
どこにもない。
後は、どこかに置き忘れてきた以外にない。
「去年の紺色のようなことも・・」
10日前からの出かけ先を振り返った。
忘れそうな所が3箇所あった。
1つ目は、自治会の会議があったT会館。
私はそこのキーを保管していた。
車で行って、解錠し室内を探した。
忘れ物らしいものは何一つなかった。
2つ目は、室蘭市内のゴルフショップだ。
手頃な長袖シャツを買い求めに行った。
その試着の時、忘れたかも知れない。
お店に電話した。
忙しいだろうに、時間をかけて丁寧に対応してくれた。
答えは、「ノー!」だった。
3つ目は、よく通う整骨院だ。
4月初めに、軽いギックリ腰になった。
それから、週に2回程度通院していた。
連休で休みと知っていたが、電話してみた。
私の問いに、
「ああ、ないですね」
いつもと違って、素っ気ない声だった。
「休みの日に、すみませんでした」
と電話を切った。
もう探しようがなかった。
すっかり諦めかけたその時、
ウオーキングクロゼットの奥から、
「ありました!」
家内の声が飛んできた。
行ってみると、洋箪笥の扉が開いていた。
そして、ブレザーをかける木製のハンガーにそれはかかっていた。
考えごとでもしながら、私が木製ハンガーにかけたに違いない。
「ああ、ボケたな!」
思わず口をついた。
3着目は、この春に買ったばかりだった。
ゴルフで風除けにと、やや派手な薄茶と白のツートン柄だ。
それを着て、ゴルフへと意気込んだ。
これまた、いつもの場所にない。
Adidasの黒同様に家中を捜索し、車も見た。
そして、まさかと思いつつも洋箪笥の扉も開いてみた。
「そんなことはないだろうが、でも」と、
ゴルフのキャディーバッグの中も見た。
もう私自身を信じられなくなった。
結局、見つけらまま2日が過ぎた。
その日の朝は、3日に一度の洗濯日だった。
朝食後、家内がそれを干しにかかった。
ここで、若干横道に逸れる。
北海道では、洗濯物を外に干す家庭は少ない。
多くの家が、四季に関わらず家干しである。
我が家もそれにならって、外に物干しはない。
代わって、別棟の物置ではなく、
家の中に、倉庫を兼ねた狭い物干し部屋がある。
その部屋から、家内の大きな声が
「ねえ、あったよ!」。
急いで、ドアを開けた。
部屋の物干し竿に、
ハンガーにかかったウインドブレーカーがさがっていた。
急に思い出した。
2日前の朝、散歩に出た。
10分もしないうちに、急に強い雨になった。
こんな時はフード付きが便利。
頭を濡らすことなく、引き返した。
家に着くとすぐに、
ウインドブレーカーの雨粒を落とし、
そこに干したのだ。
それをすっかり忘れ、思い出せなかった。
「それは、認知症の初歩です。
お気をつけて下さい!」
誰かにそう言われそうで、怖くなった。

八重桜 「華やか!」
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