社長ノート

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朝日新聞 天声人語 和菓子

2014-03-23 02:38:45 | 日記
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 長命寺、道明寺と聞けば、すぐに桜餅が頭に浮かぶ方は多かろう。数ある和菓子のうちで桜餅の人気はゆるぎない。「好きな和菓子」を聞いた本紙別刷り「be」のアンケートでは、通年定番の大福をおさえて堂々の1位に輝いた。
 その桜餅に、葉を食べるか食べないかという長年の「議論」がある。葉ごと食べるのが粋だという人。葉は香り付けだから、むいて淡い移り香を楽しむべしとする人。自説を譲れぬ向きもあろうが、どちらが正しいというものでもない。
 このあいだ「和菓子屋におはぎの幟(のぼり)」と書いたら、春はぼた餅、おはぎと呼ぶのは秋だと、いくつか指摘を頂いた。よく聞く説ながら、どう呼ぶのが正解と決まったものでもないようだ。
 使い分けには諸説がある。春は牡丹(ぼたん)に見立ててぼた餅、秋は萩(はぎ)だからおはぎ。ほかにも、もち米主体をぼた餅、うるち米主体をおはぎ、などがある。季節感は大事だが、地域差や売り物としての語感もあろう。春におはぎと称しても菓子屋さんの不勉強とは限らない。
 ともあれ、春がめぐれば和菓子もはなやぐ。容姿で自己主張する洋菓子にくらべ、季節を先取りして寡黙にたたずむ印象だ。桜餅も、本物の桜が満開になる前こそ、ほのかな紅が美しい。
 甘みもしかり。桜餅は、「これが甘味でございと威張られるよりは、そっと甘さが入っているのか――と思案させるぐらいの甘さ」がいいと、名料理家だった辻嘉一(かいち)さんが書いていた。待ちわびる花の便りは、日々に北上中である。

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