社長ノート

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朝日新聞 天声人語

2014-03-03 08:45:01 | 日記
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 「アルメニア放送」といっても実在する放送局のことではない。旧ソ連時代に政治社会を風刺した小話のうち、問答形式のものをそう呼ぶらしい。ちなみにアルメニアは旧ソ連国の一つだった。傑作を紹介しよう。
 問い「戦車とは何ですか」。答え「ソ連の兵士たちが友好諸国への訪問に乗っていくものです」。一定の年齢以上の方ならうなずくことだろう。
 戦車の記憶はオリンピックと重なる。1968年にはチェコスロバキアで高まった民主化の動き、いわゆる「プラハの春」を力でつぶした。ソ連主導の兵士20万人という軍事介入はメキシコ五輪の直前だった。
 79年にはアフガニスタンに侵攻する。西側諸国は翌年のモスクワ五輪をボイコットした。ソ連崩壊後の北京五輪でも、黒海のほとりから煙が上がった。ロシアとグルジアの軍事衝突が、平和の祭典を曇らせたのは記憶に新しい。
 そして今、ソチの冬季五輪が終わり、パラリンピックを目前にして軍事介入の危機である。ソチの西、ウクライナのクリミア半島をロシアは掌握にかかっているという。欧米は反発し、ここにきて新冷戦ともいうべき図が霧の中からぬっと姿を現した。
 遠地ながら半島の名は日本人にも親しい。19世紀のクリミア戦争の際、献身的な看護で「クリミアの天使」と慕われたナイチンゲールと結びつく人が多かろう。軍用車の展開も伝えられるが、ウクライナのことは国民自身が決めるのが筋だ。腕力で隣国に干渉するのでは、旧ソ連と変わらない。

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