精神世界と心理学・読書の旅

精神世界と心理学を中心とした読書ノート

完全なる人間(アブラハ(ム・H・ マスロー)

2010-06-13 23:11:24 | ★特選の本
◆『完全なる人間―魂のめざすもの』アブラハム・H・ マスロー著・上田吉一訳(誠心書房)

私はこの本を三度ほど読だが、その度に勇気づけられる思いだった。論文であるにもかか わらず、人間にはこのような精神の可能性があるのかと、読む度に感動させられた。  

彼はロジャーズと並んで人間性心理学の創始者であるが、この書の中にはすでに後に出現 するトランスパーソナル心理学の萌芽も確認できる。

マスローによれば、人間は心理的な健康に向かって成長しようとする強い内的傾向を持っ ている。そうした可能性を完全に実現し、人格的に成熟し、到達しうる最高の状態へ達した と思われる人々のことを、彼は「自己実現した人間」と呼んだ。

彼は、たとえばアインシュタイン、シュバイツァー、マルティン・ブーバー、鈴木大拙、 ベンジャミン・フランクリン等の著名人を含む、多くの自己実現したと思われる人々を研 究した。その結果、 高度に成熟し、自己実現した人々の生活上の動機や認知のあり方が、 大多数の平均的な人々の日常的なそれとはっきりとした違いを示していることに気づいた。 彼は、そうした自己実現人の認識のあり方をB認識と呼んで、その特徴を列挙する。

彼はまた、ごく少数の「自己実現した人間」の研究だけでなく、平均人の一時的な自己実 現とでもいうべき「至高体験」の研究をも同時に行った。 両者を比較して論ずることで研 究全体を学問的に説得力のあるものにしたのである。

「至高体験」とは、個人として経験しうる「最高」、「絶頂=ピーク」の瞬間の体験。 それは、ちょっとした日常的交流のなかでも、深い愛情の実感やエクスタシーのなかでも、 芸術的な創造活動や素晴らしい仕事を完成させたときの充実感のなかでも体験される。一人の人間の人生の最高の瞬間であると同時に、その魂のもっとも深い部分を震撼させ、その 人間を一変させるような大きな影響力を秘めた体験で、予想以上に多くの人がこういう体験をもっている。   

至高体験の特徴をもなすB認識のあり方について、マスローの詳細にな論述を追うこと自 体が、人間の精神の最高度の可能性を指し示され、勇気づけられる結果になる。そんな魅力 に満ちた本だ。

第2版では,「人間の成長や自己実現の研究を深めるため、より高い立場からみた「悪」 の心理学の必要性を強調している」とのこと。 私は、自分のサイトの「覚醒・至高体験事例集」を作るにあたり、マスローの研究に大き な影響をうけている。その点を「覚醒・至高体験とは?」という一文にしてサイトに掲載しているので合わせご覧いただきたい。


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