銀河夜想曲   ~Fantastic Ballades~

月が蒼く囁くと、人はいつしか海に浮かぶ舟に揺られ、
そして彼方、海原ワインのコルクに触れるを夢見、また、眠りにつく……

マズルカ 第32番 嬰ハ短調 作品50-3  

2006年12月17日 23時47分24秒 | ショパン作品からのイメージ素描
遠い星

余韻氷

その欠片

ただ1つの音を

あぶみ骨に響かせて



新聞に刻まれた一文字目掛けて

短い月影になった

柄の長い錐

その机の下で

中指は漂い

母の様にいつまでも膝を摩る



窓から忍ぶ隙間風

素知らぬ顔しても見逃してはくれまい

夜天のプールはそこから馳せて来て

頬と鼻の間を泳ぐ



壊したくない静けさに

懐かしく幼い少年だけが誘われて

平気な顔して泳いでる

静かに波打つハンカチーフは

それでも窓辺の青を拭って

あるべきところへと

ひとり気ままにはためいて

その青を

失楽の想い出にする



静かなる虚空のダンス

目蓋をなぞる中指



机に刻まれた錐の文字が

ちろちろと燃える火が

ちおちおと揺れ

木の色を嗅ぎ過ぎた鼻は

いつしか火傷を負う



冬の夜の恥じらい

寝しなはまた訪れ

薪は折れた






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4 コメント

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願わくば,縦書きで読みたいです! (ciapooh)
2006-12-18 01:03:00
 金子みすずさんの世界にも通ずるものを感じます。
 
 黒鍵の不安気な音,短調の哀しげな音…
 独特なショパンⅢ世さんの色合いを垣間見せて頂きました。
 
 ところで,創作童話関連は どちらで拝見できるのでしょうか?
 物語の方も,是非一読させていただきとうございます。
ciapoohさんへ (ショパンⅢ世)
2006-12-18 01:53:16
このカテゴリーは、あくまでもショパンの作品に対して僕が抱いた『イメージ』ですので、読んで下さる方にとってはかなり意味不明だと思われます(笑)。そんな文面に上記の様な感想を頂けて有り難いです☆


>願わくば,縦書きで読みたいです!

そうですね、僕もそうしたいところなんですが、いかんせん現行のブログというのは横書きで統一されてるものですから、泣く泣くその書式で書いています…。


創作童話は、いつかこのブログに載せたいとは思っています。多分短い作品になると思いますが、どうか気長にお待ち下さい。
Unknown (はるちゃん)
2006-12-18 09:40:30
素敵な詩ですね。
あぶみ骨、半年前はこれで試験に落ちましたが
今ならわかります、中耳にある音を伝える器官で
人間の体の中でもっとも小さな骨でした^^

「薪は折れた」のフレーズがすごいいいですね。
冬の静けさ、外を吹く風の音、薪のパチパチが
聞こえてきそうでした^^

スーザン・プライスの
「ゴースト・ドラム北の魔法の物語」が
頭の中に浮かんできました。
はるちゃんさんへ (ショパンⅢ世)
2006-12-18 22:13:32
あぶみ骨の事、その専門分野の人間でないとまず知り得ないだろうと思います。かく言う僕も、最近その存在を知りました。
アロマの試験で何故あぶみ骨が出題されるのだろうと思いましたが、リラックスさせるための音楽に関わってくるのですね?

『薪は折れた』は、この曲の終わり方が正にそんな感じに想えたのです。


>スーザン・プライスの “ ゴースト・ドラム 北の魔法の物語 ”

1987年イギリスのカーネギー賞を受賞したこの作品、全く知りませんでした。
作者のスーザン・プライスは、「この作品には寒い冬、深い雪、木造の暖かい家といったポーランドの叔父(伯父?)の話に、大好きな北の民話を混ぜ合わせ、それにロシアやポーランドの民芸品の鮮やかな色をそえてみた」と、言っているそうです。粗筋を読んでみましたが、とても面白そうですね

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