銀河夜想曲   ~Fantastic Ballades~

月が蒼く囁くと、人はいつしか海に浮かぶ舟に揺られ、
そして彼方、海原ワインのコルクに触れるを夢見、また、眠りにつく……

夂(ふゆがしら)

2006年11月26日 00時41分47秒 | 散文(覚書)
--誰が残したの

      ベンチの上の 古い時計

--どんな音?

      針はどこを指していて?

--北よ

      煙が筋引くように、動いてるみたい

      袴の裾を擦るように、鳴っている 

--ねぇ、あなた

      それは ふゆがしらが降りてきたのよ

--見て

      わたしたちの子らが





小さな体操選手よろしく

枯れきった葉は

挙(こぞ)って側転しながら

ベビーカーの後を付いていき

笑う赤子の 顔真似ころころ

水溜りの様な輪をなして

いずくへ去った友たちの 声真似スサスサ



その子がくしゃみして

ふくらみあんよが持ち上がれば

毛布はめくれて風になり

腹の記憶 水溜りに似た靴底が見え

小さき車を押す母の手は

白き手袋に包まれる無言の御礼に

傍ら立つ我が子の肩へ時に乗り

姉はその無言の御礼に

小さき妹へ

両の手から掬ったばかりの

雄弁な枯れ葉を高く零し

凋落しても匂い立つ

敷衍(ふえん)の掛け毛布になるのだと

微笑する





--あぁ

      あの子はきっと 幸せになる

--そうね

      きっとあの子も 幸せになる

--微睡(まどろ)みはいつも ここにあり

--夏への重たげ ふゆがしら




最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (king)
2006-11-26 20:33:55
まどろみの底、気付く夏の気配。

子は国の宝ですね~。

かつてこれほど子を愛した国も珍しいとのことです。

日本人は温厚が一番。
返信する
kingさんへ (ショパンⅢ世)
2006-11-27 03:32:27
>まどろみの底、気付く夏の気配。

【夂(ふゆがしら)】というのは漢字の部首の事で、【冬】の上部と【夏】の下部がそれです。それを知ってからというもの、何かの形でこの部首を活かした文章を書きたいと思っていました。
冬を感じて夏を知り、またその逆もありで、1人でもその様に感じて下さる方がいて幸いです。
返信する
Unknown (Minnesingerin)
2006-11-28 00:18:33
>夂(ふゆがしら)

初めて知りました。
ショパンⅢ世さんのブログは勉強になるわ~。
返信する
Minnesingerinさんへ (ショパンⅢ世)
2006-11-28 02:10:46
いえ、こんな豆知識は日常生活ではあまり重要ではありませんね…

散文として載せているものの多くはイメージばかりが先行してしまって、それを上手く文章で表現し切れていないといつも痛感しています。読んで下さる方にとっては意味不明かも知れませんね…。
返信する

コメントを投稿