ネイチャーサロン by こうちフィールドミュージアム協会

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ツリガネムシ出現

2010-12-16 18:08:14 | 日記
 哺乳動物の便を水に入れて放置しておくと,微小な生物がいろいろ出現します.ただし水が腐らないように,頻繁に水を替えたり,エアレーションをするなどの工夫が必要です.出現する生物として特に目立つのは原生動物です.

 写真は便を入れて2週間ほど経過した水の中に出現した原生動物の1つで,ツリガネムシの一種です.撮影は一昨日(12月14日).
 ツリガネ型の本体から,糸のような「茎」が出ています.茎には芯が見えます.この「芯」はミオネムと言って,筋肉のように伸縮します.ツリガネムシを刺激すると,身体をキュッと丸めて,茎を収縮させます.静かに放置しておくと,また茎を伸ばし,身体をツリガネ状に拡げます.

 高知市内の,たとえば五台山の池水を採取して観察すると,よくツリガネムシを見かけます.写真のツリガネムシは,それとは非常に違うような印象です.最大の違いは「大きさ」でしょうか.五台山のツリガネムシに比べ,ずっと小さく貧弱な体つきです.しかしツリガネムシであることには間違いありません.「茎」が枝分かれしていないこと,ミオネムがあることから, Vorticella 属であることも確かです.
 問題は種名です.手元の図鑑では,写真の虫は Vorticella minima という種類に最もよく似ています.絵と見比べてのヤマカン同定なので,あまり信用できないと思う.

 ついでに,ツリガネムシ関係の知識を少し書いておきます.
 ツリガネムシと混同しやすい原生動物として,ラッパムシがあります.一般にはラッパムシのほうが,はるかに大きいのですが,小さなラッパムシもいるので,大きさだけでは決められません.やはり最良の区別点は,ツリガネムシには「茎」があることでしょうか.

 分類学的にはツリガネムシは周口類(周毛類?),ラッパムシは異毛類.かなり類縁は遠い.
 しかし,どちらも身体の前端を取り巻くように長い毛がはえていて,この毛で水流を起こして,餌を口に運びます.このときラッパムシでは右回りの水流になります.これに対しツリガネムシでは左回り.

 昔,高知市下知にあった下水処理場を見学したことがあります.糞便まじりの下水を沈殿させてから,エアレーションをして微生物を発生させます.微生物の活動によって水が浄化されるわけで,この方法を「活性汚泥法」というらしい.
 そのとき見られる微生物のリストを見せてもらいました.他の微生物に混じって,ツリガネムシ類の種名がずらりと並んでいました.ツリガネムシ類は汚水処理では重要な役割をはたしているのかもしれません.発生するツリガネムシの種類によって,汚水処理がうまく進んでいるかどうかが判別できると書いてありました.

 今回私は動物の便を水に入れて,エアレーションをしながら保持したので,まさに下水処理場と同じことを実行したことになります.

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