碧田直の いいじゃないか。

演劇ユニット、ミルクディッパー主宰の碧田直が、日々を過ごして、あれこれ思ったことを、自由気ままに綴ります。

無題そのにひゃくななじゅうに

2017-01-15 21:21:30 | 日々
今日は、脚本完成記念ということで、昨年購入してから、観たくても観ていなかったビートルズのドキュメンタリー映画を、起きて早々に鑑賞する。

ビートルズは、長い下積みを経て、六十二年にレコードデビューを果たすと、瞬く間にスターダムにのしあがり、当時の記録という記録をすべて塗り替えて、ミュージックシーンのトップに君臨する。

その凄まじい人気は、世界中を巻き込み、とりわけアメリカでは、人種隔離政策を終わらせるきっかけのひとつともなったことは、映画で初めて知った事実だった。彼らは、人種差別をするなら、ライヴをやらないと明言し、会場側はそれを認めざるを得なかった。公然と行われていた人種隔離政策を押しきってしまうほど、彼らは白人からも、それ以外の人種からも人気があった。

結果としてビートルズの四人は、膨れ上がり続ける人気に、次第に苦しめられて、遂にはライヴをやめる決断をする。前代未聞、空前絶後の活躍の代償なのかもしれないが、その決断が、後に解散につながっていく。

トップのトップを目指し、まさにトップのトップとなり、結果、彼らが何よりも大事にしていたビートルズから去らなければならなかった、興味深くも悲劇的な過程は、映画では描かれない。
が、その予兆は熱狂のあちこちに漂っている。その予兆はしかし、彼らのとびきりの明るさによって、ほんの少ししか見られない。だからこそ、現代の自分には、彼らの陽気な姿が哀しく映る。

ビートルズの哀しみは、時代が移り変わるにつれ、人々の心から薄れ、音楽だけが残った。熱狂の渦の最中にいた彼らの望みは、五十年近い時を経て、ようやく叶えられた。しかし、生身の彼らの哀しみを、忘れてはならないと、この映画は伝えてくれている。
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