その頃、何とはなしに内地に帰るときに使うリュックサックを作ることが始まった。私は炊事に居る西村仁作君に布地の入手を頼んでおいたら、1週間程して丁度手頃の広さのものをくれた。それを持ち帰って毎日リュックサック作りに精出した。
ここの監視役に来る前、西村とマンデー場の下隣にあった木のベンチに腰を下ろして、薄暗くなりかけた夜空の南十字星を眺めながら、西村が、
「斉藤、俺達本当に内地に帰れるだろうか?」と、ぽつんと言った。
「ああ、帰れるさ」
「いつ頃だろうかなあ」
「いつかは分からんが必ず帰れるさ、もう長くはないと思うけど」
ここから北の方に「グレート・ワールド(大世界)の劇場があって、そこの光が赤々と照らし、そしてボリュームいっぱいに中国語で
「君いつ帰る」を甘く悲しくながしていた。2人は
「そうだなあー」と時間の経つのを忘れて、じーっと腰掛けていた。
ここの監視役に来る前、西村とマンデー場の下隣にあった木のベンチに腰を下ろして、薄暗くなりかけた夜空の南十字星を眺めながら、西村が、
「斉藤、俺達本当に内地に帰れるだろうか?」と、ぽつんと言った。
「ああ、帰れるさ」
「いつ頃だろうかなあ」
「いつかは分からんが必ず帰れるさ、もう長くはないと思うけど」
ここから北の方に「グレート・ワールド(大世界)の劇場があって、そこの光が赤々と照らし、そしてボリュームいっぱいに中国語で
「君いつ帰る」を甘く悲しくながしていた。2人は
「そうだなあー」と時間の経つのを忘れて、じーっと腰掛けていた。