4月の末頃、日本の憲法が変わり、軍隊はなくなるということだったが、それでは俺達はどうなるのかという事が問題になってきた。作業隊内でも新憲法についての講演会が開かれたり、解説した文書が廻されたりした。軍隊がなくなったのだから我々は将校も兵隊もない。みんな平等だから中隊もただ1つの集団となり、統率者即ち長は選挙で決めるべきだという話もあちこちの幕舎で討議されているようで、何か重苦しい空気が流れた。
ある幕舎では、選挙に立候補したいと言う者が票集めに煙草を配って運動しているとの噂もあった。
そんな時、野村中隊長が私を呼んだ。
「斉藤、憲法改正で、軍隊がなくなったので後の中隊の長を選挙で決めようという動きがあるが、お前はどう思うか?」 真剣な顔つきであった。
「そんな動きがあると聞いておりますが、変な奴等が出てこの団結を乱したら困ります。彼等にこの大きな集団を統率する能力がどこにありますか。貴方がたは統率と指揮について教育を受けて居られるのだから、非常に御苦労を掛けると思いますが、是非貴方が今まで通り長となって指揮を取ってください」
「実は明晩、中隊の幹部会があるのだが、お前の言う事はよく分かった。明晩の幹部会でそう言おう」と言われた。
その明くる晩、私のところの幕舎で幹部会が開かれた。私達は幕舎の外に出て、成り行きを聞いていたが、話しの末、野村隊長がはっきり皆の前で
「今後も、この野村がこの中隊の指揮をとる」と、宣言された。そして会議は終わり、散会となった。これで無駄な混乱もなく、集団の結束が保たれたのである。
この事があってから、野村隊長とは、打ち解けていろいろ階級を超えて話をするようになった。
ある幕舎では、選挙に立候補したいと言う者が票集めに煙草を配って運動しているとの噂もあった。
そんな時、野村中隊長が私を呼んだ。
「斉藤、憲法改正で、軍隊がなくなったので後の中隊の長を選挙で決めようという動きがあるが、お前はどう思うか?」 真剣な顔つきであった。
「そんな動きがあると聞いておりますが、変な奴等が出てこの団結を乱したら困ります。彼等にこの大きな集団を統率する能力がどこにありますか。貴方がたは統率と指揮について教育を受けて居られるのだから、非常に御苦労を掛けると思いますが、是非貴方が今まで通り長となって指揮を取ってください」
「実は明晩、中隊の幹部会があるのだが、お前の言う事はよく分かった。明晩の幹部会でそう言おう」と言われた。
その明くる晩、私のところの幕舎で幹部会が開かれた。私達は幕舎の外に出て、成り行きを聞いていたが、話しの末、野村隊長がはっきり皆の前で
「今後も、この野村がこの中隊の指揮をとる」と、宣言された。そして会議は終わり、散会となった。これで無駄な混乱もなく、集団の結束が保たれたのである。
この事があってから、野村隊長とは、打ち解けていろいろ階級を超えて話をするようになった。