「私の従軍記」 子供たちへ

平成元年父の誕生日に贈ってくれた本、応召されて帰還するまでの4年間の従軍記を今感謝を込めてブログに載せてみたいと思います

アルバイト

2006-10-09 10:27:08 | Weblog
 以前から少数ではあったが、作業の休日、日曜を利用して若い者が3人位組んで、支那人の所にアルバイトに出かける事が公然の秘密になっていた
 最初は飯を腹一杯食わせて貰えることで隠れて行ったらしいが、後では賃金もくれる様になったので数が増えていった。仕事は農家の手伝いが多かったようで、雇う側もよく働くし、賃金も安いので評判がよく、次の日の予約までとって来ている者もいた。
 貰った金は飲食物代、タバコ代、おしゃれの用品代やシャツ類の購入代になっていたようだ。
 髪は作業隊に入ってから、床屋が間尺に合わなかったせいもあって、だんだん伸ばす者が多くなり、後では私達少数を残して全員長髪になった。しかし伸ばしたもののそれにつける油がなくて、誰かは椰子油みたいなのをつけて寝て、夜中に頭が変なので目を覚ましてみたら、蟻が一杯たかっていたという話もあった。
 それでポマードやら、鏡やら、櫛やら、クリームなどおしゃれ用品の必要が出てきて、アルバイトの賃金稼ぎが始まった次第であるが、アルバイト先の支那人の若い娘と楽しく語り合ったことなどを幕舎で話していた。