漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

贋作

2013年02月12日 | 

先だって放送された、テレビの報道バラエティ番組によると、
「中国で一年簡に摘発されるニセ札は、日本円に直して43億円にのぼる」のだそうな。

それをそのまま、日中の人口比で換算すれば、
日本でなら「四億円近いニセ札が一年間で摘発された」と云うことになる。

もし日本でそんな事件が起きれば大騒ぎだろう。

まぁ、ディズニーや日本アニメなど、
ニセ物もまた、彼の国のお国柄と云うことだろうが、

ここにもうひとつ、

こちらは「いかにもイタリアらしい」と思わせるのが、
1980年代に起こった、「モジリアーニの贋作事件」で、

種村季弘氏著、「贋作者列伝」のあと書きにある実話。

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 ある年のこと、
 モジリアーニの故郷の川底をさらうと彫刻が出てきた。

 ということは、
 パリに出るまでのモジリアーニが、
 彫刻の習作を試みていたという可能性が出てきたことになる。

 モジリアーニが捨てた習作彫刻はまだ出てくるかもしれない。

 川ざらいをなおも進めるとまた出てきた。

 数体のモジリアーニ彫刻が発掘され、
 マスコミが色めきたったところで贋作者たちが名乗りを上げた。

 学生グループの数人が、
 日曜大工式に伝道ロクロを使ってでっち上げた「幻のモジリアーニ」だったのだ。

 のみならず学生たちは、
 テレビカメラの前で何体目かのモジリアーニ量産を実演してみせたという。

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とんだお笑い種だが、
この事件で憐れをとどめたのは、
当初、これを本物だとして「生気の大発見」と提灯を持った高名な美学者たちだった。

処で、コピーは作っても手元で楽しむだけなら贋作にならないし、
模写は美術家の技量向上に欠かせぬ修行でもあるが、

ひとたびこれが、
ホンモノとしてカネを受け取り、

世間へ流通させると、「贋作と云う犯罪行為となる」のだそうだ。

金目当てや愉快犯だけでなく、
腕はあるのに、世に入れられない作家の不満が、
贋作に向かうこともあると云う例などを、この本は教えてくれるのだが、

たかが鑑定書一枚で、
値段が一ケタも二ケタも上がるなど、贋作の世界もケッコウ深い。


   
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【モジリアーニi】Amedeo Modiglian[1884~1920]

 イタリアの画家。彫刻でも活躍。
 繊細な曲線と精妙な色彩により、長い首の哀調を帯びた裸婦や肖像を描いた。
 





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