漫筆日記・「噂と樽」

寝言のような、アクビのような・・・

犬、居るか?

2013年11月07日 | 

おもしろい推理小説を探すには、
ベストセラーやテレビ、映画でドラ化されたのを読むのも一つの方法だが、

それでは当たり前すぎて平凡と云う時は、アンソロジーを読むのが良い。

「アンソロジー」とは、
複数の作家の短編を集めた作品集で、

例えば推理作家協会と云う処からは
毎年「ザ・ベストミステリーズ」としてその年の優秀作を集めたものが出ている。

その2009年版から見つけた作家が「乾ルカ」さん。

「犬居るか?」をもじったような名前からして、
私が本屋の平台で見かけても、まず買わないタイプの女流作家さんである。

アンソロジーには、このように、
いつの間にか固定しかけている自分の守備範囲を超えた作家に出会う楽しみがある。

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飯島(涼子)はバッグを開けて、
ピルケースにしまいこんでいた小さくて大切な包みを渡した。
「もう無くさないでね」
飯島はきょとんとする母の横をすり抜けて、
いい塩梅に温度が上っている油の中に、衣をつけたエビを滑り込ませた。

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これで女子大生の娘と母の和解シーン。
そしてピルケースからとり出したのは結婚指輪。

実は私がこの作家の短編集を読もうと思ったのは、
この「ピルケース」と云う、新しく知った言葉にもあるのですが、

それはまぁ、ともかく、
過酷でオカルトでハートフル、なかなか素敵な短編集です。



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 「メグル」   乾ルカ/著  創元推理文庫 ¥651.-

「あなたは行くべきよ。断らないでね」
無表情ながら美しく、奇妙な迫力を持つH大学学生部の女性職員から、突然に声をかけられた学生たち。
店舗商品の入れ替え作業や庭の手入れなど、簡単に思える仕事を、彼女が名指しで紹介してくるのはなぜだろう—。
アルバイト先に足を運んだ学生たちに何がもたらされるのか、厄介事なのか、それとも奇蹟なのか?美しい余韻を残す連作集。







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