子どもとうさぎとねこと音楽のある風景

息子いっちゃん(2006年3月生)と3匹のうさぎと3匹のねこのいる歌と琴が好きな主婦の記録

カッチーニのアヴェ・マリア

2011年02月28日 | 音楽

昨日は声楽教室の発表会がありました。
ずっと習っていた先生が教室担当を卒業され、春からはソロ活動に専念することになり、先生の得意な曲で私の好きな曲を最後に習いたいと、カッチーニのアヴェ・マリアを歌うことに決めました。

先生には、指を2本縦に入れて高音を出してみて、とか、頭の後ろの上の方から音が出ているイメージで「あ」を出す、とか、一番高い音は上あごを前に出して歯を出す感じ、そこから上唇を頬の筋肉で引き上げるようにして出す、とか、技術的なことも習いましたが、どうしても、曲のイメージができてないことがネックになっているようだと自分で感じていました。

先生からは、教会の内側からステンドグラスを見ている感じ、高い天井、そういう写真や映像を見るとよい、と言われていました。

しかし、カッチーニというイタリアの作曲家(1600年前後)の時代の絵画や建築物を少し見てみましたが、実はこれは1970年ごろにソ連のウラディーミル・ヴァヴィロフという人が自作曲を「カッチーニ作」と書いていた、などの説もあるらしく、時代を特定することも難しかったです。

そして、私なりに最後のレッスン前にストーリーをつくり上げ、ずっと「アヴェ、マリア・・・」を繰り返す中に自分なりの裏のセリフまで考えて、お芝居のような内容に仕上げて歌っていました。
そのお話し、自分で作って自分で歌って泣いていたんです。
ある意味、めでたい人間です(笑)。

十字架にかけられるイエスの魂が、とぼとぼと死ぬ直前にマリアのもとを訪ね、やってきます。
それに気付いたマリア。
いかに私はあなたに会いたかったか・・・
間奏部で二人は抱き合います。
マリアとイエスは小さかったころに楽しかったことを語り合い、最後はマリアの腕の中で息絶えます・・・

こんなストーリーを作って、自分が母だったら、どうだろうと考えると、涙があふれてきて歌えない・・・こんな感じだったのです。
(今思うと、自分で自分がちょっと笑えます。)

しかし、最後のレッスン、どうだったか?

先生には、天使たちに天へ連れて行かれるような感じで、と。
お姫様だっこされて、ふわっと昇天して行くようなイメージ。
だけど、私の歌は重くて昇れない、足が無駄に踏ん張ってしまっている・・・。

先生、ずばりお見通しでした!
私はイエスを、息絶えた重い身体を抱え、悲しみに沈んでいたのです。

しかし、イエスは人間ではない。
神様は重くない。
そして、見送る側はつらく悲しいかもしれないけれど、昇天する者には苦がない。
安らか。

やっぱり神様の歌は人間の感覚では歌えないんですね・・・
その奥深さを知りました。

私が最後に出した結論は
天井のあるイメージは取っ払いました。
ひたすらお空を思って歌いました。

大きく美しいマリアが大空に現れ、一条の光が差している。
私は今は亡きうさぎのナナちゃんを抱きかかえている。
初め、私はマリアと呼びます。
マリアにお願いをします。

こんなにかわいいナナちゃん。
この子を安らかに空の国へ、月へ連れて行ってくださいと。
そして、マリアの胸にナナちゃんを預けます。
ナナちゃんには私は悲しい顔を見せず、これから行く国は楽しいことばかりが待っている、マリアはその世界のお母さんだよと、不安はないよ、安心しなさい、と送る。
そして、同じ音をずっと伸ばすところは停滞ではなくて、ずっと光が高く伸びて行くようイメージし、ナナちゃんが見えなくなるまで祈りながら光を追う。

これが、私が昇天をイメージし、自分自身の実感から歌えるストーリーだと思いました。
そして、病気のつらさの中で亡くなってしまったナナちゃんのいたみがもし、まだどこかに残っているのなら、どうかこの歌で安らかに天へ昇ってほしいと願いました。

歌には何かが宿ります。
何かの力があります。
ナナちゃんに届いたことでしょう。

しかし、天井をイメージしていたときには高音が出ず、本当に何かにぶつかっている声しか出ませんでした。
でも、多少なりとも、天井をはずした空のイメージによって、ふたのない突き抜けた音が出せるようになりました。
声って不思議です。
人間の身体って不思議です。
技術的な練習より、イメージで変わるのです。

このクラッシックの発声の難しさ、時代を支配する世の思想、神を思い、描き、歌った人たちのこころ・・・いろんなことを想像して歌う楽しさを知りました。

歌は、歌う人にも聞く人にも、自由自在な旅をさせてくれます。
これが人間の能力の素晴らしさだと思います。

当日は夫といっちゃんも聞きにきてくれました。
うれしかった。

いろんな人の気持ち、いろんな時代の背景、そんなことを考えて歌うことがこの上なく楽しくなりました。

落語って、語りだけで何でも見せられて、SFみたい、究極の芸だ、と思ったことがありますが、歌も同じですね。

私が歌ったイメージに近いマリアの空の絵が出ているYOU TUBEみなさまもお楽しみください。

http://www.youtube.com/watch?v=Z6-4qI5fsj0&feature=related

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 出会いの前のわかれ | トップ | みんな元気です! »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿