子どもとうさぎとねこと音楽のある風景

息子いっちゃん(2006年3月生)と3匹のうさぎと3匹のねこのいる歌と琴が好きな主婦の記録

「獣の奏者」(上橋菜穂子・著)読後感想 

2020年09月27日 | 本の紹介
上橋菜穂子さんの「獣の奏者」全4巻を読み終えました。

この作品は、架空の猛獣である「闘蛇(とうだ)」という、おそらく龍のような大きな蛇と、「王獣(おうじゅう)」という翼のある大きな獣が兵器のような存在として飼われている世界の話です。
人が乗れるほど大きな鳥のような王獣と大蛇が軍事の要となっています。

しかし、これらの獣は元々野生に生きるものでした。
人間が勝手に利用しようとしたのです。

これが軍事の要になるということは、この獣に関わると、政治に巻き込まれていくということです。

この獣の本来の姿を守ろうとしながらも、利用する立場を離れることができないジレンマの中、人間の戦いを止めよう、獣を野に放そうとする少女エリンの物語です。

上橋さんの作品はファンタジーという分類に充てられますが、歴史や現実に生きる人々を大事に考えるゆえにファンタジーという手法を選んでいらっしゃるようです。
歴史の物語は、ほとんどの場面で、こんなやりとりがなされたのではないかという創作が入っていますが、それを勝手に作ってしまうことに抵抗があるというようなことを書かれているのを読んだことがあります。
だからなのか、上橋さんの作品には架空の生き物や架空の現象が出てきますが、架空の世界の描写も人間の心理も、すべてが現実的です。
史実に基づいているはずの歴史小説にうさん臭さを感じてしまうのに反して、上橋さんの想像上の世界に実感を覚えるという、一見反対の現象が起きます。

この物語のおもしろさは、とにかく、この架空の威風堂々たる獣の息遣いが聞こえるようで、大きな獣とともにあるエリンの感覚をリアルに感じられるところです。
そして、野生の生き物を中心にすえることによって、自然を人間がどう扱うべきなのか、自然と人間の関わりについて、常に考えさせられます。

上橋さんは、エリンが王獣に乗って飛翔するところで終わる第二巻(王獣編)で話は完結したと思っていたらしいのですが、ファンの期待に応えて続く第3、第4巻を書き上げたとのことで、私は第二巻を読み終えた感動が強く、そこで思わず知らずに自然と読後感想曲ができていました。
(いつか曲もアップします。「エリン飛翔」というオカリナ曲です。)
その強い印象は第4巻を読み終えた後も変わらずに残っていました。

第4巻の結末に納得、理解するまでにしばらく時間がかかりました。

第2巻を読み終えた後のメモです。

「コロナに人類が行く手を閉ざされるような今の世界に身を置いて、人類の歩んできた欲望の道のあやまちを痛切に感じている。欲望のままに進み、自然を破壊し続け、節度を知らない人類。そこで上橋作品の訴えてくるものの大きさを強く感じる。人類のあやまちを思うとき、自分自身が今ここに生きていること自体にも疑問を抱いてしまう。人類がどうあるべきかという問いは、自分のひとつの命がどうあるべきかという問いとなって、私自身の足元を揺るがしている。
 それでもなお、人間に生まれてこの作品を読めたこと、そのことだけでも意味がある、しあわせであると、涙の中に感じた作品だった。上橋さんの偉業に深い深い感謝と敬意をこめて。」

結局、何の解説にもなっていませんが、私の読後感想を書きました。
ねこやうさぎという生き物と暮らす生活を送ってきて、生き物の息吹を感じて生きることの尊さを改めて感じました。

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