猫とマンガとゴルフの日々

好きな物を題名に↑ 最近はゴルフとグルメお出かけ主体に。以前は1960年~70代マンガを紹介していました。ネタバレ有り。

山岸 凉子 「白い部屋のふたり」

2008年02月25日 11時57分49秒 | マンガ家名 やらわ行
 集英社刊 山岸 凉子傑作集 3 1973年9月10日 りぼんマスコットコミックス 

                 夜さんにお借りしています。


 前回に続いて りぼんコミックス 初出の作品から。表題作の 「白い部屋のふたり」 はさんざん記事の中で書いときながら、読んだことがない作品だったのですが、夜さんがお持ちということで今回お借りして読むことが出来ました。夜さんありがとうございます。m(_ _)m

 初出は りぼんコミック 1971年2月号で、その頃私はりぼコミ読者だったのに覚えてない・・・。毎号買ってたわけじゃないので飛んでいたのかも
 当時びっくりの女性同性愛者を扱ったものですが、際どいシーンはまったく無し。キスシーンがちょっと、という程度ですが当時は男女の恋愛ものでも、キスシーンが少女たちには充分クライマックスでどきどきタイムでした。

 当時私たちは エス とか呼んでましたけれど、ジュニア小説等ではそれらしきものはありました。が、ペギー葉山の 「学生時代」 のような 

姉のように慕い~~

 の表現だったと思いますがね~。


 お話は・・・

 両親が交通事故で死んだレシーヌが財産狙いの叔母の家に入るのを嫌い、良家の子女の入る寄宿学校へ入る導入部から。同室になったシモーンというテニスの上手いカッコイイ少女はレシーヌばかり見ている (ような気がレシーヌはする) 一方のレシーヌも要領の好い問題児シモーンを不良と思いながらも気になって行く。

 ここから一気に相思相愛になるわけではなく、学園祭の 「ロミオとジュリエット」 が入ったり、私たちのは 友情 よと言い張るレシーヌのためにシモーンがボーイフレンドを紹介したりいろいろあるのですが、どうやらシモーンの方ははっきりレシーヌを好きだと自覚しているゲイ (もしくは両刀) らしい。

 今読むと、どこが気に入ってシモーンがレシーヌを思い始めたのか、動機がイマイチわからないのですが、(単に好みのかわい子ちゃんだったから ?) シモーンに好きだと告げられたレシーヌの狼狽振りはよく分かる。
 必死に否定し、ボーイフレンドとデートし、

「あなたは自分を汚したくないだけよ、皆と同じレールから外れるのが怖いのだわ」

 と詰め寄るシモーンから逃げる為に転校までして忘れようとします。そこに届いたシモーンの死の知らせ。彼女はわざと付き合っていた男の子を挑発し、まるで自殺するように殺されたのでした。

 シモーンに死なれて初めてはっきりと自覚した愛に、レシーヌは死ぬことも叶わず石の心を抱いて生きるのみ、それは愛に命をかけた相手から逃げたレシーヌの罪の代償。涙と苦悩の中でのラストとなります。

 この作品、雑誌 「クレア」 の1992年9月号のTHE少女マンガ!!特集のインタビュー中で、作者 山岸 凉子氏 がちょっと触れています。

 - 以下 引用 -

 あれもね、実は、男同士のつもりで描いたんですよ、まだそういう世界に魅かれる自分って異常だと思ってたし、とても許されないだろうと思ってたのでつまり苦肉の策。
 後になって少年愛マンガをどんどん描くようになった人たちでさえ、私がその手の話をすると 「オトコ同士の愛 ? なあにそれ」 と質問攻めに会う時代でしたから。それが今ではあたり前という雰囲気でしょ。まだ 「日出処の天子」 も最初はどうか同性愛の話に行かないでくれって頼まれたものです。それが連載が終わる頃になると 「今の時代、少女マンガはホモが入ってないと駄目。ホモさえ入れれば何だってウケます。」なんですから・・・もう・・・ねぇ(笑)


 時代ですねぇ。今じゃBL (ボーイズラブ) として一ジャンル確立してますから。又、ここでは言っていませんが、ネーム (映画で言う絵コンテ) の段階ではオトコだったが、編集部のOKが貰えず女同士にしてやっとOKが出たとかどこかで言っていたと思います。
 
 他に

「遠い賛美歌」 初出 りぼんコミック 1970年12月号
「水の中の空」 初出 りぼん 1970年10月号

 が収録されていますが、いずれもアンハッピーな終わり方。主人公達は納得しているのですが、死んでしまったり、誤解のあるままに立ち去ったり。他人が見たらハッピーじゃないです。誤解が解けて、大団円、生きてて良かったね、でもいいじゃないかと読者は思うのですが。

 山岸氏は最近でも去年の 「舞姫 テレプシコーラ」 第1部終了間際の悲劇とか、すぐ後の 「ヴィリ」 でも主人公が事故にあったり娘といろいろあったり、決してすんなりハッピーエンドにならないのですよね。いつも救いようがない絶望の中とか、暗いままいつまでも続く・・・みたいな終わり方だったり、まったくないわけではないけれど、昔からハッピーエンドが少ない作家さんですね。そこが読者にはひねった印象を与えて、気になる作家であるのですが。
コメント (6)
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