猫とマンガとゴルフの日々

好きな物を題名に↑ 最近はゴルフとグルメお出かけ主体に。以前は1960年~70代マンガを紹介していました。ネタバレ有り。

佐藤 史生 「死せる王女のための孔雀舞 (パヴァーヌ)」 

2007年09月11日 17時20分03秒 | マンガ家名 さ行
 
 新書館 ペーパームーン・コミックス 1983年3月10日 初版 ちゃととさんにお借りしています。

 佐藤氏の作品を集めている方などには、大変評判が良い 「七生子(なおこ)シリーズ」 の短編連作4つと、名作 「ワンゼロ」 の主人公の一人 明王寺 都祈雄 (みょうおうじ ときお) の番外編一遍を収録しています。
 佐藤氏の 非SF 作品で、私は全部始めて見ました。(佐藤氏は去年から読み始めたんですが) この本はいろんな古書店でも全然見当たりません。佐藤氏ファンががっちり手元に置いて愛読していると推察しますが、ペーパームーン・コミックスって、数も少ないような気もします。まん○らけ なんかに出てもすぐに高値で売れてそう。ちゃととさんのおかげで 「棚からマンガ本」 で読むことができ、ありがたや、ありがたやと東の方角に手を合わせ・・・。

 あとがきで、作者は
「プロを目指していた自分がデビュー前10年で5本しか描けなかったのに、年に13本も描いていた、悪夢としか思えない1982年の作品群をまとめた」 
 ものがこのコミックスだと言ってます。え~全然せっぱつまった感じはないし、絵柄も荒れてないし、お話複雑、心理描写微に入り細にわたり、佳作ぞろいと思いますがね~。
 また、
「私は遅筆ではない。ペンのスピードはむしろ速い。遅いのは創作意欲がわいて出て、私を動かすに足る量に達するまでのその時間」
 とも言ってます。これは分かる。佐藤氏の作品は作品世界がよく練り上げられていて、最初から世界が出来上がっている。最初は分かりづらいけれど、はまると2度読んでも3度読んでも面白い。
 男性人気作家の長期連載があちこち世界を広げて勢い余ってて面白い時もあるけれど、そういう作品とは対照的な静謐な面白さというか。
 
 佐藤氏はストーリーテラーなのだと思う。そしてそれを惜しげもなく短編に使ってまんがを描く。もったいないくらい。おかげで2度3度読んでも発見があって、面白くて手元に置いておきたくなる。読み捨てられないまんがとはこういうもの。


 えっと~ 「七生子シリーズ」 のお話の方は、大人びた女子高校生の 七生子 を中心に、今は学校の教師で、七生子と子供の時同じ美術教室で一緒だった七生子に恋する青年とか、美貌の女子高校生で異父兄と駆け落ちする友人とか、七生子のハーフの異母妹の顛末とか、七生子の出生の秘密、子供の時の親子の葛藤とか。
 舞台は普通の日本の家庭とか学校なのに、愛憎心理劇渦巻いてます。が、あんまりおどろおどろしく見えないのは作者の筆致がさらりとしているからでしょうか。

 「ワンゼロ」 の番外編 「夢喰い」 は 都祈雄 が マユリ と初めて会った話なんだけど、ちょっと設定が違うなぁ。時代が現代みたいだし。 (ワンゼロは近未来) 「夢喰い」 は1982年の作、「ワンゼロ」 が1984年作なので、番外編というより前哨戦で、ここから 「ワンゼロ」 の発想が広がったと考えた方がいいでしょうか。

ご参考 → 佐藤 史生データベース
 
コメント (2)
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