むさしドリーム眼科

「社会に対する感謝の気持ちを持って、
来院された方々に健康・元気・夢を提供します」

講演「これからの日本の医療文化」

2008年06月01日 | Weblog
みなさんこんにちは。
院長の武蔵です。
先日、地域の方々に「これからの日本の医療文化」というテーマで講演してきました。
その講演をまとめてみました。

①みなさんこんにちは。むさしドリーム眼科の武蔵国弘、といいます。
私は、来院された方々に、健康と元気だけでなく夢も伝えたい、という想いをこめて、クリニックの名前にドリームと付けています。今日は眼科という枠を越えて「これからの日本の医療文化」と題しまして、未来志向の話をしたいと思います。

②私は、これからの医療界はもっと、医療資源をシェアせなあかん、と考えています。
医療を提供する側も医療を受ける側も、制度を変えるだけでなく、資源を共有しようという意識を持つ必要があります。

今日のお話を一言でまとめると、
「奪い合えば足りぬ。分かち合えば余る」
という言葉に集約されます。是非覚えておいて下さい。


③医療崩壊という言葉を最近、よく耳にするようになりました。地方にいけば、医師がいない。産婦人科、小児科が閉鎖された総合病院。都市部にいても救急医療体制の不備。どうも医療の穴ばかりがクローズアップされて報道されがちです。反対に医療の最先端技術は大袈裟に報道されます。再生医療にまつわる報道はいい例です。「10年後、寿命が50年伸びる」メディアはそんな誤解を生む夢物語を安易に伝えてはいけません。

多くのマスメディアが医療を報道する姿勢は、賞賛か非難、どちらかに極端です。

④いろんな方々が医療制度をどう変えれば、という議論をして提案をされています。が、制度をいくら変えても関わる人たちの意識が変わらないと同じでしょう。私は、制度よりも人々の意識が大事だと思います。ここでいう人々、というのは、医師・看護師といった医療従事者だけでなく、医療を受ける患者さんの両方を意味します。

⑤文化は意識の先にあります。
意識しなくなって空気のように当たり前になって初めて文化となります。ではどのような医療文化が医療従事者にとっても医療を受ける患者さんにとってもハッピーなのか。お話したいと思います。


⑥とある地域の小児救急医療の実例を紹介します。私の記憶が曖昧のため、詳細は事実とずれがあることをご了承ください。この地域には小児科を標榜する総合病院は一軒しかありません。夜間に当直をすると、多い時には一晩に150人が来院します。当然、待合室は満員、長蛇の列。その小児科の先生は寝る間もなく働いた後、日々の外来・手術に取り組みます。その結果、家庭も崩壊し肉体もボロボロになってしまいました。

病院を辞めよう。そんな決心をしたところ、ある一人のお母さんが立ち上がりました。

母「先生が辞めたら私達の子供はどうなるんですか?」
医師「この環境で医療を続けるのはもう限界で・・」
母「先生が、この町に残ってくれるにはどうすれば良いですか?」
医師「夜間の救急が体にこたえます。小児科の夜間救急に来るお子さんのほとんどは家庭でも看られます。」
母「じゃあ、どんな時に受診すれば良いか、教えて下さい。」

このお母さんは、地域のお母さんを集めて勉強会を始めました。どんな時に受診すべきで、どんな時は家でも看られるか。
その結果。一晩で常時100人を越えていた来院数が20-30人程度になって、一度は辞める決意をした小児科の先生は、その地域にとどまり、地域医療に尽力されているそうです。

医療資源は有限です。
先人はうまく表現されました。「奪い合えば足りぬ 分かち合えば余る」
紹介した実例は、医療者と医療受益者が共通意識を持って取り組んだ成果です。

⑦医療文化、という言葉を作りました。文化、というのは参加者の意識が空気のように当たり前になった状態です。今日の日本の医療というのは、医師から患者へ医療行為を一方通行に伝達する「対面」でした。これが今の日本の医療文化です。

⑧私は、医療を「健康に困った人の支援」と定義しています。治療行為以外にも、生活指導だったり健康相談だったり、これらの有益な健康情報も立派な医療行為です。そして、対面ではなく、横並びで寄り添って同じ絵を描く「共同作業」する意識が重要です。

⑨医療者は医療技術を高める努力をします。医療を受ける患者さんは、自分自身の健康管理を努力します。お互いが、地域を守る努力をします。この共同作業をすれば、社会のインフラである医療はもっとよくなるでしょう。

⑩医療者も医療受益者も医療資源をシェアする意識、共同作業する意識を持ちます。最初は努力して意識しましょう。当たり前になれば文化になります。医療崩壊は制度だけでなく、参加する意識の積み重ねが重要です。よりよい医療文化を創りましょう、そんな願いを込めて今日の講演を締めさせていただきます。