技術士(総合技術監理・機械部門)のブログ

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免震について(6)

2006-11-26 12:02:12 | 工学
 免震についての記述も6回目である.毎回,制御について書く前に気力が尽きてしまうので,今回は最初から制御について書くこととする.
 免震と制振について前回まで概要を述べて来て,制振については,減衰することが重要であると述べて来た.減衰するために,動吸振器を設置することもあると述べた.固定された減衰においては,減衰する要素のダッシュポット=ダンパーはその速度に比例した力を発揮する.振動する速度が早いと強いがゆっくりでは弱い(概念的であるが).ゆっくりした速度でも減衰したい場合,大きな減衰係数のものが必要である.しかし,速い速度の振動では固くなる(強くなる).減衰は,高い振動で固くなると,逆にエネルギーを吸収しなくなるため,高い振動に対しての減衰がなくなる.自動車の乗りここちで言えば,ごつごつした振動を拾うような感じであろう.(ただし,ばね=弾性要素との兼ね合いもあるので注意)
 さて,これを改善するために自動車分野ではセミアクティブサスペンションというものが,多分私が知っている(自動車は専門外^^;)範囲では初代ソアラが記憶にある.初代ソアラは1978ごろだったような気がする.トキコだったと思うがダンパーの減衰を2段階に切り替えて振動を制御しようという仕組である.ダンパーはオリフィスという油が流れる回路で流量を絞って減衰を得ている.このオリフィスの狭い流路の大きさを変えて減衰を帰る仕組である.この仕組を最初に応用しようとしたのは確か自動車に先駆けて鉄道であったような気がする(鉄道も専門外(@@))自動車と同じように乗りここちの追求である.ダンパーの切り替えについての制御の仕方を決めるのが,制御系の設計ということになる.
 数式を使った展開は,論文であれば簡単に出来るのだが,ブログに書いても?であるので,概念の記述にする.詳しくは,前に紹介した参考書がわかりやすい.制御系の設計には,様々な理論があるが,基本的には評価関数というものを指標として考える.評価関数は数式であるが,基本的にエネルギを表している.エネルギを最小にするように制御の指令を決めるということを行う.制御系の設計とは,評価関数を決めることで,あとは最近では決まった体系を使う場合,簡単な系であれば自動的に決まるようになる(ツールと呼ばれるソフトがある).また,制御系設計に関してのもう一つの課題は対象の数式モデルが得られるかということにかかっている.つまり,数式で表された制御する対象と,それをどのようにエネルギを押される形で制御していくかを決めることが制御系の設計ということになる.
 制御ということで話を進めると,数冊の本にでもしないと出来ないので,詳しくは記述しないが,基本的な方針は前述のようなもので,これを使ってセミアクティブ制御の説明をすることとしたが,今回はここまで


パッケージ小さい

2006-11-23 21:10:26 | 技術
Mac OS X v10.4 "Tiger"

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最近購入したのですが,びっくりしました.
というのは,ネットなどで購入するとその大きさがわからないので
久々にソフトを買ったらこんなサイズ

箱の収納には困らないかもしれませんが,どうして小さくなったの?

でも大きいサイズの箱でも,中身はすかすかですから
このサイズが置き場にも困らずに良いのかもしれません.
このサイズということは,マニュアルも小冊子であり,わかならければオンラインかヘルプを使えということでしょう.

でも,マニュアルも欲しいような気がします.紙の節約にはなりますけれど


免震について(5)

2006-11-19 13:37:58 | 工学
免震について5回目である
前回は制振について,動吸振器の原理について述べた.
今回は,制振と免震について再度確認すると伴に,動吸振器の意義について再度述べる事とする.
この図は,制振と免震の違いについて述べている.横軸が周期,縦軸第一象限が加速度,第4象限が変位である.制振は2の↓のように,同じ周期の加速度を下げる働きであり,免震は1の→のように周期を長くしている.この周期を長くするということが,建物などの免震に用いられている.しかし,近年の苫小牧の石油タンク炎上の問題など,周期が長い地震波が見直されつつある.つまり,周期が長い地震に対して免震は無力である可能性がある.そのため,免震の効果と長周期の地震に対しては制振の考え方を導入する必要がある.
さて,動吸振器であるが,わかり易い教科書として機械学会図書の機械システムのダイナミックス入門がある.その第8章2節が「振動絶縁」であり,免震や動吸振器による振動絶縁を述べている.
線形の計算において,動吸振器のパラメータは本体構造の質量と動吸振器の質量の比となる.当然のことながら,動吸振器の質量は本体の質量と比較して小さいほど良いと考えられる.しかし,小さいと制振効果は少ない.これをどのようにバランスするかが設計のパラメータとなる.大体,本体の5%から20%程度の質量を考えることが多い.しかし,大型構造物となると1%程度に押さえたいことから,2つの動吸振器を使うといった手法が用いられる.
数式を本ブログでは用いないので,概念的であるが詳しくは上記図書を参照されたい.
次回はアクティブ制御について述べたい.

免震について(4)

2006-11-18 18:27:45 | 工学
免震について4回目
今回は,制振の方法について見てみる
免震の考え方にて,有害な振動から構造物などを絶縁することが完全に出来ない場合,制振による振動の低減を図る事になる.
つまり,基礎に繋がっている構造物を完全に切り離せないことは地球に住んでいる限り難しい.地に足をつけている限り,地震とは縁が切れないのである.建物を考えてみると,免震住宅でも,積層ゴムなどで振動絶縁されているように見えるが,積層ゴムのばね定数が0でない限り,固有の振動を発生し,それが地震の持つ振動数と一致したら,共振してしまい,場合によっては危険になってしまう.
制振は,その振動を低減する方法であるが,受動的(パッシブ)の方法として,ダンパーを使う事は前回述べた.
しかし,1つの振動数に対する最適なダンパーは設計できるが,建物等の構造物は複数の振動数で揺れる.従って,複数の振動数に適したダンパーが必要となるが,都合のよいダンパ-を選定することが難しい場合もある.
そこで,アクティブに制御する方法が考えられるのである.
動吸振器の登場である.動吸振器とは,その名前のとおり,動いて振動を吸う機械である.身近なところでは,横浜にお住まいの方なら誰でも知っているランドマークタワーにそれはある.そんなもの見た事無いと言われるかもしれないが,ランドマークタワーの最上階の上(屋上ではない)に着いているはずである.
この動吸振器は,地震ではなく実は風による振動に対抗するものである.あれだけ高いビルともになると,風による荷重で振動することが地震よりも支配的になってしまう.高い階になればその振幅はメートル単位にもなる.とても居住できない.そこで,その揺れを制振するのである.動吸振器の原理は,ブランコの逆の原理と考えてもらうと良い.ブランコを揺らすのは,重心の移動により加振していく.これと逆に重心を移動させれば振動が収まるのである.

次回につづく

免震について(3)

2006-11-15 19:50:14 | 工学
前回は,免震の制振の違いについて簡単に触れた.
今回は,制御系の設計についての前置きを簡単に述べておく.
制振については,受動的(パッシブ)制振と能動的(アクティブ)制振とに大別される.また,セミアクティブという制振(これが,ちょっと専門です)もある.
受動的であるので,基本的には振動モードに対して,減衰をするためにダンパー(減衰要素)を入れる.しかし,構造の振動モードが独立していれば単純にそこにダンパーを入れれば良い.例えば,電車などで,車両の下を見てみると,水平にダンパーがついていたりする.左右の振れの振動モードに対応するものである.自動車で言えば,ばねとダンパーが一緒になっているのが見える.振動モードとしては上下,左右,前後のモードに対してダンパーが影響してしまう.ダンパーというのは基本的には速度に比例した力を発する.つまり,早く動かそうとすると大きな抵抗を生ずる.ゆっくりなら大きな力がなして,ジワーと動かすことができる.せっかちな人にはやっかいなものである.このダンパーが振動モードにすべて合わせるということが難しい.早い振動には大きな力で対抗するが,ゆっくりとした振動には効かない.簡単に言えばこんな性質があるために,最適なダンパーを見つけるのに苦労する.
そこで,アクティブに制振することを考えだすのである.

つづきは次回に
↓の本は,制御設計の参考書にうってつけです.
MATLABによる制御系設計

東京電機大学出版局

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