村人は刈り払い機の振動について神経質ではないのですが、BC2711Gの振動が
気になるレベルになったので修理しました。
始めは笹狩り歯の偏心が原因かと思ったのですが新品の鋸歯でも改善されず。
振動が出ている状態でシャフト前方とエンジンを触ってみると明らかにエンジンからの振動。
親方からクラッチの動きが悪くなると振動が出るとのアドバイスをもらい点検をする事に。
バラしてみると、このクラッチは昨年のシーズンオフにシューとドラムを交換しており、
今シーズンはまだ150時間ほどの稼働と思われる。
とりあえずマイナスドライバーでシューをこじって見ても異常は無さそうだが、
シューをフライホイールから取り外して見ると錆が出ており、シューにボルトを
入れて回してみると片側だけ動きが重い。
☆外した直後のシューとボルト
メーカーの指示ではここに潤滑剤を塗布する指示は無いと聞くが、村人はいつも
モリブデングリースを薄く塗布して居ます。
沢山付けても遠心力でドラムに飛んでしまうので、塗りすぎても良い事はないでしょう。
☆錆び落としをしたパーツ
1500番の耐水ペーパーとCRCでしこしこと錆び落とし。
目の粗い紙ヤスリではボルトを削ってしまうのでなるべく目の細かい物で根気よく。
錆び落としの仕上げはパーツクリーナーで油分等を綺麗に除去
ボルトの潤滑に今回はHot bolt pasteを試す事に。
特に難しい作業は有りませんがボルトの締めすぎは要注意。
「ボルト 締め付けトルク」にキーワードで検索すると沢山出てきます。
メーカーの資料を見ていないので正確なトルクは分かりませんが、このボルトはM6P1.0
で標準は5.2Nmですがエンジン関係なので1.8系列の9.2Nmが正解と思われます。
頭が14mmだからと言って、ガッチリ締めすぎると大事件になります。
ちなみに、通常はピストンストッパーを噛ます所でしょうけれど、村人は握力が強いので
左手でフライホイールを押さえるだけで十分締められます。
修理後の振動は皆無と言って良い位改善されたので、エンジン側の振動が大きいと感じたら
クラッチシューの動きが疑われるという結論でした。
☆ドラムとクラッチライニング
ちなみに、ドラムとクラッチライニングの状態は写真の通り。
ドラムブレーキ等では土台の部分をシューと言い、そこに貼り付けてある物をライニングと言います。
ドラムにシューが綺麗に当たっておりませんが、プレス成形なので真円度が十分出ていないのかも。
ここは一旦クラッチが繋がってしまえばシューと一体になるので問題ありません。
☆摩耗してシューが出てしまったクラッチ
写真は以前交換した物で、ライニングが無くなってシューの鉄部分が出ています。
こうなると鉄同士が接触するのでドラムも削れてシューの左側は色が変わるほど温度が
上がった事が分かります。
そんなに弱いのならもっと大きなクラッチにすれば良いと思うでしょうけれど、
伐根に刺さって瞬間的に狩り歯が止まった時にはクラッチが滑って衝撃を吸収してくれるので
クラッチの容量を大きくする訳には行かないと思います。
私は一度も経験がありませんが、BC2700系ではドライブシャフトのクラッチ側スプラインが
舐めてしまうトラブルを何度か見ています。
ドライブシャフトのヘッド側はヘッドのグリースが漏れ出して潤滑してくれるのですが、
クラッチドラム側は油分がないので錆が発生して錆の粉が摩耗材になるのかと思われます。
我々の仕事ではメーカーの想定以上のハードな使われ方をしていると思うので仕方ないのでしょう。
☆クラッチドラム
摩耗して交換した物と新品の比較。
かなり薄くなっているのが分かるでしょう。
☆笹狩り歯
あまり綺麗な見本ではありませんが、参考までに笹狩り歯の写真。
村人は手研ぎの場合平ヤスリとスチールのヤスリホルダー付き丸ヤスリを使用。
笹狩り歯の切れ味が分かっているとチップソーは使う事がありません。
目的により研ぎ方やアサリの出し方も様々ですが、笹狩り歯の説明は大変なので、
いずれ暇で気が向いたらやるかも・・・
これまで、クラッチドラムが薄くなってるなんて、考えたことがありませんでした。確かに過酷な仕事をしてる部品に違いないですね。
近々、分解してのぞいてみようとおもいました。ボルトとワッシャーの潤滑は、過熱も半端無さそうなので、モリブデンペーストの薄塗りを試してみようと思います。
キマルなる笹刃目立て装置とチェンソー目立て装置を研究開発を致しております。
村人様のチェンソー及び刈払機の記事には驚いています。
研究と調査能力には脱帽でございます。
日々のチェンソーや刈払機作業に役立てさせて頂いています。 「ありがとうございます。」
キマルでは、刈払機振動【うるさい】の原因はエンジンと刈刃と思っておりました。
クラッチが振動発生の元凶になるとは思っておりませんでした。【大変に勉強になりました】
キマルは、振動は刈払機の最大なる敵と考えております。 この振動が刈払機作業者の体力を不必要に早く消耗させて過酷な刈払機作業を更に過酷にしていると思います。
エンジンから発生する高周波振動は防振機構で減振動が可能ですが刈刃やおそらく疲労クラッチから発生する低周波振動は防振機能では減振動が不可能と考えております。
この低周波振動が体にはキツイですね。
キマルの笹刃目立て装置は手作業による笹刃目立てのバランス崩れから発生する低周波振動防止の目的として機械的に確実に新品刃同様に目立て可能にしてあります。
キマルで目立てをして一番にうれしい事は1枚当たり2分~3分で切れ味とバランスが最高に目立てが出来る事です。
ぜひ、村人様に キマル技研を検索して頂きご指導を賜りたくお願い申し上げます。
以前ボルトを緩めたら一緒にシューが開いてスプリングが伸びきった事が有りました。
ボルトを緩める前にシューをドライバーでこじって、スプリングの力でシューが戻る事を確認してからボルトを緩めて下さい。
クラッチドラムの交換は慣れれば簡単ですが、色々と道具が必要です。
キマルさん
シューとボルトが固着するとシューが片側だけ開き、その時に大きな振動が出ます。
固着が軽微なうちは回転を上げると両シューが開ききって振動が少なくなるのでその辺りが判断基準でしょうか。
あと、クラッチインの回転も高くなります。