村人は25年程自動車整備士をやっておりましたが、車は4サイクルエンジンばかりで
2サイクルエンジンについての知識は乏しい事をあらかじめお断りしておきます。
9月の中旬BC2711の仕事の最終日にエンジンが焼き付きをおこした模様。
仕事中はアイドリングも安定しており不調は感じませんでした。
焼き付きが発覚したのは、シーズンオフの清掃と整備を行った時。
最終日の作業はBC4410を使いたい程の、10年位放置されていたと思われる林道の道路刈り。
笹がビッチリの状態で、長時間エンジン全開運転をしたのが原因と思われます。
通常の草刈りだけなら全開運転はごくわずかなので焼き付きなどおこす事は無かったと思っております。
参考までにその時のエンジンセッティングの状況。
混合オイル:小分け容器の容量の都合でハスクLSを55:1で使用
キャブセッティングはHがメーカー指定値のminより1/8位薄め
☆プラグの穴から排気ポートを覗く
使っている時には分からない位の軽微な状態ですが、プラグの穴から
排気ポート周辺を覗くとポート上部にかじった痕跡があります。
マフラーを外してピストンを見ると、トップリングの上だけかじった痕跡有り。
そこで早速エンジンをバラして見ました。
ポートから覗いたとおり、ピストンは排気側のトップリング上部だけ軽い焼き付きを
おこしています。吸気側もトップリング上部はツルツルだけど問題なし。
2サイクルエンジンの知識はないと言う前提で、話半分と思って欲しいのですが、
ピストンに入っているスジはラビリンスと言い、このスジがある事で若干でもオイルが
保持されて潤滑に役立っているのかと思います。
エンジンが動いている時にピストンが首振りをおこしてトップリング上部がシリンダーと
強く擦れてツルツルになったと想像します。
吸気側は常に混合気と接触しているので潤滑不足には成らないが排気側は高温の排気ガスが
もろに当たるのでトップリング上部の油膜は無くなってしまうのでしょう。
☆ピストンピン周り
ピストンを外してみるとピストンピンが紫色に焼けており、コンロッド小端部も焼けて
変色しておりました。
写真ではピストンピンの色が分かりづらいですが、明らかに潤滑不足で高温になった模様。
もうちょっとで大事になる所でしたがニードルベアリングはよく頑張ってくれました。
このエンジンはゼノア40:1では白っぽく固いカーボンが堆積しました。
その後ゼノア50:1に変えたら黒くて柔ら無いカーボンが堆積しました。
そのカーボンは柔らかいので簡単に削り取る事が出来、掃除は楽でした。
昨シーズン残りのゼノア50:1・20リットルを使い切った後はハスクLSに変更
ハスクにしてから初めてエンジンをバラしましたがハスクLSの清浄性はとても良いと思いました。
エンジンをばらすとピストンの排気ポート側側面や掃気ポートが茶色く汚れています。
ピストンの排気側は常に排気ガスにさらされており、マフラーからの背圧の影響で排気ガスが
ピストン側面から掃気ポートまで入り込むので排気ガスの汚れが付いてしまうのでしょう。
これはしかたのない事です。
☆灯油で洗浄後
灯油で洗浄しただけでカーボン掃除はしていないシリンダヘッドにカーボンの堆積は
とても少ないです。
ゼノア50:1で堆積したカーボンはハスクLSの清浄作用で綺麗になったのでしょう。
ヘッドの6個の白っぽい丸はシリンダーにメッキをする時に付いた物と思われます。
☆ピストンの裏
同様に灯油洗浄しただけのピストン裏側も混合気が沢山当たったと思われる所はピカピカです。
エンジンのオーバーホール作業の大半はエンジンをバラす前に出来る限り汚れを落としたり、
その後の部品洗浄に費やされます。
後は部品さえそろっていれば1時間も有ればエンジンは組み上がります。
☆テルモの注射器
エンジン組み立て時にはシリンダー及びピストンやピストンリングには混合オイルを生で薄く塗布。
クランクベアリングやコンロッドのベアリングは奥なので注射器を使ってオイルを注入します。
注射器は以前、仕事でアクリル加工をするのに東急ハンズで購入した物。
接着剤として塩化メチレン(ジクロロメタン)を扱っていたのですが、
すぐにピストンのゴムが溶ける事もなく耐油性は良いみたいです。
耐油性が心配ならガラス製の注射器が良いでしょう。(この辺りはいつも通り自己責任です)
さて、せっかくエンジンをオーバーホールしたのだから、ついでにキャブレター周りも
オーバーホール。
☆燃料フィルター
村人が3年間使うと燃料フィルターはこんな感じ。
フィルター機能はまったく問題有りませんが、燃料タンクの中で転げ回るので
アルミ部分が減ってしまいます。高い物では無いのでついでに交換。
☆ガスケット
キャブレターのメータリングダイヤフラムとポンプダイヤフラムも交換したのですが、
以前予備としてストックしておいた部品のガスケットが一枚違っていて急遽手配。
エンジンの試運転は後日となりましたが無事にオーバーホール完了。
エンジンは新車状態に近いのでキャブレターセッティングは一旦ノーマルに。
少し使ってから規定値の範囲内で絞っていきます。
プラグは1~2シーズンで交換します。
1シーズン500時間位使いますが電極の消耗は軽微です。
スチールは100時間毎にプラグ交換の指定しされていますが、良質の混合燃料を使って居れば
そんな短時間にダメになる物ではありません。
ゼノアのプラグギャップの指定は0.6~0.7mmとされていますが、始動時にスターターを引いた時の
スピードが低い為、村人は刈り払い機の場合0.5mm程度にしています。
今回の焼き付きを教訓に混合オイルは薄くならない方向でキッチリと管理。
ミクスチャもよりパワーを求めて薄くしすぎない様規定値の範囲から大きく
逸脱しない様にします。
部品の請求書を見たら、2711のピストンやシリンダーはけっこう安くて、
これ位なら3年に1回位交換になっても良いかなと言う程度の金額。
しかし、チェンソーのピストン・シリンダーはそこそこの値段になるらしいです。
(部品の価格は業販価格と一般価格で変わるかも知れないので書けません、悪しからず)
今回は道具に無頓着な人ならそのまま使い続けても気がつかない程度。
しかし、仕事の道具はケチってはいけません。
いつでも完全な状態を維持しないと現場で無駄な時間を過ごす事になります。