ギリシア神話を読んだことのない方でも、「トロイの木馬」の話は知っているだろう。昨今ではマルウェアの一種の方が有名になっているが、古代ギリシア時代から内通者や巧妙に相手を陥れる罠を仕掛けることは広く行われてきた。
一般にトロイの木馬は情報戦であり、スパイが携わるものと思われているが、教育現場にも仕掛けられることがある。2014年、英国のバーミンガムで発覚したイスラム原理主義者による学校乗っ取り計画は、「トロイの木馬」事件と呼ばれ、大スキャンダルになったことは日本では一般に知られていない。私も『イスラム2.0』（飯山陽 著、河出新書013）で初めて知った。
この年、「トロイの木馬」計画が記された文書がBBCなどのメディアにリークされ、そこには以下の様な「学校イスラム化」が記されていたという。
①生徒の殆どがイスラム教徒の学校をターゲットとして選ぶ。
②両親たちに非イスラム教徒の教師が性教育やキリスト教の礼拝を強要しているといったデマを広めさせる。
③学校理事にイスラム原理主義者を送り込む。
④イスラム原理主義者を職員として送り込み、ルールを変え学校を内部から崩壊させる。
⑤校長を辞任させイスラム原理主義者にすげ替える。
そこでは「これはジハードである」と強調され、先ずは「バーミンガムでテストする」と書かれ、具体的な学校名も挙げられていた。多くのメディアはこれを「偽文書」と断定したが、バーミンガム市当局に「本物だ！」と主張する市民の情報や苦情が殺到したため、教育監査局（通称オフステッド）や国などが詳細な調査を実施したところ、実際に「トロイの木馬」計画が進行中だったことが判明、英国の人々を驚愕させた。
オフステッドがバーミンガムにある21の学校を調査した結果、5校は「不適切」と見なされた。不適切な理由としては、女子にヒジャーブを強制して男子の後ろに座られるといった男女差別や男女隔離が行われている、白人女性は「売春婦」とか同性愛者は死刑にするべきだと教えるといった差別教育が行われている、「イスラム教の信仰と異なる」として進化論や音楽が教えられていない等が挙げられた。
「トロイの木馬」事件についての英国政府の報告書には、これら学校において反米、反イスラエルといった反西洋レトリック、男女隔離、陰謀論、イスラム原理主義の他者への強制、反LGBT、他社への不寛容などが確認されたと記されているそうだ。
ムスリムがイスラム教学校を作り、そこで近代的価値観とは全く異なるイスラム的価値観を子供に教えていることも問題視されている。英国では「トロイの木馬」事件以来、公立、私立全ての学校で「英国の価値観」を教えることが義務付けられた。英国の価値観とは民主主義、法の支配、個人の自由、異なる信仰を持つ者同士の相互尊重と寛容だとされている。
一方オフステッドは2017年、全国に139あるイスラム教学校のうち81校は学校として「よくない」、39校は学校として「不適切」という評価を下した。また無認可のイスラム教学校を1年以上に亘り調査した結果、そこに通う生徒たちは1日中コーランを学ばせられ、心の中に「嫌悪」を植え付けられていると懸念を表明した。
2018年、ロンドン市内のイスラム教学校数か所で、「イスラム国」支持者であるウマル・ハックが教師という立場を利用し11歳から14歳の子供たちに「イスラム国」の斬首映像を見せたり、ロンドンで発生したテロ攻撃を模して警官を攻撃するロールプレイをさせたりしていたとして逮捕、起訴され、禁固最低25年の判決を受けた。
警察発表によると、ハックはロンドン市内で数年後に銃、ナイフ、爆弾、大型車などを用いた大規模同時多発テロを実行するため、子供たちを訓練し「軍隊」を作り上げようとしていたとのこと。子供たちには自分が「イスラム国」メンバーだと告げ、訓練について他言したら斬首すると脅していたことも明らかにされた。
イスラム教徒ではないが、日本の教育現場にも「トロイの木馬」作戦が行われており、既に乗っ取り完了状態になっているのではないか？外国人学校では日本人に対する憎悪を植え付ける反日教育が公然と行われている始末。英国の状況には驚いたが、教育監査局のような機関があるのは心底羨ましいと思ったのは私だけではないはず。
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