2月1日、元東京都知事で元衆議院議員の肩書よりも極右やタカ派などとと呼ばれ続けてきた石原慎太郎氏が死去した。享年89歳。暫く見かけなかったので高齢で体調が良くないと思いきや、すい臓がんを患っていたことを訃報で初めて知った。河北新報でも翌日には第1面で死去を報じただけでなく、2~5面にも関連記事を載せていたほど。それだけ社会に影響力のあった人物だったと改めて認識させられた。
リベラル派を装う左翼が石原氏を目の敵にしていたのは当然だが、右派や保守派から熱烈に支持されていたとは限らず、氏の発言は物議を醸すことも多かった。保守派の中にも石原氏を“煽動的ウヨク”と厭う人もいただろうし、私も不快に感じた発言はあった。
ただ、良くも悪くも戦後昭和を代表する大物文士だったし、その死でいよいよ昭和も遠くなったと感じさせられる。尤も私は未だに石原氏の作品を見たことはない。そこで氏への雑感を書くことにした。
アンケートを取ったワケではないが、石原支持者には男性が多く、女性は少なめではないか?石原氏はどう見てもワンマンな家父長的だし、フェミニストならずとも一般女性にさえ敬遠されるかもしれない。表面では女性尊重を謳う今時の政治屋と違い、2001年の「ババア発言」などは女性蔑視発言の典型だったので憶えている。
“文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものは「ババア」”等の発言で不快に感じた女性も少なくなかったろうし、私もババアよりもっとも悪しき有害なものこそ「ジジイ」でしょ?と毒づいた。歴史上、老害の実例はごまんととある。
「ババア発言」よりも不快だったのは、東日本大震災時での発言。過去記事でも取り上げたが、震災発生から3日後の3月14日、大震災への国民の対応について記者に問われ、こう述べている。
「我欲で縛られた政治もポピュリズムでやっている。それを一気に押し流す。津波をうまく利用して、我欲をやっぱり1回洗い落とす必要がある。積年に溜まった日本人の垢をね。やっぱり天罰だと思う。被災者の方々は可哀想ですよ」
石原氏に限らず大震災が起きると決まって“天罰”を言う輩が出てくる。天罰で片づけるのは安易すぎるし、一宮城県民としての怒りから記事をアップした。後に石原氏は「被災された人は非常に耳障りな言葉に聞こえるかもしれないが...」と釈明した挙句、後に謝罪に追い込まれる。
政治家になる前の石原氏は文士であり、この発言が被災者には非常に耳障りな言葉に聞こえるのを気付かぬはずがない。この発言を改めて読み直すと、津波をうまく利用しようとしたのこそ氏ではなかったのか?大津波が1回きた程度では、積年に溜まった人間の垢は流せるはずもないのに。
私は東京都民ではないため、石原都政は論評できない。ただ、東京オリンピックを誘致したことだけは全く評価できず、するべきではなかったと今でも思っている。開催地が東京に決まった時点で反対だったし、そんな予算があれば震災復興に回すべきだったという考えは現代でも変わりない。
石原氏は再び東京でオリンピックを行う意義として、「若者に希望を与えるため」を挙げており、完全に昭和感覚と呆れた。オリンピック誘致で国威向上と好景気が確実な時代ではないのに、夢よ再びということか。コロナ禍は想定外だったにせよ、大赤字となった2020年東京オリンピックの結果は石原氏の無定見もある。
問題発言を繰り返しつつ、それでも石原氏には一定層の支持があった。彼は昭和7(1932)年生まれで私の両親とほぼ同世代である。母などは「言いたい放題でも、何故か憎めないんだよね...」と話していたことがある。逆に彼の“言いたい放題”こそが人気を博したのかもしれない。
私は未読だが、ベストセラー「「NO」と言える日本」はwikiに目を通した限り、少なからぬ日本人の共感を呼んだことは想像に難くない。エッセイが出た1989年当時と違い日本の技術の優位性は失われながらも、「NO」と言えない日本は今も同じだ。
昭和一桁男の政治家が封建的、女性蔑視をするのは年代からも仕方ないだろう。このタイプは鬼籍に入りつつあるが、タカ派型政治家は今の日本で望めそうもない。メディアに叩かれるや、弱腰になるセンセイばかり目につく。
とかく強硬な姿勢と発言で知られた石原氏だが、「石原慎太郎氏死去」というブログ記事には「コンプレックスの人」という見解があったのは意外だった。
何よりも石原氏は文学者であり、脳梗塞を患い、利き手の左が不自由になっても執筆を止めなかったことが河北新報に載っていた。氏が左利きだったことを新聞記事で初めて知ったが、私も左利きなので妙に親近感を覚えてしまった。
◆関連記事:「天災と天罰」
「世界の女性差別発言」
「2020東京オリンピックに思うこと」
14分~24分頃。
新銀行東京の記者会見や、フジモリ氏の奥方に対する姿勢は、厳しい視線を向ければ「政治家として当たり前だ!」となるが、それを実行した政治家が如何に少ないか、うんざりさせられているはずだ。
「天罰」発言についても、「その前」の阪神淡路大震災が「社会党村山政権」、東日本大震災が「民主党政権」で、「こんなポンコツ政権を選びやがって!」と「八百万の神々の怒りが日本人全体に向けて」起こった、という文脈でとらえるべきだったのかもしれない。被災地に対する石原の姿勢は、次の動画で明らかだ↓
ttps://www.youtube.com/watch?v=KPTcSuKffMA
新銀行東京は完全な失政でしたが、理念は評価できます。そしてフジモリ氏の奥方に対する姿勢は初めて知りました。良くも悪くも男気のある方だったと見直しました。自分にトクにならないと動かない政治家が多すぎます。
「社会党村山政権」「民主党政権」を選んだのは国民ですが、散々煽ったメディアの責任こそ大。ポンコツ政党に投票しなかった国民にも受難です。
東日本大震災での瓦礫受け入れを真っ先に表明したのも東京都でした。震災瓦礫受け入れのクレームを、「黙れ!」と一蹴したことは胸がすく思いになります。
河北新報さえ宮城県知事が、震災時での石原都知事の協力に感謝を表明していたことを報じていました。台湾実業家の支援は全く報じませんでしたが。