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天災と天罰 その一

2011-03-17 21:14:06 | マスコミ、ネット

 3月15日付の河北新報は、東日本大震災について石原都知事の感想記事を載せていた。以下はその全文。

東京都の石原慎太郎知事は14日、東日本大震災への国民の対応について記者に問われ、「我欲で縛られた政治もポピュリズムでやっている。それを一気に押し流す。津波をうまく利用して、我欲をやっぱり1回洗い落とす必要がある。積年に溜まった日本人の垢をね。やっぱり天罰だと思う。被災者の方々は可哀想ですよ」と述べた。

 知事は一連の発言の前に、持論を展開して「日本人のアイデンティティーは我欲になっちゃった。アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等だ。日本はそんなもんない。我欲だよ。物欲金銭欲」と語っていた。
 同日、この後に開いた記者会見で“天罰”の意味について、「日本に対する天罰だ」と釈明。「大きなよすがになるんじゃないか。それしなかったら犠牲者たちは浮かばれない」と話した。天罰について発言した際、「『被災された人は非常に耳障りな言葉に聞こえるかもしれないが』と言葉を添えた」としたが、実際には話していなかった。

 既にこの発言はネットでも取り上げられており、石原叩きが勢いづいている。この件については、「極東ブログ」さんの分析記事が面白い。石原知事はまもなく“天罰”発言を謝罪している。氏自身の我欲もユニークだが、もし彼の肉親に犠牲者や被災者がいてもこの発言をしていたならば、実に豪気な人物だと私は評価する。
 蛇足だが石原氏と同じく東京出身の作家・塩野七生氏は、フランスのアイデンティティーのひとつ博愛(fraternité/フラテルニテ)とは、<兄弟間の情、同胞愛、友愛>という意味だった、と書く。つまり、兄弟や同胞でもない者は、愛の対象外の存在ということ。それを“博愛”と訳した為、この概念に我々東洋人は有害な幻想を懐くことになってしまったのではないだろうか、と疑問を呈している。

 大きな天災があると、決まって天罰(又は神罰、仏罰)という主張が出てくる。ただ、この世のあらゆる現象や震災の全てを天罰と結び付ける意見は安易で無責任さが見られるし、どこか意図的、恣意的、独善的かつ狂信的なものを感じる。それでも人間自体が非理性的な生物だし、天罰という言葉には強い響きと魔力があり、私も時にこの見方に同意したくなる。

ああ、仏滅内閣…」というブログ記事も興味深い。題名通り、現政権が組閣の日取りを敢えて仏滅に選んでいたことが紹介されており、以下は記事からの一部引用。

政治という営為は、科学技術の発展した現代においても、決して簡単あるいは単純なものではない。科学技術の知識で解決できないさまざまな事象や問題が多々あるのが実情だろう。唯物論でもないかぎり、人事の及ばない範囲を認め、人事を尽くして天命を俟つ、というのが通常の政治責任者の真摯な態度ではないだろうか…
 これまでのわが国の政府は、内閣成立の日取りは必ず吉日を選んできた。これは迷信では決してなく、単なるゲン担ぎという軽いものでもないように思う。政治という仕事が、いかに智恵を尽くし努力を尽くしてもなお足りないことがあり得て、それを謙虚に神に祈るという気持ちがあったのだろう。
 組閣の日取りを敢えて仏滅に選ぶというのは、菅直人にある種の「不遜さ」あるいは「謙虚さの欠如」があった、といえないであろうか…

 管理人は決して“仏罰”の表現を使っておらず、「以下は私個人の素朴で率直で単純な「感想」であって、論考ではない」ではないと、はじめに断りを入れている。同時に「東日本大地震にみる災害報道のあり方について」という、マスコミへの見事な論評記事もあった。今度の東日本大震災でも頻繁にヘリの騒音が響いていたが、自衛隊の救援ヘリの他にマスコミのそれも結構あったことを知った。私は震災後の生活に追われ、空を見上げヘリの機種を確認もしてなかったから。

 題名に「仏滅」の言葉が使われていても、技術系の方で製造業勤務だったから、迷信には無縁のはず。それでも結びの一言は私も引っかかった。
この政府のときにその地震が発生したのか。なんの客観的根拠もないけれども、感覚としてはやはり気になるのである。
その二に続く

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (みっちー)
2011-03-17 21:23:25
都知事選が気になりますね・・・
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みっちー さんへ (mugi)
2011-03-18 21:52:39
初めまして。

 石垣島在住の方でしたか。こちらは今朝も雪なのに、まるで同じ日本とは思えない天候ですね。

 都知事選は強力な対抗馬がないため、やはり現職再選?それも都民が決めることなので、地方在住者にはお手上げです。
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