アルチューハイマー芸術エッセィ集

音楽批評を中心に日々見聞した芸術関係のエッセィを、気が向いた時に執筆してゆきます。

11/14 京都市交響楽団モーツァルト・ツィクルスNr.21

2009-11-14 23:48:46 | 演奏会評
指揮/鈴木雅明 sp/松井亜季 管弦楽/京都市交響楽団
歌劇「ドン・ジョバンニ」序曲K.527
交響曲第20番ニ長調K.133
モテット「踊れ、喜べ、汝幸いなる魂よ」k.165(158a)
交響曲第34番ハ長調K.338

アンコール:アリア<私の感謝をお受け下さい、慈悲の人よ>K.383


古楽器団体を率いてのバッハ演奏で名高い、鈴木雅明さんが、初めて京響に客演することになった。一連の、小ホールでのモーツァルト・ツィクルスである。

鈴木さんは、名前はよく聞きながらも、実は一度もその演奏にーレコード、実演ともにー接したことはなかった。その初めてが、今日のモーツァルト。

鈴木さんの指揮は、実にエネルギッシュなものであった。どちらかと言えば器用なタクトではないけれども、直截である。金管・ティンパニが強調され、弦楽器は基本的にノン・ヴィブラートで、いよいよ響きは先鋭的で、ストイックなものとなる。もちろん、6ー6-4-3-2の小編成である。

そういうスタイルが、特に前半では些か生硬に過ぎる表情に留まっていた。指揮者、オーケストラが、双方探り合いという趣で、アインザッツなどの不揃いも聴かれた。

後半のエクスルターテ・ユビラーデ、これは私が中学生の時、例の「オーケストラの少女」で、ディアナ・ダービンの歌う「アレルヤ」に惹かれて以来、モーツァルトの作品中でも愛惜おく能わざるものである。今日も、昨今ではなかなかコンサートで聴かれないこの曲を目当てに出かけたのである。
ソプラノの松井さんは、豊かな声量で高音の響きも申し分ない。ただ、些かオペラ的な歌唱で色があり、私はもう少し素直な表現を望みたい。
このあたりからオーケストラも落ち着きを見せ、明るく、また優しく独唱を包み込む。アレルヤの、愉悦に満ちた快活なテンポも爽快である。

最後の34番は、やや鋭角的ではあるが、よくオーケストラが鳴っている。特に終楽章の執拗なタランテラ風のリズムは、指揮者共々、非常に情熱的であった。とにかく鈴木さんは、精力的な指揮をする人だという印象である。

どこからか「待ってました!」の声(会場はやや苦笑。「北座」ではないのだが)がかかったアンコールが、また、とてもよかった。ここでは松井さんの豊かな表情がよく活かされて、この素敵なアリアを堪能した。後半通じて素晴らしい演奏をしていたオーボエが、ここでも良いアクセントになっていた。

初めに述べたように、やや硬さが最後まで拭いきれなかったが、充実したマチネーを聴いた思いである。どこか人情味のようなものがあるようで、過度にエキセントリックでないピリオド・アプローチが、私には聴きよかった。

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