駅のアポテーケで待っていると、エンリコがキヨシの荷物を抱えてやって来た。
夜行列車の出発の時間までの小一時間、ふたりは駅構内のカフェで過ごした。
エンリコはキヨシの荷物の他に、母の作った生ハムサンドを持ってきてくれていた。
夜行列車の中で食べてねと・・・。エンリコ母のぬくもりを感じた。
夜行列車に乗り込むと、キヨシは窓から顔をだした。ハイデルベルクでのお別れの時とは逆だ。
エンリコもキヨシも言葉はなかった。
「チャオ!エンリコ(またなエンリコ!)」
「チュース!キヨシ(またなキヨシ!)」
キヨシはイタリア語で別れを、エンリコはドイツ語で別れをつげた。
発車間際のこの短い言葉が、お互いの精いっぱいの言葉だった。
アリベデルチ(さようなら)大好きなイタリア。
キヨシを成人にしたこの一人旅はここで幕を閉じる。
翌日ハイデルベルクに着くと、荷物を預けていたお姉さんの家に一晩泊めてもらった。
一人旅の話を夜通し全部聞いてくれた。
たくさん笑った。
そしてたくさん泣いた。
そして少し寝坊した。
帰国後、親父やお袋と話す土産話に涙はなかった。
「またな!エンリコ」
1990年2月
キヨシ19歳記す。
-----
2003年12月・・・キヨシに娘が誕生した。
キヨシは娘にイタリア語で名前を付けた。
「いえり(昨日)」という名前を。
父ちゃんの恋した国の言葉だよ。
そんな昨日があったから、今日や明日があるんだよ。
娘はニコっとしてくれたように見えた。
エンリコに電話した。
娘が生まれたよ。イタリア語で名前を付けたよ。と。
エンリコはとても喜んでくれた。
明け方の細い月がとてもきれいに見守っていた。
2003年12月
キヨシ33歳記す。
-----
夜行列車の出発の時間までの小一時間、ふたりは駅構内のカフェで過ごした。
エンリコはキヨシの荷物の他に、母の作った生ハムサンドを持ってきてくれていた。
夜行列車の中で食べてねと・・・。エンリコ母のぬくもりを感じた。
夜行列車に乗り込むと、キヨシは窓から顔をだした。ハイデルベルクでのお別れの時とは逆だ。
エンリコもキヨシも言葉はなかった。
「チャオ!エンリコ(またなエンリコ!)」
「チュース!キヨシ(またなキヨシ!)」
キヨシはイタリア語で別れを、エンリコはドイツ語で別れをつげた。
発車間際のこの短い言葉が、お互いの精いっぱいの言葉だった。
アリベデルチ(さようなら)大好きなイタリア。
キヨシを成人にしたこの一人旅はここで幕を閉じる。
翌日ハイデルベルクに着くと、荷物を預けていたお姉さんの家に一晩泊めてもらった。
一人旅の話を夜通し全部聞いてくれた。
たくさん笑った。
そしてたくさん泣いた。
そして少し寝坊した。
帰国後、親父やお袋と話す土産話に涙はなかった。
「またな!エンリコ」
1990年2月
キヨシ19歳記す。
-----
2003年12月・・・キヨシに娘が誕生した。
キヨシは娘にイタリア語で名前を付けた。
「いえり(昨日)」という名前を。
父ちゃんの恋した国の言葉だよ。
そんな昨日があったから、今日や明日があるんだよ。
娘はニコっとしてくれたように見えた。
エンリコに電話した。
娘が生まれたよ。イタリア語で名前を付けたよ。と。
エンリコはとても喜んでくれた。
明け方の細い月がとてもきれいに見守っていた。
2003年12月
キヨシ33歳記す。
-----