【ノスタルジックじゃつまんない?】

2003年12月生まれ(7歳)
2008年6月生まれ(2歳)の娘の父親です。

56【白い肉と赤い肉】

1990-02-13 | 【イタリアに恋したわけ】
エンリコが夕飯の提案をしてきた。

キヨシはメインディッシュに食べるのは、白いのと赤いの、どっちが好きだ?と

関西では肉=牛だ。
肉まんは豚まんと呼ぶ。
牛肉が入っているなら肉まんと呼べるのだ。

肉ジャガの肉は何を使いますか?と問い掛けられ、「肉です」と応える人も多い。

豚が好きか?牛が好きか?と聞かれたなら判りやすかったが、「赤いの」か「白いの」という発想がなかったので戸惑った。

そっか、赤い肉(牛や豚)には赤ワインで、白い肉(鶏や魚)には白ワインなのかもしれないな!

結局どっちも好きだよ!と応えた。
今日は赤い肉で、明日は白い肉にしよう!と言ってくれた。

エンリコ母の作るパスタは絶品だった。
わざわざ、キヨシのため、醤油味にしてくれた。
いや、本場の味が食べたかったのですが・・・。とも思ったが気遣いが嬉しかった。

どうやら、エンリコの家族は醤油味に最近ハマっているらしい。

このパスタは何という名前ですか?とエンリコ母に聞いてみた。
少し悩んでいると、エンリコ父が、こう応えた。
 「パスタ アッラ ジャッポネーゼ」
とても判りやすいネーミングに思わず笑ってしまった。

英語の達者(?)なロレンツォも、ゲスト思いの母も、堅物そうでも面白い父もみんなキヨシのことを暖かく迎えてくれた。

日本を離れて数ヶ月・・・ホッと一息できる雰囲気に、キヨシは自分のウチにいるような錯覚を覚えた。



55【イタリア人に惚れた】

1990-02-13 | 【イタリアに恋したわけ】
昼食時に弟のロレンツォが帰ってきた。

キヨシと同じ19歳だということは、エンリコから聞いて知っていた。
第一印象は・・・「かっこええやんけ!」だ。
おいおい、こんなの日本に連れて帰ったら、街中大騒ぎさ!だよ!

ジェームスディーンのような雰囲気をかもし出している。

一目で惚れた・・・

んなわけはない!

昼食後、エンリコは出かけなければならない用事があるらしく、ロレンツォが相手をしてくれた。

ロレンツォはイタリア語でゆっくりと、聞いた。
 「キヨシ、イタリア語がわかるか?」
「少しならわかる」
 「じゃあ、英語はわかるか?」
「イタリア語よりはわかる」
 「オレ、英語も話せるんだ!だから英語で会話しよう!」

自信たっぷりにロレンツォはそう言った。

キヨシは、英語に対して、それほどの自信はなかった・・・。
不安だぞ・・・。

するとロレンツォは英語で問いかけてきた。

 「アウ メニ イアズ アーヴ ヨゥ」

???
英語だよね?
一瞬戸惑った。
ま、いきなりの会話で難しいことを話し始めるわけもないし・・・

何て言ったの?

頭の中で分析してみた。

アウ=how
メニ=many
イアズ=years
アーヴ=have
ヨゥ=you

並べてみた。

「how many years have you」

イタリア語に変換してみた。

「quanti anni hai」

!!!「何歳ですか?」

ロレンツォの英語を理解した。
彼は、イタリア語の語順のまま、英語の単語に置き換えて、イタリア語の発音で話していたのだ。

そっか、これでいいんだ!これでも自信たっぷり「英語なら話せるぜ!」でいいんだ。

ロレンツォかっこいいよ!!!
いつも遠慮がちに英語を話していたけれど、これでいいんだ。自信たっぷり「英語なら話せるぜ!」だ。

イタリア人・・・
どんな外国人と向かい合っても堂々としている。
それでいて、決して相手を見下したりしない。
ポンコツのチンクエチェントに乗っていても、街へ降りればみんな振り返るほど美人な雰囲気のカルラ。
日本人のキヨシをなんのおかまいもなしにミラノのおしゃれスポットへ案内してくれたエレナ。
待ち合わせの場所も時間もきっちり守り、相手に親身になって助言してくれるエンリコ。
「アウ メニ イアズ アーヴ ヨゥ」な英語でも「話せるぜ!」のロレンツォ。

みんな、イタリア語がよく似合う。
かっこいいよ!イタリア人!オレはあんた達に惚れました。

仲間に入れてください・・・!

54【エンリコの家】

1990-02-13 | 【イタリアに恋したわけ】
約束の時間きっかりにエンリコはアポテーケ前にあらわれた。

キヨシ久しぶりだな!と再会はあっさりしたものだった。
キヨシもエンリコの顔を見てホッとした。

27時間の列車×2回も、パリでの孤独感も北欧の寒さもパンスト体験も、数々の再会とお別れも、すべての涙もなにもかも、ここで終わるんだ。

エンリコには、たくさんたくさん話したいことがある。
そんなことをグルグル考えていたのだが、エンリコはそわそわしている。

どうやら、早く乗ってきたクルマに戻りたいらしい。

案の定だよ。3重駐車・・・。
よくもまあ平気で止められるもんだわ。

けたたましいクラクションにせかされながらエンリコのクルマに乗り込んだ。

エンリコの家はフィレンツェの街を見下ろす高台にあった。
どうやら高級住宅街だ。

あんなに大きかったドゥオーモが小さく見えた。

エンリコの家はとても立派だった。
地上3階地下1階、広々とした庭付きだ。

しばらく滞在できるんだろ?とキヨシの部屋まで用意していてくれた。

玄関ではエンリコ母が出迎えてくれた。
片言の英語で挨拶してくれた。

キヨシはイタリア語で応えてみた。
それならばとエンリコ母もイタリア語で返す。

いろいろな国を旅してきたが、やはり現地語を話すと相手の顔がよく見える。
片言の英語を話しているエンリコ母とイタリア語で話すエンリコ母の顔は違って見えた。

エンリコ父は仕事に出かけていていなかった。
昨日、電話に出てくれた弟のロレンツォも出かけていた。

まず、用意してくれたキヨシの部屋へ案内してくれたエンリコは、厳しい顔をしてこう言った。

 「キヨシ、イタリア語を勉強したのか?ドイツ語とどっちが上手に話せるんだ?」と
「イタリア語は本で読んで勉強しただけだよ、ドイツ語の方がマシだよ」と応えると、

 「ウチの家族と話すときはイタリア語を使ってもいいが、オレとお前とで話すときは、ドイツ語だ。いいな!」

エンリコも喜んでくれると思って覚えたイタリア語だったので、少しとまどったが、より、確実に意志疎通したいというエンリコの希望通り、その提案に素直に従うことにした。

エンリコから教わることは多い。キヨシには兄弟がいない。良き兄ができたような気がした。




53【アポテーケ】

1990-02-13 | 【イタリアに恋したわけ】
結局、たいした散歩も観光もせずに寝てばかりのフィレンツェ初日だった。

昨日電話した時間に今日もエンリコの家に電話をかけた。
弟の言っていたことを理解していたとすれば、今日こそエンリコに会えるはずさ。

「プロント!(もしもし)」一発でエンリコの声だと判った。

エンリコもキヨシからの電話を待っていたようだ。
昨夜はどこに泊まったんだ?今朝着いたのか?と気にかけてくれた。

エンリコとイタリア語で話したかったが、エンリコの方がドイツ語で話しはじめてしまったから、しょうがない・・・。

「今、どこにいる?駅は判るな?駅のアポテーケで待っててくれ。1時間でそっちにいくから、いいなアポテーケの前だぞ!」そう言い残すと電話を切られてしまった。

アポテーケってなんだよ・・・

とりあえず、ホテルのオヤジにお礼を言って、チェックアウトし、荷物を持って駅へ向かった。
これからアポテーケを探さなければならない・・・
タイムリミットは1時間!急げ!キヨシ!どこだアポテーケ!!!

駅について辺りを見回したが、アポテーケは見当たらなかった。

イタリア語で駅員に聞いてみた「アポテーケはどこですか?」
駅員は首をかしげるばかりだった。

アポテーケ・・・・・

とりあえず辞書でもひいてみるか・・・載ってないとは思うけどさ・・・。

イタリア語-ドイツ語の辞書を引いてみた・・・しかし、それらしき単語は見当たらない。
ドイツ語かな?今度はその辞書の後側にあるドイツ語-イタリア語を引いてみた。

「はぁ・・・・あったよアポテーケ!」
辞書で見つけたアポテーケはイタリア語でファルマッチア・・・薬局だ。

キヨシは駅の薬局の前で必死にアポテーケを探していた。
ヤバい・・・ドイツ語だんだん忘れてるかも・・・。

とにもかくにもエンリコ到着10分前にすべての謎はとけた・・・。