★娘の生まれた日★

お前が妻のおなかにいると知ったときから
オレはすでにお前の父ちゃんだった。
妻のおなかのなかで、すでにお前はオレの娘だった。

母ちゃんと父ちゃんが結婚式を挙げた公園まで散歩した帰り道・・・
夕食の買い物をしようと出かけたとき
お前は、妻に知らせてくれた。

「生まれるんだよ」

病院に着くと
すぐに妻は入院した。

父ちゃんは、お前の誕生の日まで家でひとり待つことになった。

その夜寝ようとしたとき、病院から知らせが入った。

急いで安産のお守りとカメラを持って病院へ向かった。

午前一時、病院に着くと、手を消毒するように言われた。

清潔なエプロンに手を通して、しばらく待つと看護婦さんが赤ちゃんを抱いて来た。

オレは、2705グラムのその赤ちゃんを抱っこした。
小さな赤ちゃん用のピンクの帽子の上に苗字が書いてあった。

やっと、状況が理解できたとき、お前は声をあげた。

「ふぇえ」

一生、忘れない・・・
お前の声と重さ。

自然に涙がこぼれた・・・

しばらくするとベッドにのったお前の母ちゃんが、父ちゃんとお前の前まで運ばれてきた。

親子三人揃った。

「あわてて持ってきた安産のお守りが間に合わなかったね」
と笑った。

お前は、父ちゃんと母ちゃんの前で何度も声をあげた

「ふえぇ」

父ちゃんは、病院からの帰り道、なぜか洗車した。
夜空の月がとっても綺麗に見えた。

父ちゃんは、友達に電話した。
友達はとても喜んでくれた。

イタリア語で名前を付けると父ちゃんは友達に言った。
素敵な名前だ！と
すぐにお前の名前を覚えてくれた。

月がとっても綺麗な夜のことだ。