2月4日、山口県の楠クリーン村にとうとう牛がやってきました。
その数は全部で20頭!肉牛です。
事前に20頭来るとは知っていましたが、いざこの数の牛を間近でみて正直驚きました。
大迫力の牛達を楠メンバー総出で迎えます。
この牛達は、放牧をして山や畑の草を食べてきれいにしてもらう役目と、非常時には僕たちのたんぱく源として食べられます。
牛の糞も有機肥料として利用することができます。
さらには繁殖も行い、子牛を育てて食用として加工、現在建設中のかやぶきレストランで調理・販売。牛の6次産業化を目指します。
さて、初めの一歩としてまず牛の世話から始まります。
今回、牛の世話係に立候補しました。
大学で農学を専攻していたわけではないので、牛の世話は初めてです。
まさか、自分が牛の世話をする日がくるとは思っていませんでした。
わからないことだらけですが、色々な方の応援・アドバイスをいただき日々牛の世話に奮闘しています。
今回はその一部始終を皆様にお伝えします。
■STEP1 ~牛を誘導せよ~
まずは、自分たちで作った牧柵まで牛を誘導することから始まります。
道が狭くて大型トラックが途中までしか入れないため、牛の頭にロープをくくりつけて、人力で誘導して牧柵にいれていきます。
さらっと言いましたが、この作業は牛1頭に対して大人3人は必要です。
1人がロープで誘導、1人は牛の数メートル前から、もう1人は後ろから牛のおしりや足を叩いて前へ前へと誘導していきます。
かけ声は人によって様々ですが、それいけ!おい!いくぞ!といった言葉で牛を追います。
声を出すことはとても大事です。
牛になめられないように、時には態度を大きく、なだめるときは優しく接する。
これが牛を育てるコツだそうです。
ですが、そう簡単にはいきません。
立ち止まってしまったり、急に走りだしたり、茶畑に突っ込む牛など多数いました。
あの巨体で暴れだすと当然人間のパワーではかないません。
牛は臆病なので人に体当たりすることはまずないのですが、ロープを手に巻きつけてしまい引きずられる可能性があります。
特に危ないのは牧柵と牛の体の間に挟まれてしまうことです。
楠メンバーの中で危うく怪我をしそうになった人もいました。
牛との生活はこういった危険が伴います。まさに死闘です
牛を柵まで運ぶ様子。
牛との生活はまさに死闘です。
■STEP2 ~牛を見分ける~
牧柵に牛達をくくりつけたところで、じっくりと観察。
まじまじと見てみると一頭一頭見た目に違いがあります。
まず牛の頭のてっぺんには、髪の毛があります。
くるくるの天然パーマや、直毛でさらっとした毛、短髪もいます。
どことなく楠メンバーの誰かに似ていたり・・・。
毛の色も、黒毛和牛なので基本は黒なのですが、茶色っぽい毛をした牛もいます。
体の一部がはげていたり、角の形でも違いが出ます。
耳に番号がついたタグがあるのですが、番号だけで管理するのではなく、見た目、特徴もはっきりわかるくらい牛のことを理解しようと日々観察です。
観察力は、牛を飼うにはとても重要です。
慣れている人だと、ひと目でその牛の体調がわかるそうです。
でも僕たちは素人なので毎日観察して目を養わないといけません。
万が一の病気に備えて、早期に発見しないと手遅れです。
人間と同じように、鼻水が出ていたり、明らかに動きが悪いので比較的見つけやすいのですが、座り込んだままの状態まで悪化してしまうともう遅いそうです。
楠の牛は今のところ元気に動き回っていますが、油断できません。
■STEP3 ~エサやり・水の確保~
楠に来て、初めてのエサやり。
放牧牛なので、基本は放牧地にある草などがエサとなるのですが、今は冬のため、草があまりありません。
なので、冬の時期はあらかじめ用意していた牧草を与えます。
20頭で1日に約80kgもの牧草を食べます。
そして、次は水の確保です。
楠は、水を水道局から引いていないため、エンジンポンプを使って近くにある井戸から水をくみあげます。
1000リッター容量のタンクに水を満杯にいれて牛たちのいるところまで運びます。
そして、牧柵内に設置した水のみ場(風呂おけ3つ)に水を移しかえます。
牛たちはその間も草を際限なく食べ続けています。
エサやりは朝晩1回ずつですが、水やりは1日1回です。
このリズムを狂わせることなくやり続けないといけません。
最初の1ヶ月が勝負です。
エサ・水をきちんと確保することで、牛達がこの場所で安心して生活できるように僕たちが環境を整えます。
エサ・水が少しでも不足すると牛が栄養失調になったり、脱走を図ったりします。
そして、エサをあげるタイミングも毎日規則正しく同じ時間に同じ量を与える必要があります。
牛はデリケートな生き物なので、急にエサの種類・量をかえると胃が対応することができません。
場合によっては死に至る危険性があります。
人間でいうと、断食後の食事の量に気をつけるのと同じくらい気をつかいます。
最近では、エサの時間になると牛達が勝手に集まってやってきます。
ご飯タイムは牛達にとって戦いです。
牛同士がエサをとりあい、われ先にとエサに飛びついてきます。
楠の人間たちと同じで、食事は早いもの勝ちなのです。
■STEP4 ~妊娠検査~
楠にやってきた牛で、約半分の牛は、去年の夏ごろに種付けをしています。
ですので、きちんと身ごもっているのか検査をします。
自分たちではもちろんできないので、獣医さんを呼んで調べてもらいました。
ビニール手袋を装着し、牛の肛門に手をつっこみます。
牛も一瞬だけ表情をゆがめますが、その後は平然とした顔をしています。
肛門から直腸の中を手の感触を頼りに調べていきます。
最初は内部に溜まっている牛の糞を排除します。
そして、直腸の中に子が身ごもっているか感触で確認します。
プラスが妊娠でマイナスが流産した、もしくは受精していないということになります。
初日に3頭調べてもらったときは、残念ながら全頭マイナス判定でした。
数日後、残りの8頭の検査をするため、牛を追い込みます。
前日、雨がふっていたため地面がぬかるんで沼地と化していました。
1頭だけ追い詰めるのは難しいので(牛は群れで行動する習性があるため)、まとめて柵側に追い込みます。
牛を追い込むと1頭臆病な牛が逃げ出してしまい、次々と逃げて大人4人がかりでも止めることができません。
じゃあ、上の放牧地に追い込もうということに。
放牧場が山で元々お茶園だったため、下・中・上と段々になって分かれています。
僕が数日間で確認したのは中腹までで、牛が上にあがるには急な坂なので牛は怖がって上にいこうとしませんでした。
かろうじて上に上がれそうな坂があり、そこに追い込もうということで、獣医さんと楠メンバー3人で牛20頭をうまく上へ誘導しました。
面白いもので、1頭の牛が上に駆け上がると続々と続いて残りの牛たちが大移動をはじめました。
楠メンバーから増援をよび、ようやく追い込み開始です。
そこでも色々なハプニングがおこりました。
牛を皆で端に追い込んでいたのですが、牛はお茶の木や枝をなぎ倒してさらに逃げようとします。
ロープで結んでいたはずの牛がロープをほどいて脱走したり、そのロープをつかみながら追いかけていたメンバーが牧柵に激突するなどして、牛追いを開始してから2時間もの時間が過ぎていました。
やっとのことで追い詰め、先生に検査をしていただき、結果、なんと3頭の牛が妊娠していました!
5月に出産予定なので、それまでに牛舎を建て、分娩の環境を整えます。
■牛の六次産業化へ向けて
さて、今回ご紹介したのはまだ始まりにすぎません。
たくさんのステップを踏みながら、僕たちは牛と共存し生きていきます。
牛を育てる環境を作り、その先の6次産業化という目的に向かってやることはたくさんあります。
6次産業化へ向けて冒頭で軽く述べさせていただきましたがもう少し詳しく説明して締めようと思います。
~楠クリーン村の牛の六次産業化モデル~
①牛舎・牧柵の建設など、全て自分たちで作れるため、牛の設備・環境を整えるコストが圧倒的に低い
→先行投資がしやすい
②電気・水も自分達で賄っているため、牛に対する必要経費がかからない
→合成飼料・牧草代・ポンプのオイル代のみ
③放牧することによって草刈の手間をなくし、さらには非常時の食料源となる
→いざというときのための食の確保
④牛糞から堆肥をとる
→農業とも連携し総合的な6次産業を
⑤肉牛を繁殖させることによって、子牛の販売・流通も手がける
→現金収入を初めて得る
⑥自分たちで育てた牛で、現在建設中の農家レストランのメニューとして販売
→安心・安全な食のアピール。イベントも行い、地域の人との交流を図る
生産・加工・販売を全て行なう6次産業が農業の分野で叫ばれています。
私たちは当然農分野でもそれを推し進めていますが、今回牛を導入したことでそれが更なる広がりを持ちます。
畜産分野での6次産業化です。
また先に述べたように牛糞から堆肥を自給することで農業とのつながりもでき、総合的な6次産業を展開することができます。
まだまだスタートを切ったばかりではありますが、食の自給を市民の手で実現する私達の挑戦は着々と歩みを進めています。
クリーン村に新たにやってきた牛たち。
彼女たちがクリーン村の新たな6次産業化の中核を担います。
その数は全部で20頭!肉牛です。
事前に20頭来るとは知っていましたが、いざこの数の牛を間近でみて正直驚きました。
大迫力の牛達を楠メンバー総出で迎えます。
この牛達は、放牧をして山や畑の草を食べてきれいにしてもらう役目と、非常時には僕たちのたんぱく源として食べられます。
牛の糞も有機肥料として利用することができます。
さらには繁殖も行い、子牛を育てて食用として加工、現在建設中のかやぶきレストランで調理・販売。牛の6次産業化を目指します。
さて、初めの一歩としてまず牛の世話から始まります。
今回、牛の世話係に立候補しました。
大学で農学を専攻していたわけではないので、牛の世話は初めてです。
まさか、自分が牛の世話をする日がくるとは思っていませんでした。
わからないことだらけですが、色々な方の応援・アドバイスをいただき日々牛の世話に奮闘しています。
今回はその一部始終を皆様にお伝えします。
■STEP1 ~牛を誘導せよ~
まずは、自分たちで作った牧柵まで牛を誘導することから始まります。
道が狭くて大型トラックが途中までしか入れないため、牛の頭にロープをくくりつけて、人力で誘導して牧柵にいれていきます。
さらっと言いましたが、この作業は牛1頭に対して大人3人は必要です。
1人がロープで誘導、1人は牛の数メートル前から、もう1人は後ろから牛のおしりや足を叩いて前へ前へと誘導していきます。
かけ声は人によって様々ですが、それいけ!おい!いくぞ!といった言葉で牛を追います。
声を出すことはとても大事です。
牛になめられないように、時には態度を大きく、なだめるときは優しく接する。
これが牛を育てるコツだそうです。
ですが、そう簡単にはいきません。
立ち止まってしまったり、急に走りだしたり、茶畑に突っ込む牛など多数いました。
あの巨体で暴れだすと当然人間のパワーではかないません。
牛は臆病なので人に体当たりすることはまずないのですが、ロープを手に巻きつけてしまい引きずられる可能性があります。
特に危ないのは牧柵と牛の体の間に挟まれてしまうことです。
楠メンバーの中で危うく怪我をしそうになった人もいました。
牛との生活はこういった危険が伴います。まさに死闘です
牛を柵まで運ぶ様子。
牛との生活はまさに死闘です。
■STEP2 ~牛を見分ける~
牧柵に牛達をくくりつけたところで、じっくりと観察。
まじまじと見てみると一頭一頭見た目に違いがあります。
まず牛の頭のてっぺんには、髪の毛があります。
くるくるの天然パーマや、直毛でさらっとした毛、短髪もいます。
どことなく楠メンバーの誰かに似ていたり・・・。
毛の色も、黒毛和牛なので基本は黒なのですが、茶色っぽい毛をした牛もいます。
体の一部がはげていたり、角の形でも違いが出ます。
耳に番号がついたタグがあるのですが、番号だけで管理するのではなく、見た目、特徴もはっきりわかるくらい牛のことを理解しようと日々観察です。
観察力は、牛を飼うにはとても重要です。
慣れている人だと、ひと目でその牛の体調がわかるそうです。
でも僕たちは素人なので毎日観察して目を養わないといけません。
万が一の病気に備えて、早期に発見しないと手遅れです。
人間と同じように、鼻水が出ていたり、明らかに動きが悪いので比較的見つけやすいのですが、座り込んだままの状態まで悪化してしまうともう遅いそうです。
楠の牛は今のところ元気に動き回っていますが、油断できません。
■STEP3 ~エサやり・水の確保~
楠に来て、初めてのエサやり。
放牧牛なので、基本は放牧地にある草などがエサとなるのですが、今は冬のため、草があまりありません。
なので、冬の時期はあらかじめ用意していた牧草を与えます。
20頭で1日に約80kgもの牧草を食べます。
そして、次は水の確保です。
楠は、水を水道局から引いていないため、エンジンポンプを使って近くにある井戸から水をくみあげます。
1000リッター容量のタンクに水を満杯にいれて牛たちのいるところまで運びます。
そして、牧柵内に設置した水のみ場(風呂おけ3つ)に水を移しかえます。
牛たちはその間も草を際限なく食べ続けています。
エサやりは朝晩1回ずつですが、水やりは1日1回です。
このリズムを狂わせることなくやり続けないといけません。
最初の1ヶ月が勝負です。
エサ・水をきちんと確保することで、牛達がこの場所で安心して生活できるように僕たちが環境を整えます。
エサ・水が少しでも不足すると牛が栄養失調になったり、脱走を図ったりします。
そして、エサをあげるタイミングも毎日規則正しく同じ時間に同じ量を与える必要があります。
牛はデリケートな生き物なので、急にエサの種類・量をかえると胃が対応することができません。
場合によっては死に至る危険性があります。
人間でいうと、断食後の食事の量に気をつけるのと同じくらい気をつかいます。
最近では、エサの時間になると牛達が勝手に集まってやってきます。
ご飯タイムは牛達にとって戦いです。
牛同士がエサをとりあい、われ先にとエサに飛びついてきます。
楠の人間たちと同じで、食事は早いもの勝ちなのです。
■STEP4 ~妊娠検査~
楠にやってきた牛で、約半分の牛は、去年の夏ごろに種付けをしています。
ですので、きちんと身ごもっているのか検査をします。
自分たちではもちろんできないので、獣医さんを呼んで調べてもらいました。
ビニール手袋を装着し、牛の肛門に手をつっこみます。
牛も一瞬だけ表情をゆがめますが、その後は平然とした顔をしています。
肛門から直腸の中を手の感触を頼りに調べていきます。
最初は内部に溜まっている牛の糞を排除します。
そして、直腸の中に子が身ごもっているか感触で確認します。
プラスが妊娠でマイナスが流産した、もしくは受精していないということになります。
初日に3頭調べてもらったときは、残念ながら全頭マイナス判定でした。
数日後、残りの8頭の検査をするため、牛を追い込みます。
前日、雨がふっていたため地面がぬかるんで沼地と化していました。
1頭だけ追い詰めるのは難しいので(牛は群れで行動する習性があるため)、まとめて柵側に追い込みます。
牛を追い込むと1頭臆病な牛が逃げ出してしまい、次々と逃げて大人4人がかりでも止めることができません。
じゃあ、上の放牧地に追い込もうということに。
放牧場が山で元々お茶園だったため、下・中・上と段々になって分かれています。
僕が数日間で確認したのは中腹までで、牛が上にあがるには急な坂なので牛は怖がって上にいこうとしませんでした。
かろうじて上に上がれそうな坂があり、そこに追い込もうということで、獣医さんと楠メンバー3人で牛20頭をうまく上へ誘導しました。
面白いもので、1頭の牛が上に駆け上がると続々と続いて残りの牛たちが大移動をはじめました。
楠メンバーから増援をよび、ようやく追い込み開始です。
そこでも色々なハプニングがおこりました。
牛を皆で端に追い込んでいたのですが、牛はお茶の木や枝をなぎ倒してさらに逃げようとします。
ロープで結んでいたはずの牛がロープをほどいて脱走したり、そのロープをつかみながら追いかけていたメンバーが牧柵に激突するなどして、牛追いを開始してから2時間もの時間が過ぎていました。
やっとのことで追い詰め、先生に検査をしていただき、結果、なんと3頭の牛が妊娠していました!
5月に出産予定なので、それまでに牛舎を建て、分娩の環境を整えます。
■牛の六次産業化へ向けて
さて、今回ご紹介したのはまだ始まりにすぎません。
たくさんのステップを踏みながら、僕たちは牛と共存し生きていきます。
牛を育てる環境を作り、その先の6次産業化という目的に向かってやることはたくさんあります。
6次産業化へ向けて冒頭で軽く述べさせていただきましたがもう少し詳しく説明して締めようと思います。
~楠クリーン村の牛の六次産業化モデル~
①牛舎・牧柵の建設など、全て自分たちで作れるため、牛の設備・環境を整えるコストが圧倒的に低い
→先行投資がしやすい
②電気・水も自分達で賄っているため、牛に対する必要経費がかからない
→合成飼料・牧草代・ポンプのオイル代のみ
③放牧することによって草刈の手間をなくし、さらには非常時の食料源となる
→いざというときのための食の確保
④牛糞から堆肥をとる
→農業とも連携し総合的な6次産業を
⑤肉牛を繁殖させることによって、子牛の販売・流通も手がける
→現金収入を初めて得る
⑥自分たちで育てた牛で、現在建設中の農家レストランのメニューとして販売
→安心・安全な食のアピール。イベントも行い、地域の人との交流を図る
生産・加工・販売を全て行なう6次産業が農業の分野で叫ばれています。
私たちは当然農分野でもそれを推し進めていますが、今回牛を導入したことでそれが更なる広がりを持ちます。
畜産分野での6次産業化です。
また先に述べたように牛糞から堆肥を自給することで農業とのつながりもでき、総合的な6次産業を展開することができます。
まだまだスタートを切ったばかりではありますが、食の自給を市民の手で実現する私達の挑戦は着々と歩みを進めています。
クリーン村に新たにやってきた牛たち。
彼女たちがクリーン村の新たな6次産業化の中核を担います。