日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

晩秋の能登を行く 完結編 - あぐり

2019-11-16 21:47:07 | 居酒屋
雨はひとまず止んだかと思いきや、「わり勘」を出るや否や雨音が聞こえるほどの本降りになりました。それからさほどの間も置かずに稲光が走り、一呼吸置いてから雷鳴が。北陸は俄に冬の様相を呈しています。野町駅の待合室でやり過ごした後、犀川を渡って繁華街を通り抜け、せせらぎ通りを歩いてきました。続いて訪ねるのは「あぐり」です。
野町から繁華街までならともかく、ここまで歩くとかなりの距離です。バスに乗ってもよいところではありました。しかるに延々歩いてきたのは、止むに止まれぬ事情によります。早い話、真打となるはずの「浜長」に早仕舞いで振られたのです。九時半に訪ねたところ、明かりはついていたものの、店主直々のお断りを受けてしまうという顛末です。
ただし、自分でも意外なほどに落胆はしませんでした。そもそも万全な状態とは言い難かったからです。経験上、九時半では早仕舞いの可能性があるのを承知しつつも、間髪入れずに飛び込むのは到底無理で、腹ごなしをしてから行くしかありませんでした。そのようにして訪ねた先々月でさえ、実をいうとやや息切れ気味だったのです。年々食が細ってきた現状を考えると、はしご酒の二軒目以降に訪ねるという発想自体、現実味がなくなっているともいえます。その限界が露呈したという点では、ある意味想定の範囲内だったというわけです。改めて余力を考えても、軽く一杯やるのがせいぜいという状態に鑑み、そのような向きに好適なこちらの店へ流れ着いたという経緯があります。
この店の世話になるというと日曜が多いような気がします。お客の引けたカウンターで、接客の青年、お姉さん相手に一杯やるというのが、最も多く繰り返された場面です。しかし今夜は賑わっており、青年もお姉さんも忙しそうです。それでも慌しさを感じないのは、古い町屋が醸し出す唯一無二の空間のおかげでしょうか。かねて絶賛している一枚板のカウンターもさることながら、今回印象に残ったのは音響です。自分自身、TVあるいは音楽を大音量で流されると耳障りに感じる部類の人種ですが、こちらの音響はむしろ心地よく感じられます。音量ではなく音響と表現するのは、ほどよい音量で、なおかつ心地よく聞こえてくるからです。ジャズバーの類ほど高尚なものではないにしても、それなりの機材を使っているのでしょう。その機材から流れる調べが木造家屋の空間で響くことにより、独特な居心地を生み出しているのかもしれません。どこへ行っても大音量の自動放送が流される世知辛いご時世にあって、しばしの癒しを与えてくれたことに感謝します。

町屋ダイニング あぐり
金沢市長町1-6-11
076-255-0770
1700PM-2300PM(LO)
月曜定休

天狗舞
突き出し二品(たこ梅肉和え・なめこおろし)
加賀蓮根の海老真丈挟み揚げ
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