日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

汽車旅in北陸 2018 - 日本酒 真琴

2018-01-21 21:21:55 | 居酒屋
「赤玉」を出ると小路が雨に濡れていました。一旦止んだ雨が再び降り出したのです。とはいえ、止み間なく降り続けた日中とは違い、傘もいらない程度の小雨ではあります。傘を差さずに今夜の宿まで歩きました。
一風呂浴びたところで再開です。茶屋街で呑むという宿願が、今回初めて実現します。訪ねるのは「真琴」です。

昨秋北海道から近畿へと日本海側を縦断していったとき、今回と同様主計町に宿をとり、繁華街から戻った後に深夜の茶屋街を歩きました。そのときに、酒林を吊した見慣れない店ができているのに気付きました。既に閉店した後だったものの、店構えには看過しがたいものがあり、いずれ訪ねてみたいと密かに思っていたのです。そして今回、早くも機会が訪れました。
前回通りがかったとき、白木の格子の向こうに見える、いかにも日本酒バーの趣漂うカウンターが印象に残りました。その記憶に誤りはなく、正面の窓格子とガラス戸はもちろんのこと、カウンター、椅子から床、天井、食器棚に至るまで、全てが眩しいばかりの白木で統一され、鉛筆のような柱が何本も通されていました。それらが間接照明に浮かび上がった店内の雰囲気は、自身知る中でいうなら福岡の「雲レ日」を彷彿させるものです。
そのように思うのは、お姉さん二人で仕切るカウンターがあちらに通ずるからでもあります。ただし、奥に立つ店主はこちらとおおむね同年輩といったところでしょうか。出身地である能登の地酒と能登杜氏に一方ならぬ思い入れがあり、半年前に開いたのがこの店だそうで、白木も能登産のヒバを奢ったというのが店主の弁です。器にも一家言があるようで、燗酒はまず輪島塗の片口、次いで銅を叩いたちろりで供されました。

観光客が闊歩する日中はともかく、深夜の静かな佇まいには情緒があってよいものです。金沢の夜を締めくくるにふさわしい店に、また一つ出会えたような気がしています。繁華街との行き来を考えると、あちらからわざわざ出向いてくるかどうかは微妙ながら、茶屋街に泊まったときはもう一度訪ねてみたいと思う一軒でした。

日本酒 真琴
金沢市東山1-5-3
076-205-3800
1200PM-1600PM/1900PM-2300PM
木曜定休

池月
天狗舞
夢醸
初櫻
チーズ3種盛り
生姜入りスープカレー
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汽車旅in北陸 2018 - 赤玉金劇パシオン店

2018-01-21 18:04:21 | 居酒屋
「わり勘」に振られたことを、予定外の店に寄れるよい機会だと申しました。それではどこへ行くかと考えたとき、いの一番に浮かんだ店があります。二軒目に訪ねるのは「赤玉」です。
去年の今頃、金沢が雪景色となったことで俄に去りがたくなり、金沢で図らずも三度目の晩を迎えました。そのとき最後に寄ろうとしたのがここです。ところが、定休日ではないにもかかわらず、どういうわけか閉まっており、結局「三幸」を訪ねました。実は、昨晩も「浜長」を出た後に軽く一杯やろうとしたところ、行灯の明かりは消えた後でした。他に寄りたい店も多々あることから、翌日に回すという選択も難しそうに思われ、今回も行き損なうのかとその時点では思いました。しかし、意中の店に振られたことにより、図らずも出番が回ってくるという結果です。

飲食店に本店と支店があるとき、世間の評価は当然ながら本店に集中しがちですが、「旨味太助」のように本店と互角以上の店もあります。同様なのが「赤玉」で、片町の交差点の角にある本店だけでなく、通りを挟んで斜向かいにある支店も甲乙つけがたい名店です。その中から支店の金劇パシオン店を選んだのは、虚飾のない大衆酒場の雰囲気が、僅差で本店を上回るように思えるからです。そう考える人々は多いのか、六時に入った時点でカウンターは八割方埋まり、小上がりの空いた席にも予約席の札が立つ盛況でした。とはいえ全ての席が埋まることはなく、常時わずかな空席があって、先客が出た後に次のお客が収まるという形で、店は滞りなく回転しています。
品書きは酒、おでん、刺身類、一品料理の合わせて四枚。おでんとその他がそれぞれ数十種にも及ぶ圧倒的な品数です。必然的に目移りしがちなところではありますが、名物でもある牛すじ、湯豆腐、それに光り物のぬたなどが中央のホワイトボードに掲げられ、奥の方には日替わりの黒板もあって、それらが一押しなのは一目瞭然です。その二枚を主体にすれば、品書きをいちいち眺める必要もなさそうです。何度か訪ねて次第に勝手が分かってきました。奥の厨房から時折顔を出すのが店主、客席を仕切る青年が跡取り、青年と組むお姉さんが若女将か妹さんで、後から来たおばちゃんがおそらく女将でしょう。明るく家庭的な雰囲気も好ましいものがあり、ちろりで一合ずつ温める酒の燗具合も上々です。

一つだけ残念だったのは、おでん舟から遠い位置になってしまったことです。長いカウンターの、奥から三分の一ほどの位置におでん舟があるため、玄関に近くなればなるほどおでん舟からは遠くなるのですが、通されたのはよりによって玄関の側から数えて二つ目の席でした。上記の通り、わずかな空席が出たところへ通される形になるため、開店と同時に入るのでもない限り、特等席に座れるかどうかは何ともいえず、逆に後から来ても近くの席に通される可能性はあり、運次第なのはよく分かりました。とはいえ、あちらの方がよかったと考えてしまうのは人情です。
もっとも、「隣の芝は青い」ということはあり得ます。そう思うのは、奥にあるTVの音がこちらにも聞こえてくるからです。一番遠い場所でも聞こえるということは、至近距離ではかなりの音量なのでしょう。しかも、TVの非力なスピーカーを大音量にするということは、耳に障る可能性が少なからずあります。特に、一番奥の席では、映像は見えずに音だけが聞こえてくる形になって、落ち着かないのではないでしょうか。あちらよりはよかったと思うことにします。

そのTVによると、明日関東で雪が降るそうです。昨年も一昨年も似たようなことがあり、帰りの列車が少し遅れたため、雪が降ること自体は想定の範囲内でした。しかし、今回はそれどころの事態ではないらしく、四年前の大雪が引き合いに出されています。四年前といえば、上越新幹線をも運休に追い込んだ記録的な大雪が降ったときです。
新幹線さえ走ってくれればその先はどうにかなるものの、それさえ止まってしまえば打つ手がないだけに、どれだけ乱れるのかが気になるところではあります。万一止まってしまったときは、それにかこつけもう一日旅ができる可能性はあり、むしろ好都合ともいえるのですが。俄かに不穏な空気が漂ってきました。

赤玉金劇パシオン店
金沢市片町1-7-23
076-221-6655
1700PM-030AM(LO)
水曜定休

常きげん・天狗舞
牛すじ
サバヌタ
ウインナー
里芋
蓮根団子
茶めし
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汽車旅in北陸 2018 - 大関

2018-01-21 16:43:24 | 居酒屋
富山を筆頭に、教祖の推奨店に頼り切りの街がある一方で、京都のように少しずつ自力で開拓しているところもあり、金沢は後者の部類に属します。「黒百合」「あぐり」がそうであり、特に後者は何の事前情報もなく探り当てた店です。そして昨年、「わり勘」という新たな名店との出会いがありました。
当地にしては珍しく乾いた雪が降り、雪景色となった街を歩きました。次第に暗くなり始めた夕暮れ時、何気なく野町の駅を訪ねると、駅前にある呑み屋の明かりがついていました。野町という余所者がまず近寄らない一帯にありながら、店構えに閃くものを感じて飛び込むと、果たしてこれが地元客御用達の大衆酒場で、翌月早くも再訪し、九月に泊まったときも世話になりました。「浜長」は二回、「親爺」でさえも三回だったことを思えば、どれだけ自分の好みに合っていたかがお分かりいただけるでしょう。今回も中日はまずここだと考えており、四時に合わせて戻ったのもそのためです。しかし、四時を過ぎても明かりがつく気配はありません。もう開いており、明かりをつけないだけなのかと思って店へ向かうと、玄関には臨時休業との断り書きがorz
しかし、意外なほどに落胆はしませんでした。暖かくなるまでに最低一度は北陸に戻ってくるつもりでいて、近いうちに再挑戦の機会があるからです。むしろ、予定外の店に寄れるよい機会と受け止めればよいでしょう。ようやく雨も止んだため、歩いて呑み屋街にやってきました。まずは「大関」の暖簾をくぐります。

金沢におでん屋が多いのは居酒屋好きならずとも知る話ですが、一口におでん屋といっても様々です。「高砂」「菊一」のような純然たる専門店もあれば、「赤玉」「三幸」のように目移りするほどの品々を揃えた店もあります。そして、いわば第三極に属するのがこの店です。
屋号の通りの大衆割烹であり、高いものはそれなりに値が張る一方、おでんで軽く一杯やるにも好適というところに特徴があります。おでんとそれ以外で相当値段の開きがあるため、おでんだけでも十分だろうと思うのが器の小ささではありますが、それではわざわざここを選ぶ必然性がありません。おでんを主としつつも何か一品加えられれば理想的です。その一品にかぶら寿しを選び、酒二合をいただいて辞去しました。

大関
金沢市木倉町1-5 中泉ビル1F
076-221-9450
1630PM-2200PM
火曜定休

酒二合
すじ
キャベツ巻
つみれ
かぶら寿し
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汽車旅in北陸 2018 - 四十万駅

2018-01-21 15:13:00 | 北陸
雨は一瞬の止み間もなく降り続け、これでは電車に乗る以外の使い道がありません。とはいえそのまま戻っても時間を持て余します。シジマと読ませる駅名につられて、ほぼ中間の四十万駅で下りました。交換してきた下り列車でもう一度鶴来へ行って折り返すと、呑み屋が開く四時に合わせて野町に戻れるという寸法です。

★鶴来1446/7430レ/1457四十万1505/7423レ/1518鶴来1523/7432レ/1554野町
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汽車旅in北陸 2018 - 雷鳴

2018-01-21 14:30:26 | 北陸
30分あまりの乗車を終えて鶴来に着きました。意外なことに、金沢市街と比べても、残った雪の量に大差はありませんでした。土地柄どこの町へ行っても融雪されているだけに、一旦解け始めれば消えるのも早く、積雪量には大差がつかないのかもしれません。
空はますます暗くなり、加えて雨も降り続いています。これでは長くとどまる理由もありません。次の列車で金沢に戻ります。昨日訪ねた富山では、立山連峰の車窓という収穫があったのに対して、今日は雨にたたられ為す術がありませんでした。とはいえ、時折聞こえてくる雷鳴が冬の北陸ならではです。
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汽車旅in北陸 2018 - 石川線

2018-01-21 14:00:45 | 北陸
降ってもすぐに止むだろうと高をくくっていたところ、いつの間にやら本降りになっていました。小立野の寺院群とやらを一度歩いてみたかったのですが、本降りの雨では話になりません。今回は縁がなかったものと諦めて、野町駅から石川線の電車に乗り込みました。決めた途端に雨が止み、再び日が射すという場面こそあったものの、その後再び降り出したため、結果としてはこれでよかったのでしょう。
終点の鶴来まで乗り、雨が上がっていれば町を歩き、そうでなければそのまま引き返すつもりです。しかし、金沢の市街にも雪が残っていることからすると、鶴来はまだ雪景色かもしれません。小雨で済めば、止むかどうかにかかわらず歩いてみるのも一興でしょう。

★野町1336/7423レ/1408鶴来
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汽車旅in北陸 2018 - 金沢21世紀美術館

2018-01-21 10:14:30 | 北陸
まずは金沢21世紀美術館にやってきました。ただし、展示物ではなく建物を目当てにしてのことです。
この建物の象徴といえば、全面ガラス張りになった円形の外観ですが、自分がとりわけ好むのは中庭に面した一角です。天井と壁は白くて床は打ちっ放し、中庭は同じく白壁と打ちっ放しで統一され、見上げる空はこの時期の北陸らしい鉛色。どちらを向いても白か灰色というモノトーンの世界です。しかも、通路は一直線で余計な装飾は何もなく、館内の動線から外れて人通りもほとんどありません。一見退屈しそうなこの空間をむしろ居心地よく感じるのは、中庭にある蔓草に覆われた壁面が、絶妙な彩りを添えているからでしょうか。時折日差しが注いで影を落とすといった光景の移り変わりも楽しく、今回も椅子に腰掛け思わぬ長居をしてしまいました。
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汽車旅in北陸 2018 - きくのや

2018-01-21 09:17:47 | 北陸
細部に違いはあるものの、今回の道中では過去二年の行程をおおむね踏襲しています。金沢に二泊し、一泊目を「きくのや」、二泊目を「木津屋旅館」にする点についても同様です。
利便性では「きくのや」、眺めについては「木津屋旅館」が勝り、居心地は互角という評価については以前語った通りです。富山から移動して投宿し、すぐさま繁華街へ出向くという行程を考えた場合、その利便性が最大限に発揮されます。「木津屋旅館」の場合、バスが宿の近くを経由せず、最寄りの停留所から10分ほどは歩くことになるでしょうか。繁華街へ出るにも15分から20分ほど歩かなければならず、その時点で30分ほどかかるという見当です。これに対して「きくのや」なら、香林坊のバス停から五分と歩かずたどり着き、同じく五分と歩かず繁華街へ出ることができます。木造三階建てから眺める浅野川の眺めは何物にも代え難く、それが宿を代える理由でもありますが、少なくとも一泊目はここということで迷いはありませんでした。どちらも甲乙つけがたく、毎回必ず訪ねていて、その順序も決まっているという点では、松山で「ことり」に行き、次いで「アサヒ」に行くようなものといってもよいでしょう。

手配が間に合わなかった一回を除き、ここでは朝食をいただいています。料金を払っていただくといえば法華クラブ、盛岡の北ホテル、それに先週訪ねた清水の福住といったところですが、法華クラブを除く宿に共通するのは、朝食そのものというよりも、泊まること自体を楽しみにしているということです。つまり、宿でいただくこと自体に価値を求めているともいえます。
1100円という値段と品数だけを比べれば、法華クラブの朝食には当然ながら及びません。しかし、まだ雪が残った中庭を眺めつつ、優雅に朝食をいただくひとときには、何物にも代え難い旅情があり、その点ではビジネスホテルの朝食バイキングを明らかに上回っています。金時草のおひたしが出たり、炊き合わせに生麩が入っているところなども金沢らしく、今回も出費に見合った価値は十分あったというのが実感です。
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汽車旅in北陸 2018 - 二日目

2018-01-21 09:08:13 | 北陸
おはようございます。昨夜は日付が変わる前に宿へ戻って休みました。外が明るくなり始めたのに気付き、時計を見ると七時でした。直後に窓の外から雨音が聞こえ、かなり降っているのが分かりました。しかしそれほど長くは降らず、朝食を済ませて部屋に戻ると日が射してきました。昨日の富山もそうでしたが、晴れたり曇ったり雨が降ったりという不安定な天候が北陸ならではです。
このような天候だけに、いずれ再び降るかもしれません。とはいえ、延々降ることはなさそうなのも分かりました。傘は預け、万一降ったときは雨宿りをしてやり過ごします。
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