つづりかた

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小川洋子と死者

2012年08月16日 | 文学
作家・小川洋子先生のインタビュー記事を読む。
(毎日新聞8/6夕刊)
http://mainichi.jp/feature/news/20120806dde018040055000c3.html



「言葉を持たないものが
隠し持っていることの中に物語がある。
言いたいことがあるけれど、言葉を持たないから、
声に出せない。
あるいは、うまく言う術を知らない。
それで自分の中にじっと抱えている。
それを架空の世界に移動させると、
しゃべり始めるのです。
死者は語る術を持たない最たるものです。
(略)小説を書くとは、死者と会話することなのでしょう」


この「死者」は「弱者」に等しいだろう。
言葉を持たない者、伝える術をもたない者の中にある、
意思表示したいという欲求のマグマ。
伝えたい事を心の中に抱えている時間に比例して
はち切れそうなほど腫れ上がる、
理解されたいという欲望のエネルギー。
それを文字にする。
死者に口を持たせる事が作家の仕事なら、
作家は現代のシャーマンだ。


ところでこの小川先生が芥川賞を受賞した
「妊娠カレンダー」という作品がある。
この本を、貸してあげるから読んで、と
私に勧めた女教師がいる。

農薬のたっぷりかかったグレープフルーツでジャムを作り、
胎児に悪影響がある、と知りつつ、むしろそれを目論んで
妊娠中の姉にせっせと食べさせる妹のお話である。

なぜ女教師が私にそれを勧めたのか、
今をもってよく解らない。
英語の先生で、剣道の免状を持っており、
凜として美しい女だった。
彼女は今どうしているだろう。



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