「らくだの涙」のビャンバスレン・ダバー監督の最新作「天空の草原ナンサ」を観た。遊牧民の少女ナンサと子犬の物語。これといってドラマチックな要素があるわけでもなく、遊牧民の暮らしを丁寧に描いている。物に溢れる近代化された社会について考えさせられる。物が豊富なこと、物に執着すること、それイコール、決して幸福とは限らない。何よりも大切なことは自然を感じながら、家族を大切にして生きることではないかと諭される。監督が言っていた言葉だが、「近代化は悪いこととは思わない。誰もが教育を受けられるという点では良いことだと思う」。僕もそう思う。しかしその教育がねじれ現象を起こして、社会がおかしくなっていく。日本にしてもそうだろ。遊牧民の暮らしにも近代化の波が静かに押し寄せているという。自然災害により家畜を失った人たちが都市に働きに出てしまうそうだ。都会に行けば仕事がある。金が稼げる。物が買える。人間は欲が深いから、つい無理をしてしまう。そうやって自分を見失ってしまう。最小限の物、食べていけるだけのお金があって、自分を大切にできれば、人は十分幸せに生きていける。「天空の草原ナンサ」は心が癒される作品。(公開は2006年正月)