映画道楽

人生をいう道を楽しむために楽にするために映画を楽しみます。

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~★★★★★

2009年09月18日 | 日本
脚本は田中陽造、かつて日活ロマンポルノをささえた脚本家。御年70歳。いまだ現役バリバリで活躍中。代表作は「ツィゴイネルワイゼン」、「セーラー服と機関銃」、「透光の樹」など。しっかりとした脚本あっての根岸監督の熟達した演出が素晴らしい。

構図、カメラワーク、ライティング、編集、どれも映画の醍醐味をたっぷりと堪能できる仕上がり。

役者の使い方もいい。役者が登場する最初のカット。冒頭の浅野は何ものかにおわれるがごとく駆けて登場する。続いて松たか子、妻夫木、堤、それぞれが役柄を生かした登場カットとなっている。

映画女優・松たか子の魅力もみどころ。
庶民的ながらどこか育ちのいい世間知らずな小娘といった天性の才能を十分に生かした役柄は彼女ならではのもの。
松が演じるのは奔放ながら苦しむ夫を理解しようとする妻は牛のような強さがある。

人は簡単に死んではいけない。
夫婦は簡単に別れてはいけない。
生き続け添い遂げてこそ得られるものがあるはずだ。
分かっちゃいるが、そうできないのもまた人の生である。

地味に見えるが、奥深く味わい深い作品だと思う。

南極料理人★★★

2009年09月16日 | 日本
福岡ドーム横にあるユナイテッドシネマのレイトショーを観に行った。ホークスの試合がない日なので閑散としていた。
ほのぼのとした雰囲気で南極での生活を垣間見ることができた。
自分でばかり作っていると、外食や作ってもらったとき、何とも言えない、ありがたさやおいしさを味わうときがある。
ありがたさを感じる瞬間です。
日常生活の中で、食べ物や水はあって当たり前、家族だってそう、いて当たり前、でも本当はとてもありがたいもの。
日々、当たり前と思えるものに感謝の念を思い起こさせてくれる。

ただ、ほのぼのとしたゆるさはいいが、特に盛り上がるドラマ性もなく平坦な感じ、もう少しメリハリを効かせたり、南極で厳しさを体感できるようなリアリティさが欲しかった。

高良健吾がうまい。電話をかける演技は一人芝居になるのだけど、とってもうまい。今年は「フィッシュストーリー」に「禅」と大活躍、注目の若手俳優です。

20世紀少年<最終章> ぼくらの旗★★★★

2009年09月04日 | 日本
8月末、日テレで放送された「20世紀少年」の第一作。
野球放送が終わってチャンネルを変えると、たまたま映っていた。
なにげに観だした妻が、そのままハマリ。翌週の第二作「20世紀少年」を観た。

テレビで放送された「第二章」は公開版やDVDと内容がまったく異なる。最終章へのつなぎの作品に仕上がっていた。シーンは大幅にカットされていた。またカジノシーンが追加されていた。中途半端なつくりなので、妻は余計、結末が知りたくなったよう。唐沢くんの大ファンというのが本当の理由かもしれないが・・・

僕は「20世紀少年」を第二章から観た。試写会で。第一章は見逃していた。原作読んでいるから話はわかるだろうと思ったが映画はまったく面白くなかった。

第一章をビデオで観て最終章を試写会で観た。これまた映画の世界に入っていけず、つまらなかった。試写用はエンド10分がない。それでも「ともだち」の正体は分かった。話は完結した。なのにまだ続きあると字幕が出て、余計、エンド10分が気になった。その10分にどんな話が隠されているのか。

そんないきさつがあって、テレビで妻がはまったこともあって映画館に「最終章の完全版」を見に行くことになった。

僕はエンド10分のためにである。

福岡天神東宝では午後6時から上映分を午後3時までにチケットを買えば1200円になる早割というサービスがある。

そのサービスを利用して二人で2400円。

結論、エンド10分は確かにいい。原作にはないシーン。
第一章142分、第二章139分、最終章145分+10分。

さきの7時間は最後の10分のためにあり。

堤監督はひょっとしてエンド10分のために「20世紀少年」を作ろうと思ったのではないだろうか。

ジーンとくるものがありました。エンド10分で「20世紀少年」のぼくの評価は★2から★4つへ大幅にアップ。

地球防衛軍のバッジはぼくらの少年の頃の憧れだった
ぼくはあのバッジ欲しさにお小遣いを一日で使い果たし母に叱られた苦い思い出がある。
あのバッジは悪い者から大切な人を守る少年の正義への憧憬。その少年の憧れを購買意欲に利用したもので、ちょっと罪作りな面もあった。

「20世紀少年」はとっても奥深い作品だなあと思う。


崖の上のポニョ ★★★★★

2008年07月08日 | 日本
3DのCGアニメとファンタジーものに食傷気味だったので、この作品のタッチは新鮮に見えた。海、空、波、木々など空間のデフォルメが素晴らしい。
これぞ宮崎アニメの真骨頂。

宮崎駿監督は
「少年と少女、愛と責任、海と生命、これ等初源に属するものをためらわずに描いて、
神経症と不安の時代に立ち向かおうというものである」
と語っている。

絵本の世界にどっぷりと浸ったような気分で、何とも心地良い時が過ごせた。癒された。

それは自分が神経症と不安の時代を生きている証でしょう。

人魚ポニョは宗介に助けられ大好きになり人間になりたいと願う。元人間だった父は反対するがポニョは家を飛び出し人間の世界にやってくる。海は荒れ宗介達が住む島は水没。宗介とポニョは嵐の中に職場の老人ホームに出て行った母を捜しに出かける。

人魚姫の話だけど悲劇ではないし、ただ大好きな宗佑と一緒にいたいという純真さは「小さな恋のメロディ」を思い出した。

荒れ狂う自然のみが怖いだけで。悪人がいるわけでもなく争いがあるわけではない。
登場人物たちはただ愛する者のために勇気を出して前へ進む。ポニョは宗佑が大好きという理由で。宗佑の母は職場の老人と仲間のために。そして宗佑は母を探すために。

私も神経症と不安の時代に立ち向かって生きていこう。
そんな勇気を与えてくれた作品です。