映画道楽

人生をいう道を楽しむために楽にするために映画を楽しみます。

エディット・ピアフ~愛の讃歌~★★★★★2007年9月29日公開

2007年09月24日 | Weblog
フランスのシャンソン歌手エデイット・ピアフ。
 路上に産み落とされ、どん底の生活から歌で這い上がって行くピアフ。その激しくも、短い生涯を数々の伝説に沿って描く。

演じているのはマリオン・コティヤール。代表作は「TAXi」、「プロヴァンスの贈り物」。
しかし本作のマリオン・コティヤールはまったくの別人に見える。ピアフに成りきった役作りをした演技力が素晴らしい。どの賞でも最優秀女優賞は間違いないだろう。
 
監督はオリヴィエ・ダアン。日本では不評だった「クリムゾンリバー2」の監督だ。少し力技のような気がしないでもないが、それがいいほうに出て今回は素晴らしい出来。

秀逸なシーンは1シーンで表現した恋人の死。演じるマリオン・コティヤールの悲しみのボルテージが上がる。それと同時にシーンの中で空気が異様に変化する。天国から地獄へ突き落とされたピアフの悲しみが見事に演出されている。

今年の1、2を争う傑作だ。

早春譜★★★☆☆

2007年09月17日 | Weblog
 タイ映画は奇想天外。予測不能な展開が多く、いつも驚かされる。よくあきれることもあるが…そこが魅力のひとつ。観終わってどこか肩透かしをくらったような気持ちになる。でも、そこが大きな魅力なのです。  日本人と違うタイ人らしさというものが分かるし、そこから気づかされることも多い。  早春譜といえば、ボクは海援隊を連想してしまう。今年の春のTBSドラマ「夫婦道」のテーマソング。  ドラマを見ていない人は連想することもないけど、どうもタイトルが地味。 そもそもタイに春という感覚はあるのだろうか?  タイはいつも暑いイメージがるが、季節は雨季、乾季、暑季と変わっていく。 だから春という感覚はないと思う。チャード・ソンスィ監督の「絵の裏」という映画に美しい日本の春、桜がたくさん出てくる。あの映画を観れば、寒い冬を越して桜の花が満開になる春への憧憬の念を感じる。 タイ人にとって春は憧れの季節なのかもしれない。  この映画には桜咲く春は出てこないけど、なんとなく春に対するタイ人の憧れは伝わってくる。それもタイトルを「早春譜」とつけたから感じたことだけど。  原題はSeason change、原題から青春映画というイメージは掴みやすいのだけど、まぁ、日本人が観るには「早春譜」とした方が、いろいろな解釈が出来て面白いと思う。  春というイメージからは青春、譜というイメージからはクラシックの音楽。 クラシック音楽絡みの青春映画。 タイトルからそう連想すれば、そう大きくイメージが違ったということはないだろう。  そのイメージ通りの作品なのだがコメディの要素が入る。 タイ版コメディが楽しめない人には、まったく面白くない。でもこれがタイのギャグ。きっとタイの映画館なら大爆笑間違いなしなのだ。  そして最後は家族を大切にするタイ人らしい終わり方。 ボクは観終わって、肩透かしを食らったような気分になった。  ちょっと待って、本当はもっと違う意味があるに違いない。   本当は最近、若い人は恋愛ばかりに走っているから、「もっとお父さん、お母さん家族のことを大事にしよう」というメッセージがこめられているのだろう。  ボクはそう解釈した。  やっぱり、これがタイ映画だと妙に納得して映画館をあとにした。 タイ語で「気持ちいい」「楽」という言葉に「サバーイ」という言葉がある。もっともタイ人らしさを表す言葉だ。ボクはこういうタイ映画をこう呼びたい。ザーイムービーと。  ぜひ、ぜひご覧あれ。 上映日時 9/20(木) 13:15~ ソラリアシネマ1 9/22(土) 10:30~ 西鉄ホール 9/23(日) 11:00~ エルガーラホール 「早春譜」PV

「アオザイ」(ベトナム)★★★★★ 

2007年09月15日 | Weblog
 アジアフォーカス・福岡国際映画祭が始まった。
 初日の上映から傑作とであった。
 いままで観たどのベトナム映画よりもすごい。

 過去にアジアフォーカス福岡映画祭で感動したベトナム映画は「癒された土地」(2006)、「ごみ山の大将」(2003)。リアルなベトナムを感じられる作品だ。

 ボクが求めているのはベトナム人が作ったベトナムらしい映画。だから「季節の中で」は大好きなのだが、どうもアメリカ臭くて純粋なベトナムらしさを感じない。
 
 そして今年出会った「アオザイ」は、まさにベトナム人が作ったベトナムらしい映画だった。

 アオザイとはベトナムの女性の伝統的な正装。
 アオザイに象徴されるのはベトナム女性の美と品位、その強さ、たくましさ。それはまさにベトナムの魂だ。

 映画に登場する夫婦は貧しく、故郷から逃れるように駆け落ちをして一緒になる。貧乏なまま、娘ばかり子供が4人生まれる。
 夫が赤ん坊の頃、アオザイに包まれて木の下に捨てられていた。そのアオザイを妻に贈る。
 娘二人は大きくなり学校に通うが制服のアオザイを着られないので学校に行きたくないと言い出す、夫婦にはお金がないのでアオザイを買ってあげられない。妻は自分のアオザイを仕立てなおして妻から娘へ贈る。一着のアオザイを交互に来て姉妹は学校へ通う。
 貧しいながらも懸命に生きる家族の温かな思いやりには涙が出る。
 その家族の幸福をぶち壊したのが米軍の空襲だ。そして天災が容赦なく家族に襲い掛かる。さらに追い打ちをかけるように米軍の爆撃が逃げまどう家族を襲う。

 この辺りの表現は作り手の怒りが表現されている。同時に見る側も怒りを覚える。いまもこれと同じようなことがイラクで起きていると思うと、言い知れぬ怒りがこみ上げてくる。

 ベトナムは、中国一千年、フランス百年の植民地を経験し、さらには南北を分断されながらも多くの血を流して統一国家を作りあげた。

 ベトナムは女がたくましい。男よりも女がよく働く。
 女が強い国ベトナム、その強さの象徴である「アオザイ」。
 この映画を観たら、誰もがアオザイに敬意の念を抱くようになるだろう。